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物事の既視と夢物語


 次の日。

 俺は再び、神事警察に向かっていた。出勤二日目である。


「少年、アイスが食べたい」

「それ昨日も言ってなかったっけか?! ……解った。ならば姉ちゃんからもらった『順風堂』アイス割引券を使って……」


 順風堂っていうのは一個二千円という馬鹿げたアイスを売ってるお店だ。姉ちゃんは宮内庁神霊班時代からそのアイスが好きで(というか宮内庁御用達らしい)、よく購入している。俺もたまに食べさせてもらうんだが、これが中々に美味い。クリーミーで濃厚かつ舌に残らないミルクは順風堂直営牧場で育てたジャージー牛からストレスを与えぬよう、一匹から僅かしか取らず、それをアイスとして加工するらしい。二千円するだけはあるな。


「順風堂ったら……一度マリナに奢ってもらったとこ? あの濃厚かつクリーミーで舌に残らないミルクを使ってる?」

「そうそこ。三割引だとさ。良かったな、ここが国の管轄で」


 こんな場所(?)でも一応国の役所なので、俺は国家公務員ということになる。公務員試験受けてすらいないのになぁ。……つまり、さっきの割引券も大元はその恩恵を受けている、ってことだ。


「……じゃ、昼休みね。流石に仕事の時はまずいでしょ? それまでは我慢したげる」

「珍しく素直だな」

「私はいつも素直なつもりだけど?!」


 珍しく碧さんが怒ってしまった……ってこの状態で金縛りにするんじゃねぇ! なんか重力に逆らったパフォーマンスみたいになってるから!


「……なにやってるんだ?」


 昨日と同じく祐希に注意を受けてしまった。これ以上注意が重なってしまっては大変なことになりそうだ。


「初日から何してるんだよ? 今日は新人研修だって言っただろ? 新人も来るって言っただろ?」

「…………え?」


 今は祐希は何て言った? 『新人が来る』? 新人研修はまぁ大体何週間も続くだろうから良しとして、また来るのか?

 大体新人が入社(と言っていいのか、正しい単語は知らん)するのは四月一日、精々Ι十月一日きのう付けじゃないだろうか? というか関係ないことだが局長は十一月の神迎祭が忙しくはないのだろうか? 相当な準備がかかりそうなもんだが。


「……新人さんってなんて名前なんだ?」

「えーとなんて名前だっけ……。凄い変わった名前だった気がするなぁ……」

「鈴倉ヴォギーニャ」

「あ、そうそう……って副局長?!」


 姉ちゃんが祐希の後ろに立っていたが、既視感しか感じないためあまり驚けない。

 ……つまり、どういうことなんだ?


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