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TRUE LOVE  作者: shion
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第六章 明けない夜 (3)

 私達は家路に向かっていた。隼人さんの家は、私の家から数百メートル離れたところにある。

 

「家まで送ってくよ。」

 彼が言った。

「いいよ、そんな・・・いつもいつも送ってもらうんじゃ、なんか悪いもん。」

「いいよ。何となく今日は心配だから。別に部屋に上がり込もうなんて考えてねーから心配すんなって。」

 そう言って、彼は笑った。

「そんな事思ってないけど・・・」

 

 私はドキドキした。さっき抱きしめられたせいだ。

 いつも彼は不意に優しくして私の心を揺さぶる。

 あんな風に抱きしめたらこっちがどれほど動揺するか、彼は解っているんだろうか。

 あんな瞳で見つめられたら・・・

 あんなに甘い声で、優しくささやかれたら・・・

 どれ位自分に魅力があるのか、解っているんだろうか。

 

 そんなことがある度に私は必死になって自分の心が倒れてしまわないようにこらえていた。

 彼は優しいし、頼りがいがあるし、ほんとに良くしてくれてる。

 そんな彼に、どんどん惹かれていく。

 止める手立てなどない位に・・・もう、この気持ちを無視する事はできない。

 だけど、あの日感じた彼への思い・・・

『この人は辛い・・・この人の心の傷は深すぎる・・・』

 直感で思った彼へのこの気持ち。その思いはたぶん外れてないだろう。

 彼の中には触れてはいけない何かがある・・・。とてつもなく大きな何か。

 そんな彼を、愛しぬける自信など、私には無いから・・・

 全てを解ってあげようなんて、おこがましい気さえするから・・・

 実際誰にも触れさせないという頑なな意思というか雰囲気も私は感じている。

 そんな彼が私には孤高な人にさえ見える・・・。

 

 

 

 

 結局、彼は私の家の前まで送ってくれた。

「ありがとう。なんか遠回りさせちゃって、ごめんね。」

「お前も何かあったらすぐ俺のとこに電話しろよ。愚痴でも何でも聞いてやるから。」

 彼が優しく微笑む。

「うん。そうさせてもらう。」

「色々疲れてるみてーだから、今日はゆっくり休めよ。」

 そう言って彼は、私の頭をポンと叩いた。

 そんな仕草一つにも、意に反してときめいてしまう。

 

 そんなに優しい瞳で見つめないでよ・・・

 そんなに甘い声でささやくように言わないでよ・・・

 そんなに優しくしないでよ・・・

 

「うん、ありがと、隼人さん。気をつけて帰ってね。おやすみ。」

「おやすみ。」

 

 彼が何度も振り返りながら帰って行った。

 私はその後姿を、複雑な思いでいつまでも見ていた。

 

 ちょっと前までは人を本気で愛せない自分にあんなに悩んでいたのに、今は彼を本気で好きになり始めているがゆえに悩んでいる。

 どっちにしたって自分を愛せないこの心がいけない・・・

 自分ときちんと向き合えない、いつまでも立ち直れないこの心がいけない・・・

 

 

 

 

 

 

「あおい~、昨日の彼とあの後どうだったの?」

 悦子のこの明るい声で、私の日常が始まる。

「どうって?」

「も~またまた~。デートしたんでしょ?彼と。」

「デートって・・・」

 

 私は昨日の近藤さんの事を思い出した。

「彼と一緒に歩いてたらね、近藤さんと会ったよ。」

「ウソッ。」

 悦子が複雑な表情を浮かべる。

「で、どうしたの?」

「うん。あやまったよ、近藤さんに。」

「それで?近藤さん何て?」

「私って女は怖いって。やる事えげつないって言われた。」

「そう・・・あおい近藤さんには友達としてって言ってたんだよね?でも近藤さん、ほんとにあおいの事好きだったみたいだからね・・・」

「いいのよ。言われて当然だよ。彼の気持ち半分知っててズルイ事言ったの

 私の方なんだから。」

「そっか・・・・・。」

 悦子が納得したように、ため息交じりでうなずいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後ーーー

 今日は会社の創立記念日だったので、平日だけど休みだった。

 カノンが早引きしてうちに来ると言い出したので、私は快諾した。

 お昼過ぎに、カノンはやって来た。

 

「はぁーダメだ。あたし仕事に身が入んない。」

 カノンは来るなりゴロリと横になった。

「まったくぅ、ダメだぞ!仮病使っちゃ~。」

 私はわざと明るく言った。

「ねー、気晴らしに今日はどっか行かない?遊園地とかさ~。」

 カノンが横になったまま言った。

「そうだね・・・昔よく二人で行ったよね・・・。何かなつかしー。

 よし!いっちゃおっか!」

「行っちゃおう!」

 私達は顔を見合わせてケタケタと笑った。

 カノンの笑顔見るの、ほんとに久しぶりだな・・・私はそう思った。

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「あっ、ストッキング切らしてたんだ・・・。私ちょっとコンビ二行って買ってくる。」

 支度を始めたあおいがそう言って財布ひとつもって出て行った。

 

 ったくそういうとこ、妙にズボラなんだから・・・

 そう思いながら、私はTVを付けた。別にこれといって面白い番組なんてやってない。

 

 しばらくして、テーブルに置きっぱなしのあおいの携帯が鳴った。

 誰だろう・・・。

 私はあおいの携帯を手にとった。

 

 ‘‘大悟さん‘‘

 

 何これ・・・私は恐る恐る電話にでてみた。

 

「あ、あおいちゃん?ゴメン仕事中に・・・」

 

 懐かしい大悟の声。心が震える・・・

「カノンの様子聞こうと思ってさ、こっちは相変わらず、あの女が付けまわしてて・・・あおいちゃん、きいてる?」

「大悟・・・」

 私は思わずつぶやいた。

「えっ?カノン・・・?」

 彼の声色が変わる。

「うん・・・あたし・・・」

 

 そこへ、あおいが帰ってきた。

 のん気に鼻歌かなんかを歌ってたけどボー然と立ち尽くして自分の携帯を持っている私を見て、あおいの顔色が変わった。

「カノン、貸して!私の携帯!」

 あおいは私に駆け寄ってきて、携帯を取り上げようとした。

 

「何よ!何なの?!どーいう事!!二人でコソコソ連絡なんか取り合って!!

 あの女って何?何よ!何なの?!」

 私はパニックになって叫んだ。

「カノン、落ち着いて!ちゃんと説明するから。」

 あおいが私の腕を掴んでそう言う。

「何が!何をよ!!」

「いいから、まず携帯貸して。」

 きつい口調でそう言って私から携帯を取り上げた。

「あ、大悟さん、うん、うん、カノンには私から全部話すから。うん、こうなった以上しょうがないよ。ううん。こっちには来ないで。そう、うん、落ち着いたら、こっちから連絡するから。うん、じゃあ。」

 

 あおいは携帯を、切った。

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