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TRUE LOVE  作者: shion
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第一章 出逢い (1)

「あおい、今日K会社の人たちと合コンやるんだけど一緒に行かない?」

 

 ロビーに人が居ないのをいい事に、悦子が切り出した。

 私はテナントの複数入った20階建てのビルの、受付嬢をしている。

 その同僚で、毎日顔をあわせるのがこの悦子だ。

 悦子はすごく顔が広い。いつの間に?ってこっちが驚く位私が知らぬ間に知り合いを作っている。

 受付という仕事をやっていると、確かにお声がかかる事は多い。

 お声が掛かるなんて言ったって、相手は上っ面だけしか見ないような、軽い男がほとんどなんだけど・・・

 だけど男の人はみんな決まって初めは悦子に声を掛ける。

 整った顔立ちと清楚な雰囲気、明るい性格が親しみやすさをかもし出しているのだろう。気軽に声を掛けれるらしい。

 そして彼女はたいがいの誘いは断らない。

 そこが彼女のスゴイところ。少しでもいい条件の人を求めているらしい。

 

 私はというと・・・別にモテない訳でもない。

 でも、どちらかというとキツめの顔立ちと、どこか冷めているのが雰囲気に出ているのだろう。声を掛けるの、何となく躊躇してしまうとよく言われる。

 話してみると気さくな人なんだね、なども、大概の人が口にする。

 それに私は、男を選ぶ基準は、決してお金ではない。

 

「ねぇあおい、行かない?」

 そんな事をボーっと考えていると、悦子が私の腕を軽く突いた。

「え?あっ、うん・・・」

「そっか、どうせあおい彼が居るからね~。」

 悦子が私の返事も聞かないで勝手に言っている。

「うーん、行こうかな・・・。この前彼と別れたんだよね・・・。」

 何となく気乗りしない部分はあるけど、たまにはこういうのもいいや・・・

 一時でも寂しいのがまぎれれば・・・。

 そんな事を思いながら私は言った。

 だけど、その後言い知れぬ空しさが襲ってくる事も、十分解っている。

 

「えーっそうなんだ!あおいの事イイって言ってる人結構多いのよ。

 そっか別れちゃったんだ~。あちこち連絡入れないと・・・忙しくなるな~!」

 悦子は勝手に一人で盛り上がっている。

 まったくもう・・・人の気も知らないで・・・でも何だかすごく悦子らしい。

 自分もちゃっかり便乗してしまおうって魂胆らしい。

 こういうトコ素直って言うか、妙に開けっぴろげなのよね・・・

 私は微笑ましい様な呆れたような、複雑な気持ちで、悦子を見ていた。

「でもさぁ、何で別れちゃったの?あおいがフッたんでしょ~。」

 悦子は悪戯っぽい目で私を見た。

「まぁね・・・」

「やっぱりね。でもなんで?谷口さん、いい人だったじゃん。お金持ってたし。」

「う~ん、そう来るか・・・。」

 確かに彼はお金は持っていた。青年実業家だったし。でもそんな事は

 私にはさして関係なかった。私が相手を選ぶ基準はお金なんかじゃない。

 彼はそこそこ優しかったし、スマートなリードでデートも素敵だった。

 だけど・・・

 何かが足りない気がした。一緒に居てそれなりに楽しいのだけれど、いつも心は空虚な感じで一杯だった。

 そんな私の心など全くお構いなしに二人は結婚するのが当たり前のように話を進める彼に、引いてしまったんだ。そこまでの付き合いをせまられて、

 逃げ出してしまったんだ。

 

「結婚結婚って言われちゃってさ・・・重たくなったって言うか、何て言うか・・・すごくいい人だったんだけど、いい人過ぎて・・・このままズルズル私につき合わせちゃいけない気がしてさ・・・。」

「ふ~ん、でももう27でしょ?私達の歳から考えたら、それが普通じゃん。それに、そろそろヤバいっしょ?賞味期限まじかって感じ?

 私なら迷わず結婚しちゃうのにな~。逃がした魚はオッキかったんじゃないの~」

 悦子が言う。

「そうかもね・・・」

 私は軽く受け流した。

 ‘‘結婚‘‘その言葉は私の胸に、イヤな波紋を描いた・・・

 

 

 

 私達は4対4で恵比寿にあるイタリア料理店に集まった。

 私と悦子以外の二人は、私も多少面識のある悦子の昔の勤め先の知り合いだ。私の口から言うのもなんだけど、外見は結構レベルの高いコ達が集まった。彼女達も受付嬢なのだから。

 相手の男の人達はと言うと、うちのビルのテナントに入っている会社の人たちだ。知った顔が並んでいる。もちろん、挨拶程度しか面識は無いのだけれど。

 悦子が仕切り始めた。

「じゃあ、男性の方、一番端から自己紹介お願いしま~す!」

 つくづく思うのだが悦子は本当に、私の知らぬ間に色々な人と親しくなっている。

 今日の合コンでも、三上 正也という人と何やら打ち合わせしたらしく妙に親しげだ。

 

 

「近藤さん、あおい狙いなんだよ。」

 トイレに行って手を洗っていると、悦子が脇から言ってきた。

「ふーん、そうなんだ。」

「何よ何よ、テンション低いわねぇ。タイプじゃない?」

「うーん、別にそう言うんじゃないんだけど・・・別れたばっかだしね。なーんとなく・・・」

「ダメよ!そんなんじゃ。男の傷は男で埋めなくちゃ。って言っても、傷ついてんのは谷口さんの方だろうけどね。」

 悦子がウインクする。

 ハッキリ言ってくれるわね・・・そりゃそーだろうけど・・・

「私だってそれなりに傷付いてるわよ。」

 私は軽く口を尖らせた。

 

 合コンはみんな話し上手でそれなりに楽しかった。

 でも、早く帰ってゆっくりしたい気もしていた。何か空しいし・・・

 

「じゃあ今日の所はこれぐらいにして・・・後は皆さんご自由に!」

 悦子が明るく言う。

「私このまま三上さんと飲み行くけど、あおいどーする?」

「私は帰るわ。なんか疲れちゃったし」

 悦子の問いにそう答えた。

 もういいや・・・こういうの。やっぱ空しいだけだった・・・。

「そっか、解った。近藤さ~ん!帰り一緒の方向だったよねー?あおいの事送ってって~!」

 すでに外に出ていた近藤さんに向かって悦子が駆け寄った。

「ちょっと!いいわよ、そんなの。」

 私は面倒くさい気持ちでそう言った。

 

「ああ、送っていくよ。」

 だけど近藤さんは、はにかみながらそう言った。

「いいんですよ。一人で帰れるし。」

「いや、あおいさんがイヤじゃなければ、遅らせて欲しいな・・・」

 彼が頭をかいた。

 そうは言ってもね・・・。

「そうよ!夜道は危ないんだから!!もうあおいったら~!ハズカシがんないで送ってもらっちゃいなさいよ~!!この、ムーミンが!!」

 

 悦子少し酔ってるの?以上にテンション高いぞ・・・

 悦子のしつこさに収拾がつかなくなりそうだったので

 私は送ってもらう事にした


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