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ルームメイトが幽霊で、座敷童。  作者: 巫 夏希
最終章・百鬼夜行編
208/212

伽藍洞の心とリコレクション(前編)

 俺は家に閉じこもっていた。

 パソコンの電源を入れても何もする気が起きなかった。

 テレビのプラグはゲーム機に刺さったままだ。2Pもプレイ出来るように二つ刺さっている。

 ……だが、それすらもやる気が起きない。

 寝転がる。天井を見る。そこには真新しさも何もない、普通の天井が広がっていた。

 なぜ俺はツクヨミを殺すことができなかったんだろう。

 神だからか? 否、そういうわけではない。碧さんを失った怒りで、俺はそいつを殺そうとした。

 だが、何故かそこで冷静な判断をしてしまった。

 俺は殺せなかった――。


「リト、ご飯できたよ」


 祐希の声を聞いて、俺は起き上がる。外はもう暗くなっていた。そうか、もうそんな時間なのか。

 隣の部屋に行くと、祐希がエプロン姿で笑っていた。いつもの様子ならおちょくる一言でも言ってやるんだが、そんな余裕すら無かった。

 無言で俺は座り、手を合わせる。


「…………いただきます」

「召し上がれ、リト」


 俺が座ったのと同時に祐希も座り、微笑みながら俺を見る。

 祐希が作るのは純和風な食事だった。豚汁に鮭の塩焼き、ほうれん草のおひたしに大根の漬物まである。

 俺は先ず、豚汁を一口啜った。野菜を相当煮込んだらしく野菜の味が汁に溶け込んでいた。具材は豚肉と人参、大根とごぼうという極一般的なものであるが、それでもなぜだか普通のより美味しく感じられた。

 鮭はどうだろうか、と思いながら箸を使って鮭を解す。それを口に入れると程よい塩気が口の中を包み込んだ。その味を覚えつつご飯を口に掻っ込んでいく。その姿を祐希は微笑みながら見ていた。ずっとずっと見ていた。

 その視線が、俺にとってとても痛かった。

 別に彼女が悪いわけじゃないのに。

 凡て俺が悪い。俺の責任だっていうのに。


「……リト、自分ひとりで背負っちゃだめだよ」


 祐希が言葉をかけたのはその時だった。

 祐希の話は続く。


「確かに碧さんが消えてしまったことは悲しいけれど……それを自分ひとりの問題として抱えちゃいけない。碧さんが消えてしまったとき、リトは神事警察として活動していたんだ。ということは神事警察の責任とも言えるよ」

「いいや、いいや、違う。俺が悪いんだ。俺が凡て悪いんだ」


 言葉が、無意識に、紡がれていく。

 祐希は首を横に振った。


「違うよ。君は悪くない。リトは悪くない。みんなで背負っていかなくちゃいけないんだ」

「違う、違う!」


 俺に優しくしないでくれ。

 俺にそんな言葉をかけないでくれ!

 だが、そんなことを俺には言えなかった。俺には言える勇気が無かった。

 祐希は俺の方に座ったかたちで近づくと、俺を優しく抱きしめた。祐希の香りが、俺の鼻腔を擽る。


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