表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TRUE LOVE  作者: shion
35/36

第八章 答え (5)

 あの日から、隼人さんは毎日私の勤め先まで迎えにきてくれた。

 大悟さんのストーカー事件、そして私が襲われかけた、あの一件・・・

 私のボディーガードをしに、心配してくれての行動だ。

 近藤さんはあの日以来、出勤していない。

 今日は来てないから大丈夫だと言っても、どこで待ち伏せしてるか解らないからと頑として譲らなかった。自分の仕事も忙しいだろうに、案外心配性なんだな・・・

 と私は思った。ほんとは怖いし、何より嬉しいんだけど・・・

 

 

 悦子に話そうかどうか迷ったが、結局私は真実を話した。

「信じられない・・・彼がそんな事する人だったなんて・・・」

 悦子はかなり動揺したが、彼が出社してないこともあり、信じてくれた。

「彼も信じられないってさ・・・」

 悦子が言う。悦子の彼の三上さんは近藤さんと同僚だ。

「確かに一時はボロクソに言ってたらしいけど、少ししたらパッタリと、あんたの事言わなくなったんだって。思いつめたんだろうね・・・。」

 悦子や三上さんには、私の名誉のためにも他言しいないで欲しいと\頼んでおいた。

 

 

 10日ほどして、近藤さんが現れた。

 目の前を通り過ぎる彼を、私はにらみつけた。

 でも心の中は、恐怖でいっぱいだった。

 悦子も近藤さんを、さげすんだ目で見た。

 うつろな目をして彼は、そそくさと行ってしまった。

 

 

 

「彼、今日も来てるね。」

 悦子が出入り口に視線をやる。隼人さんがニッコリ微笑む。

 今日の仕事ももう終わりだ。

 着替えを済ませて隼人さんのほうへ歩いていくと、ニコニコとしていた彼の表情が見る見る険しくなった。

「え?」

 私が何を思う間もなく、彼は私の手を掴んでグッと引き寄せた。

 振り向くと、近藤さんがいた。

 隼人さんは近藤に向かって2,3歩歩み寄った。

 近藤の顔がこわばる。

 

「やっと現れやがったな。お前には言ってやりたい事が山ほどあんだよ!なにしろ元が不完全燃焼だからな・・・。

 おい、よくもあおいにあんなまねしてくれたな。

 お前のやった事は犯罪だぞ。解ってんのか?

 ほんとはお前みたいなゲス野郎、ぶん殴ってやりたいトコだけどそんなんじゃ俺の気は済まねえからな。

 やり方ならいくらでもあるしよ・・・。

 言っておくが俺は法律事務所の人間だからな。覚えておいた方がいいぜ。

 いいか、今後一切あおいに関わるなよ。お前の出方次第では、こっちも考えるぜ、いろいろと・・・」

 彼が、低い声で一気に言った。近藤は少し後ず去った。

「調べさせてもらったぜ。お前、いい経歴の持ち主だなぁ。その華々しい経歴も、もうすぐ終わりかぁ?」

 隼人さんは尚もたたみかける。

「もう・・・関わらない。今後一切関わらない。だから・・・頼むから、誰にも言わないでくれ・・・」

 近藤は、青白い顔をしてそれだけ言うと逃げるように去って行った。

 

 私は隼人さんのその姿に、胸が熱くなった。

 私を守ろうとひたむきだ。私の事をこんなにも、大切に想ってくれている。

 そんな彼だから、余計に愛しさがこみ上げてしまう・・・

 この人でよかったと、思ってしまう・・・

 彼の頼もしい横顔を、ずっと見ていたい気分だった。

 

 

 

 

 

 

 今日は、大悟さんの家でみんなで食事する事になっていた。

 大悟さんの家といっても、今はカノンが一緒に住んでいる。

 退院した日から、二人は同棲を始めた。

 

 ピーンポーン

 隼人さんと私は、飲み物やなんかをいっぱい買い込んで、二人の家を訪れた。

「こんにちは。」

「いらっしゃい。もう準備できてるから、早く入って。」

 カノンが明るい声で出迎えてくれた。大悟さんもその奥でニッコリしている。

 二人とも、本当に幸せそうだな・・・私は思った。

 みんな席につき、楽しい団欒が始まった。

 

「今日は二人に報告があるんだ。」

 隼人さんが切り出す。私もちょっと、姿勢を正す。

 

「俺たち一緒に暮らす事にした。」

 隼人さんが少し恥ずかしそうに、照れながら言った。

 

「そうなの?マジで?おめでとう!」

 大悟さんが我が事のようにはしゃいでいる。

 その横で、カノンもビックリした様に笑っている。

 

「いいじゃん、いいじゃん。二人なら、きっとうまくいくよ!同棲楽しいよ~。」

「うん、ありがと。」

 

 私はちょっと恥ずかしくなって下を向いた。

 付き合う事になったと二人には電話では報告していた。

 その時も、お似合いだって、そうなればいいねって話してたと言ってくれた。

 

「そっか~。なんか今日はすごくおめでたいぞ~。」

 大悟さんがはじけそうな笑みを浮かべる。その笑顔はとても輝いている。

 本当に開放されたんだなぁ、と私は思った。

 

「実は俺たちも報告があるんだ。」

 カノンが寄り添う。

 

「え?」

 隼人さんと私は同時に聞いた。

 

「俺たち、結婚する。」

 二人はこぼれそうな程幸せな笑みを浮かべている。

 

「ウッソ~ほんとに?おめでと~!!」

 私はカノンを抱きしめた。

「うん、ありがと。」

 

 隼人さんも大悟さんとガッチリ握手を交わしている。

 なんかすごく幸せだな・・・私は思った。

 ちょっと前までは、考えられない事だった。

 だけど今は、みんな笑っている。

 

 

 

 私達はそれぞれのいろんな悲しみや辛さに、もがき、苦しみながらも懸命にそれを乗り越え、それぞれに幸せを掴んだ。

 それぞれに迷走して、やっと一つの形へと、たどり着いた。

 少しだけ強くなった自分と共に。

 人間社会そのものが病んでいる様な世の中だけど、どんな時だって、確かなものは必ずある。

 それを信じて、生きていける。

 信頼し合える仲間と、そして愛しい人。

 

 色々な辛かった経験は、全てここにたどり着くために必要だったのかもしれない・・・

 真実の愛を手にした今、心からそう思える。

 

 そして、カノンと大悟さん。

 この二人からも、本当の愛の絆の深さを学んだ。

 どんなことがあっても、本物の愛は決して負けない。

 相手を思いやる強さを、それを貫く事の強さを教えられた。

 

 何より私は隼人さんを通して、彼を愛する事で、自分の辛かった過去に、悲しいトラウマに、ある種の決着を付ける事が出来たと思う。

 自分を愛する事、人を愛する事、そのすばらしさに彼は気付かせてくれた。

 自分でいいんだということに・・・

 それに、彼の心の痛みを解ってあげられる・・・理解してあげられる・・・。

 それだけでも、私の辛かった日々にも意味があったんだと思える・・・。

 

 

 強くて優しい彼の存在が、こんなにも愛しいから。

 彼を見逃さずに、彼の愛を見送らないできちんと辿り着けたから。

 だからこれが、隼人さんとの愛が、私には真実の愛。

 もういちど、心から人を愛する事が出来たんだから・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ