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TRUE LOVE  作者: shion
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第八章 答え (3)

「さっき電話であんなひどい事言っちゃったのに・・・ごめんなさい。」

 落ち着きを取り戻したあおいが、俺の腕の中で言った。

「いいんだ。」

「私、あの時怖くて・・・あいつに襲われそうになりながら、隼人さんの事しか思い浮かばなくて・・・あなた以外はイヤだって・・・」

 

 顔面蒼白で震えながらやってきたあおいは、何度も何度もそう言っていた。

 

「ごめんな。助けてやれなくて。」

 もういちど、抱きしめた腕に力を込めた。

「そんな事・・・隼人さんは私のものじゃないんだし・・・」

 

 けなげに笑ってみせるあおいを、もう離せないと俺は思った。

 離したくない・・・

 俺はあおいを愛している。俺の手で守りたい。

 もうどこにもやったりしない!!

 こんなにも愛してるのに、手放せるわけなんか、ねぇんだよ・・・

 

「あおい、俺、もうダメだ・・・もう、ここにいろよずっと・・・。

 お前を愛してる・・・

 お前がこんな時に付け込むようでイヤだけど、お前の事、もう離せないよ・・・」

 俺はあおいの柔らかな感触を全身で包み込みながらそう言った。

 これ以上無いという位、愛しい気持ちで。

 

「隼人さん、ありがとう。すごく嬉しい・・・。

 私、怖かったんだ・・・ずっと自分に自信なくて・・・

 あなたを失望させちゃうんじゃないかって・・・だから、あんな事言ったの・・・。

 私ね、昔、みんなに無視されりひどい目に合ってた事あるんだ・・・

 その時家の方もゴタゴタしてて・・・父と母がもめたりしてて・・・

 なんか一気にいろんな事があって・・・本当にいろんな事が・・・

 みんなが私を責めてる・・・その頃はそう思ってた。

 それでね、そのうちに自分の事、大嫌いになっちゃったの・・・

 自分は人に嫌われるような人間なんだって・・・。

 その事があってから、人と本気で向き合うなんて事出来なくなったの・・・

 自分とも、向き合えなかったから・・・自分に自信なんか、一切持てなかったし・・・

 自分を愛してあげられない私が、誰かを愛してあげられるはず無いっていつも途中で逃げ出してた・・・

 いつまでもその事引きずって、変わることも出来なかった・・・。」

 そう言ってあおいは軽く微笑んだ。悲しげな瞳をして。

 

 ふいに俺に過去の傷を打明けてくれたあおいを、俺は余計に愛しく思った。

 辛い思いをしてきたあおい・・・心に大きな傷を、抱えながら生きてきたあおい・・・

 なんとなく彼女に感じた連帯感みたいなものは、これだったんだ。

 そして、そんな彼女を何度も傷付けてしまった自分の行動に、今更ながら再び後悔したりもしていた。

 俺のあのひどい態度に、そんな辛い経験をしてきた彼女は、どんなに傷ついた事だろう・・・

 勝手に彼女をイヤな女と思い込んでいた自分につくづく呆れてしまう。

 彼女は全く正反対の人間だったっていうのに・・・

 いや、だからこそ余計に今は、大切だって思えるんだ。

 そんな彼女だから。

 

「そんなん俺が全部受け止めてやるよ。その心の傷ごと。

 何も不安がる事ねーよ・・・。

 あおいが解んねえって言うんなら、俺があおいのいいトコ全部言ってやるよ。

 お前が自分で気付いてないお前のいいトコ、俺は解ってるからな・・・お前よりずっと。

 それに今さら失望も何もねえだろ?俺たち出だしが最悪なんだから。

 って言っても、最悪なのは俺の方だったけどな・・・。

 それに俺はお前の、上っ面だけを見て好きになった訳じゃない。ちゃんと本質を見て、好きになったんだ。」

「隼人さん・・・。」

 あおいは隼人の言葉が、その甘くて優しい口調が、彼の心が、深く深く心に響いて、彼が愛しくて、涙が溢れた。

 

「それにあおいは、大悟とカノンちゃんの事本気で心配してたろ?

 本気で大切だって思ったからあそこまで一生懸命になったんだろ?

 それって十分本気で人と関わってたって事じゃん。」

 

 俺はあおいが愛しくて微笑んだ。なんだか不器用な生き方のあおいが。

 

 解ってねぇんだな・・・お前は。自分の魅力ってもんが・・・

 

「そうなのかな・・・そうだね・・・。自分で全然気がつかなかった。

 隼人さんにそう言ってもらえると、そんな気がする。

 それにね、私解ったの。変われないとか、そういうことじゃないんだって。

 私だってやれば出来るって・・・出来ないって思い込んでただけだって・・・。

 私ね、近藤さんに襲われそうになった時、こんな自分はイヤだって、何も出来ない自分はイヤだって、何とかしようってそう思った。

 何かしなきゃって・・・そして、あなたのことしか思い浮かばなかった。

 あなた以外の人に、触れられるなんてイヤだって・・・そしたら、がんばれた。

 自分でもビックリしたのよ。やれば出来るんだって。

 私、きっと変われる。ううん、変われたんだと思う。あなたに逢って・・・」

 俺たちは見つめあった。

 

 

 こんなにも愛しいあおい・・・

 俺は今きっと、あおいの心を手に入れたんだろう。

 あおいの愛を手に入れたんだろう。

 初めて味わう、心から愛を欲した人からの、愛・・・。

 ずっと欲してきた、かけがえのないもの。

 今までに味わった事の無い穏やかな感情が、心を満たしていく・・・

 

「隼人さん、ほんとに私でいいの?」

「あおいだからいいんだろ。」

 微笑んで、俺たちは長い長い口づけをかわした。

 

 俺は、お前だからいいんだ。

 心に傷を負った、お前だから。人の気持ちが解る、お前だから。

 そんな心優しいお前だから、俺は惹かれたんだ。

 そして、お前は俺に本当の意味の愛というものを、

 俺にも人を愛する事が出来るんだって事を、教えてくれた。

 こんなにも深い想いがあるって事に、気付かせてくれた。

 

 お前以外の女は、俺には何の意味もないから・・・

 お前がいるだけで、こんなにも心が安らぐから・・・

 

 長い事わずらっていた俺の心の傷が、この愛しい人の手によって、癒されていく・・・

 ぽっかりと空いていた心の隙間が、愛という温かいもので埋まっていく・・・

 

 

 俺は、あおいを抱きたかった。ひとつになりたかった。

 あおいを抱きかかえ、ベッドにそっと横たえた。

「こわいか?」

 あおいは少し震えている。あんな事があったばかりだ、当然か・・・だけど、

 だからこそ今すぐあおいが欲しいんだ。あおいの心を体を、俺の手で癒してやりたい。

 

「ううん。隼人さんだから、大丈夫。」

 彼女が微笑む。

 俺は、俺の持ってるありったけの愛情で彼女の柔らかな温もりを、その心を、

 全身で確かめながら、包みながら彼女と体を重ねた。

 

 

 

 何よりも愛しいこの存在。

 俺以外はイヤだと言った、俺だけのひと。

 俺だから大丈夫だと言ってくれる、俺だけのひと。

 俺に本当の愛をくれた、初めてのひと・・・

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