第七話 「婚約パーティー」
あれから一週間。
仕事にも慣れてきた俺は、自分の部屋のベッドの上で二日目の日のことを思い返していた。
「…ッ…お前なあ…!」
息を切らせながら、先程まで俺の首襟を掴んで走っていた桜庭は何故か顔を
顰めて怒っていた。
「礼儀も知らんのかい!さっき言ったとおり、ドアはノックしてから入れ!それと!」
桜庭はまた俺の胸倉を掴むと、耳元で叫ぶ。
「先輩には敬語を使え!」
あの大声が未だ耳から消えてくれない。
あれからの俺は、守らなければならない神童の傍には桜庭の所為でいられず、
どちらかというと、家政婦をやっているような気分だった。
「雨傘」
冷たい声。
後ろを振り向くと、玄関の前には桜庭が。
「…何だ?」
俺が聞き返すと、桜庭は嫌そうな顔をしたまま
「何をいっとるんや。これから仕事やというんに…」
といった。
「…は?だって一昨日お前「鏡華様の婚約パーティーの警護は、僕一人で十分や!」とか
何とか言ってたじゃないか。」
俺が言葉を返すと、桜庭は怪訝そうな顔をより一層顰め、
「社長のご命令や。一人では命が心配やと…」
呟くように言った。
まあ、何はともあれ、SPとしての初めての仕事だ。
俺は少し着崩していたスーツを、しっかり着なおす。
大きなドアを開くと、いつもの長い廊下が。
外はいつもより明るく見えた。