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ルームメイトが幽霊で、座敷童。  作者: 巫 夏希
ドイツ・猿の手編
116/212

視点C:瀬谷マリナの場合 -参-

これはフィクションですので、ヒッグス粒子に関する点はほぼフィクションです(二種類ある点はCERNの実験グループATLASの発表によるものです)。

 翠名創理は十二歳でCERN(欧州原子核研究機構)に就職した鬼才である。

 CERNとは、スイス・ジュネーブ郊外、スイス・フランス国境にある世界最大の素粒子物理学の研究所である。

 彼女の専門はヒッグス粒子。二〇一二年にヒッグス粒子が二種類あると示唆されたが、その後に彼女によりヒッグス粒子の識別に成功したとされている。

 ヒッグス-オングストロームは粒子の半径が辛うじてオングストローム(0.1ナノメートル。10の-10乗)で表現できることから通称として呼ばれている。彼女が命名したもので、彼女の尊敬するアンデルス・オングストロームに依るものだとされている。

 もう一つの粒子、ヒッグス-エスメラルダにはある効果があると発表された。

 時間跳躍。所謂タイムマシン技術の根幹がこれによって叶うということだ。

 二〇一五年、彼女はチーム自体を引き抜き、コンダクターリビルドを組織した。彼女の目的は――。


「……つまり、彼女の目的は、ヒトに関わるものではありません」

「なんでそんなこと知ってるんですかめぐみさん……」

「ネットを駆使してですね。大体これくらいの情報は解るものですよ」


 なるほど……ネットおそるべし。

 ネットで探せばどんな秘密書類だって見ることができる、って言うけどこれじゃほんとかもしれませんなあ。


「……で、どうしてヒトに関わるものでないと言えるんですかね?」

「考えても見てください。彼女の専門は素粒子物理学なんですよ。どうしてそこから生理学に変換できますか? 数年前に変えたならば兎も角、ずっと素粒子物理学を用いてタイムマシンを作ろうとしていたんですよ。そういうのがヒトに関わる研究を始めるとは到底思えなくてねえ……」


 言われてみればそうかもしれない。

 ならばなぜ彼女はそれをテーマに掲げたのだろう?


「一つだけ、言えることがあります。『パラグラフ計画』っていうものです」

「パラグラフ計画?」

「……私も片鱗しか聞いたことがありませんが……。みずきがオールアイという人間から聞いた話です。一万年もの長い間の時間をかけて、あることを実行させる。……そのためにタイムマシンを用いる必要があるんだ、とね」

「あること、って?」

「それが解るには一万年経たないと解りませんよ」


 そう言ってめぐみさんは笑った。まあ、いつもこんな感じではぐらかすんだよね。合ってるかも怪しいし。

 とりあえず……リトは無事かなあ。






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