表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルームメイトが幽霊で、座敷童。  作者: 巫 夏希
最終章・百鬼夜行編
202/212

戦闘の唐突なカーテンコール

「それはただの自己満足だろ。自己満足のために崇敬の念を集めているに過ぎない!」


 俺は言った。言ってやった。普通こんなものを言ったらバチが当たっちまうもんだが、そんなことどうでもいい。いや、どうでもよかった。

 ふうん、とツクヨミはそれでもペースを崩すことなく、


「……それじゃ、これを見ても君はまったく何も心変わりすることはないのかなあ?」


 そう言って。

 ツクヨミはあるものを出してきた。

 それは、闇だ。正確には闇がボールめいた形状になっている。一切の光を通さないそれに、恐怖すら覚える。

 それを見て、ツクヨミは言った。

 それと同時に、闇の中から誰かが出てきた。

 それは――紛れもない碧さんだった。


「碧さん!」

「リト!」


 碧さんは俺の顔を直ぐに見つけることができたらしく、俺の名前を叫ぶ。

 しかし、直ぐに表情を変えて、


「なんでここまでやってきた! さっさと逃げろ! これはカミとカミの戦い、人間には手出しできないしできるはずがないんだよ!」

「手出しできるか出来ないか! 決めるのは碧さんじゃない、俺だ! 俺ができるかどうかを決めるんだ! そして、そんな簡単に諦めんなよ! 何があるかまだ解らないだろうが!!」

「いいや、無理だよ。無駄といってもいいだろう。そんなもんができるならとっくに姉ちゃん……アマテラスができているはずだ」


 ツクヨミはそう言って鎌を持った。鎌を上げて、それを碧さんの首筋に添えた。


「おい、何をする気だ……」

「今日は月がよく出ている。まあ、出ていなくても僕の力でどうにかしていたけど、出ているには好都合だ。君にこの光景を見せることができる。君に『絶望』を植え付けることができる。まあ、もともとはこちらの『強制送還』が目的だったわけだし」

「強制……送還?」

「ああ。そうだよ。この姉ちゃんアマテラスは天気を自分でコントロール出来ない。それをオオヤシマに移したからだ。おかげでオオヤシマは大助かりだ。今まで姉ちゃんの気分次第で変わっていた気まぐれな天気を、それこそ機械的に決められたスケジュールで変えることが出来るんだから」

「それじゃあ……もう碧さんは……」


 俺の考えは、あまりにも醜くて残酷なことだった。

 そして、それを予想したツクヨミは笑みを浮かべて、


「うん。姉ちゃんは用無しだ」


 そう言って。

 ツクヨミは持っていた鎌を碧さんの首に振り落とした。

 ――あまりにもあっけなかった。

 ゴトリ、という音と共に碧さんの首が落ちる。碧さんは笑っていた。どうしてこのタイミングでも笑っていられたのか……俺にはまったく理解できなかった。

 軈て首が消失して、身体も消えていく。


「この世界にあった写身を破壊した。これで姉ちゃんは神界でしか生きていくことは出来ない。まあ、新たに写身をつくれば話は別だけど、そんなのもう許されないもんねー。このまま姉ちゃんがどうなるか教えてあげると、オオヤシマによる審判だ。審判はまあ、決まっている。神からの追放だよ。人間の幽霊でもなんでもなくなった姉ちゃんはそのまま居場所を失い……完全に消失する。妥当だよね、オオヤシマの、僕たちの計画を無碍にするような行動を取っていたんだから」

「おまえ……」


 俺は目の前にいるツクヨミに怒りを覚えた。いや、悲しみなのかもしれない。どうして姉弟なのに、殺し合う必要があるのか。どうしてそこまで冷酷に任務を実施できたのか。それを考えるだけで……。


「どうしたの? 僕を殺すのなら無駄だよ。僕はなんてったってカミサマだもん」


 そう言って。

 ばいばーいと腑抜けた挨拶とともに、ツクヨミと闇は姿を消した。

 残されたのは、俺と、俺に握られたピースフル・フィストだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ