日本の食卓と井戸端会議(後編)
「あちゃー、早速そこに突っ込みますか」
「そりゃそうですよ、気になりますもん。恐らく大沢さんも」
その割りには大沢さんカレーをがつがつ食べてるんだけど。いつも言うけどそんなにせっつかなくてもお代わりはありますからね?
しかもみずきが名前出したらちょっとびっくりしてたし! あなたどんだけ自分が蚊帳の外だと思ったんだ!
「……もしかして、この会話は俺にも重要か?」
「もしかしなくてもそうです」
あっ、つい心の声が。
「それで、なんでマリナだけで」
「答えは実に単純明解ですよ。彼女だけじゃここに猿の手を持ってくるのが不可能だと判断したからです」
「……不可能? あいつは仮にも四分家の人間だろ?」
「補分家の大沢家でも得意不得意とあるでしょうよ? そういうことですよ」
四分家の補佐の立場として設置された補分家。
その数は正式には解らない。何故なら今はその任務を忘れ、現実世界に溶け込んだ家系もあるからだ。大沢家もそうだったが、二年前にある巫女によってこちら側に引き戻したのだがこれはこれで語られるべき話があるでしょうし、ここでは話しませんよ。
「……つまり四分家にも得意不得意はあるし、その不得意が……今回マリナに当たってしまった、と?」
「物わかりがよろしいですね。ボーナスとしてジャガイモをあげましょう」
ひょい。
スプーンで私のカレーの海に浮かんでいた(実際はそんなわけないけど)ジャガイモを掬って大沢さんの口に有無を言わさず放り込んだ。
「うぐっ! ……ぐはっ。熱いわ! なに許可も聞かずに口に入れるんだよ! せめて皿に入れるという考えには至らなかったのか?!」
「ははぁ、それもありましたね。次はそうしましょう」
まぁ、絶対にしませんが。
「……おまえ、意外と表情で何考えてるか解るからな?」
「それはそうと、ヨーロッパのお土産でも頼んどけば良かったですかねぇ」
「さらっと流すな!! ……まぁいい。そういえばこの前来てた黒服の男は誰なんだ?」
「彼は新嘗祭関連で来てたんですよ。是非ともよろしく頼むって」
「もうそんな時期か……」
「神迎祭が後なのよね……。だから新嘗祭終わったら直でそっち行く感じになると思う。いちいち帰る暇もないし」
「俺にとっては帰らないでくれた方が助かる」
こうしてこうして。
日本の食卓は平和(?)に過ぎていくのです。




