RGに意識は宿るか?
「手を上げろ!」
白い無機質な部屋に男の声が響く。声の主は全身を黒い服にズボンで身を包んだ男。
その手には拳銃が握られている。そして銃口は白衣を着た初老の背中に向けられていた。
初老はキーボードを叩く指を止めゆっくりと手を頭上まであげる。
「そうだ。そのままの体勢で二つの質問に答えろ」
初老の男はうなずく。
「ここの主任、浦賀崎葉造本人でいいな?」
「その通りだ」
「ここで行われているのはタイムマシンの研究でいいな?」
「……。」
浦賀崎は口をとざしている。
「答えろ」
背中に押し付けられている拳銃がさらに食い込む。
「そうだ」
「よし!質問は以上だ!」
男は拳銃を振り上げ
「では研究のデータをおとなしく渡してもらおうか!」
そう言いながら初老の首筋を狙って振り下ろされたが、空をきる。初老とは思えない身のこなしで回避する浦賀崎。そして手首をつかみ拳銃をひねり取り上げる。
「お前!偽物か!?」
あまりにも素早い身のこなしに驚く男。
「私は浦賀崎本人だけど」
浦賀崎はそう言いながら奪った拳銃を男の頭に向ける。
「なっ! ただの研究者じゃないのか」
「昔陸軍にいたからね。それより襲う相手の情報を調べなのは感心しないな」
「くっ!お前には関係ないだろ!」
「せっかく忠告してあげているのに。ちなみに私は君をしっているよ」
「なんだと!」
「名前は平 仁。29才独身。フランス外人部隊を一年前に除隊。今は裏社会にいるみたいだね?」
「どうしてそれを」
「こっちには優秀な人材がいるからね」左耳にあるインナーイヤホンを人差し指でかるく叩く。
「おっと追加の情報だよ。君の依頼者はジェネーブ研究機関だね」
「クソッ! 作戦は失敗だプランDに変更! ……オイ!応答しろ!」
「君のお仲間さんは死んでるよ」
浦賀崎の後ろにあるモニターに監視カメラの映像が映し出される。その映像には平と同じような服装の人物が数人、床に倒れていた。
「だから君も死ぬといい」
銃弾が男の胸に穴をあける。血がとめどなく床に流れ落ち部屋は血と硝煙のにおい満たされる。
「火薬の臭いは嫌いだ。だが血の匂いは嫌いじゃない」
白衣を翻し決めポーズ。かっこよく言っている。
「なにをやっているのですか? マスターはついに脳ミソがバーストしましたか?」
部屋の入り口にいつの間にか少女が立っていた。
「前言は忘れてくれ。レスティア・ゴルールゲン。そして私の脳ミソは無事だ!」
浦賀崎は入り口の少女、名前はレスティア・ゴルールゲン略してRGにむかって指をさす。もちろん拳銃を持っていない方で。
「いいえ、私は確かにここに来る途中で大きな爆発音を聞きました」
「それは銃声だ」
指さしを拳銃へともっていく。
「ハッ! 床に倒れているのはもしやマスター」
床に伏している男にかけよるRG。
「そいつは君が調べた平仁くんだよ」
「よくやってくれました平さん!お礼に研究データをそのままそっくり持って行ってください」
「人の話を聞けえぇ~」
叫びながら頭をかきむしる浦賀崎。
「ハァ~マスターは相変わらずノリというものがわかっていませんね。これだからハゲるんですよ」
「ちゃんと育毛剤を毎日使ってます」
「実は脱毛剤にすり替えておいたのさ!」
「はぁ~」
「ため息なんかついてどうしたんですか? もしや自分の愚かさをやっと自覚したのですか?」
驚愕の表情を顔に浮かべ後ずさる少女。
「君は優秀なAIだけど、どんなアルゴリズムをつかっているんだろうと思ってね」
「禁則事項です」
「おまえは本当にロボットなのか?」
「禁則事項です」
「まぁ~ひとつだけ言えるのは作った博士か研究者かどっちかわからんが、そいつはきっとマゾだな」
「マッドサイエンティストならぬマッゾサイエンティストですね」
そういって少女は笑った。
追記分
都内の小さなアパートに例の二人は暮らしている。
「ちょっ、おま、コレマジで脱毛剤じゃないか!」
「はっはっはっはっはっ」
「………。」
「すり替えておいたのさ!」
「許さんっ!」
「許せっ!」