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ルームメイトが幽霊で、座敷童。  作者: 巫 夏希
ドイツ・猿の手編
114/212

視点C:瀬谷マリナの場合 -壱-


 血腥ちなまぐさい匂いってのは鼻につくと消えにくいもんだ。まったく、掃除というものをする気にはならないんだろうね?


「掃除をする場所ではないでしょう、考えたって解ることです」

「そうですけど、汚いわ臭いわで、感染症にでもなりそうですよ」


 やっぱめぐみさん涼しい顔してるなぁ……同じくらい辛いはずなのに。私なんて全然駄目よ。


「それに……少々厄介ですしね」

「へ? 厄介?」

「そりゃそうでしょう。考えてもみれば解る話です。彼らはなにを目的としている? 『人という種族を上の段階へと昇華させること』、です。それを成し遂げるためならどんな手段も問わない、と」


 めぐみさんは続ける。


「そして彼女は今瀬谷理斗とカミサマ、それに河上祐希を連れて何処かへと消えました。……そして、私達は今この空間に幽閉されている。……つまりは誰も手出しが出来ない状態にあるわけです」

「……何を言いたいんです、めぐみさん?」

「我々は、人工進化研究所の翠名創理に弄ばれているということです。……だから、どうすればいいんだ、って話なんですがね」


 なんだそれは。いくら何だって押しつけしすぎだ。

 翠名創理が具体的に何を目指しているのか、彼女の口から述べられたことはない。

 だからこそ、気になる。

 翠名創理は次の段階として何を望むのか、ということを、だ。

 上の段階とはそもそも何なのか。

 そこに向かう方法はあるのか。

 そして――ほんとに平和と安寧が約束されているのか、ということだ。

 最後の事項については一個の宗教論が関わってくる。

 楽園。

 かつてアダムとイヴが暮らしていたエデンの園。彼らがいう『上の段階』とはそれを意味していると考えられる。

 人間にはアダムとイヴが知恵の実を蛇に諭されて食べてしまった時の罪――原罪が生まれ持ってある。

 人工進化研究所はそれを何らかの形で消し去り、エデンの園へと向かおうとしているのだろう。


「……原罪を消し去る方法というのは聖書には一切書かれていません。なぜならヒトという種族が生まれ持ってある罪ですからね。……だからソドム・ゴモラは何としてでも原罪を消し去りたかった」


 ん? なんでそこでその話が出てくるんだ?


「ソドム・ゴモラが考えたのは、『人工的にカミを作り上げる』ことです。既存のカミサマと人間を融合したりもしていましたね。……そんなもので原罪が消えるとは到底考えられませんが」


 原罪云々以前にめぐみさんがここまでキリスト教に詳しいとは知らなかった。まぁ、ソドム・ゴモラに詳しいのは二年前当時部外者だった彼女が結果として組織を壊滅させちゃったからなんだろうけど。



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