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ルームメイトが幽霊で、座敷童。  作者: 巫 夏希
ドイツ・猿の手編
105/212

岩塩と鉱山の因果関係


 アウクスブルク。

 ドイツの南部に位置する街だ。その名前は時のローマ皇帝アウグストゥスが築城した城に由来している。


「十五世紀から十六世紀にかけてはフッガー家がその優れた鉱山技術を元手に銀山都市としても発展したんですね。また世界初の社会福祉住宅があったり、昔から福利厚生をちゃんとしたホワイト企業だってことが解りますね」


 ドイツに行くのは初めてだからあまり詳しくは解らないが……果たしてアウクスブルクがホワイト企業(そもそも街だから企業と定義出来るかは曖昧だ)なのかは俺には解らない。

 そもそも初めは『猿の手』を確保し、見つけてくれば良かっただけなのに、気付けばこんなことになっている。これじゃただのドイツ旅行(ただの、とは一概に言えないが)ではないかとも思えてきた。


「人工進化研究所はここだ」


 アドルフさんに言われ、そちらの方を見る。確かにそこにはそれがあった。色褪せたプレートには『国立人工進化研究所』と書かれていた。なぜ日本語なのだろうか?


「これが作られたのは一九四〇年。日独伊三国同盟が出来たばかりの頃の話だ」


 日独伊三国同盟。

 かつて起きた第二次世界大戦の枢軸国となった日本・ドイツ・イタリアの間で結ばれた同盟のことだ。確かこれはイタリアとドイツの敗北に伴って自然に解消したものだった。

 ……だから今現在関係ないように思えるが?


「日独伊三国同盟は確かに第二次世界大戦で自然として消滅した。そこまでは確実だ。だがな、考えてもみろ。本当にそうだと言えるか?」

「……どういうことだ?」

「猿の手はなぜドイツにある? あれは一九〇六年に初めて確認された。場所はイギリス。そして……行方不明だったそれが最近になってドイツ――枢軸国で発見された。これが何を意味するのか、解るか?」

「三国同盟はまだ続いている……?!」


 俺はその言葉が信じられなかった。

 そしてその顔が見たかったとでも言いたげなアドルフさんが笑って、話を続けた。


「そう、裏の世界でな」



 ◇◇◇



 セントラルからアウクスブルクへ。返信がないが報告を開始する。

 ――まず、『レギア・サード』を無事セントラルに収容出来た。アウクスブルクには感謝している。

 次に忠告をひとつ。今アウクスブルクに猿の手を探してる厄介な連中が来ている。事後処理はこちらで済ませてしまうから出来ることなら消してくれ。

 あぁ、それと『タオ薬』はようやく輸入出来た。取引に関して連絡を取りたいので返信を早めに頼む。

 では、報告を終了する。



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