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ルームメイトが幽霊で、座敷童。  作者: 巫 夏希
ドイツ・猿の手編
76/212

伝承と濃霧と初回接触


 ハーメルンは未だに笛吹き男伝承の残る街だ。『ハーメルンの笛吹き男』でも解るくらいにな。

 ストリートを歩いていると、変な事がある。


「……人の姿が少なくないか……?」

「それは思っていたぜ。まだ時刻は午後七時。にも関わらず店は疎らに開いてるし人は居ないしと来た。一体何があるってんだ? 祭りにしちゃあ変だろ」


 アドルフさんと話していたが、やっぱり解らないものは解らない。誰か歩いていれば話でも聞けるんだが……、流石に他人の家に訊ねにいくのも気がひけるしな。にしても今日は霧が濃いな。これくらい濃いとロンドンのミルクのような霧といいところまで戦えそうだ。


「とりあえずどっか店でも入って食事でもしますか? 確か道中のファストフード店でハンバーガーを食べたっきりだし」


 姉ちゃんが最後に親指と人差し指を円にして口の方に傾ける(言わなくても解るが、それは“どうせなら酒も一緒に”というサインだ)仕草をしながら言った。


「まぁそうだなぁ。腹も減ったことだし……リストア、お前はどうだ?」

「私も大分お腹が空いて来ましたね……」

「よし、じゃあ近くのレストランで飯でも食って……」

「待て」


 アドルフさんのその言葉を制したのは祐希だった。祐希、腹でも痛むのか?


「……居る」


 祐希の目視する方向を慌てて見てみるが、そこには誰も居ない。見間違いじゃないのか?


「祐希、どうしたんだ?」


 今度はアドルフさんが訊ねる。


「……誰にも見えないの?」

「いや、見えるよ祐希。確かに“赤い霧”が」


 姉ちゃんまで言ってきた。……待て、今“赤い霧”って言ったか? ここにある霧は全て白にしか見えないぞ?


「いや……ちょっと待てよ。俺にもみえてきたな。白の霧に混じってるから全然気付かなかったぜ」


 アドルフさんも言ってきたので、「流石にお前見えろよ」と自分に投げ掛けたくなる。目を凝らしてもぼんやりある場所がピンクになるだけなんだがなぁ……。


「いや、思いっきりそれだから!」


 碧さんに言われ、ついにそれが赤いことが理解出来た。禍々しく、異常な赤い霧。今、それはゆっくりとその濃度を増していき――


 ――ほんの一瞬、それが笛を吹く人間の形になったような気がした。


「もしかしてあれが……!」

「もしかしなくても笛吹き男だ!!」


 そう言って姉ちゃんと祐希は封霊銃を取り出す。

 しかし、その一瞬の隙に嘲笑うかのように俺達をすり抜けていった。


「待て……っ!!」


 姉ちゃんを筆頭に俺達が振り向くと、もうそこには赤い霧は愚か濃い霧も消えていてストリートの向こうまで見渡せる程になっていた。


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