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第八話 占い師のレイシ?

 これはホラーではないのは確かです。

 占い師のもとへ行きました。物事が全くうまく行かず、恋人との別れや失業などが重なりあり、そういうことを信じない親は反対したのですが、黙って行ってみる事にしました。

 そして、ドアをノックもせずに入ると、中年の男の占い師は驚いて姿勢を正しました。暇だったのでしょう。

「そちらへどうぞ」

 占い師は正面の席を勧めたので、僕は座りました。

「何をお悩みですか?」

「ちょっとその前にお金いくらなんですか?」

「相談料一万五千円です」

「そんなにするんですか?」

 ちょっと驚いて、僕は言いました。

「じゃあ、まけて一万四千五百円」

 それだけしかまけないのかよ、と僕は思い、怪しくなって聞いてみました。

「もしかして、その他に水晶やら、御払い料とかつくんじゃない?」

「それはありません」

「本当ですか?」

 僕は念を押します。

「はい、私はみえることはみえるのですが、そういったことは致しません」

「なんでしないの?」

「そんな力はありませんから」

 世の中インチキ占い師が多いがどうもちょっと違う。でも、なんか真っ当な占い師にも思えない。

「でも、相談料が高いですよ」

「じゃあ、一万三千円」

「お金ないんだよね」

 本当にそうだったから、僕は言いました。

「私も生活がありますから」

「占いって、だって人助けみたいなもんでしょう?そんなこと言ってたら、客もこないでしょう」

「あなたがどういうイメージで占い師を捉えているかはわかりますが、私は正直な人間でありたいと常々思っていまして、自分の生活を壊してまで人に尽くしたいとは思いません。でも、多少は人助けにはなると思っています」

「はあ、せめて一万円にしてくれない」

「嫌です。私もお金に困っていますので」

「はあ、じゃあ、一万一千円で」

「一万二千円で占いましょう。……あなたの家というよりも、こういうときはご先祖の家をレイシします。結構広いのですが、ちょっと空気が悪いですね。これは何かいますね」

 僕の了解を得ずに始めてしまったが、やはりそう言われる僕も気になる。

「何がいるんですか?」

「……あなたのご先祖の家は昔からある農家ですね。ふむ、ご先祖様には悪い人はいないですね。人柄はみんなよくて、強いて上げればお人よしでよく人に利用されたり騙されたりしたようです。ただそんな悪い因縁もありませんが、良い因縁もありませんね……」

「はあ……」

 なんか悪いんだか良いのだか、すごく曖昧過ぎです。

「ごく普通の家系です。仕事はあなたがちゃんと探せばあります」

「そうですか……まさか、それで終わりではないでしょうね?」

僕に言われたことで、占い師は仕方がなく、明らかに言葉をつなげようとします。

「えーと……」

「何かいるんじゃなかったのですか?」

「あっそうそう……ふむ、なるほど、仏間に何かいますね」

 それが聞きたかったのよ、と僕は思いました。

「ううむ、仏間はそんなに広くないですね。……そこに居るのはあなたのご先祖様で、今でもそこにいます。……あなたに非常に似ていますね。……小柄ですが、身体はじょうぶだったようです。あなたはこの人に非常にかわいがられましたね。……その人がネコに餌をやっている光景が見えます。……そのネコはたぶん……、うむぅ!」

 僕は祖父のことを思いました。祖父は猫好きだった。占い師はあたかも何か悪いことがあるかのような顔をします。

「ネコが何かあるんですか?」

「いや、そのネコは化け猫になりかけている」

「はあ、それは怖い。どうすればいいのですか?」

 なんか気の乗らない僕申し訳程度に言いました。

「いや、寿命が長くて、ただそれだけで、かわいがられてすでに亡くなっているが、家にいるだけで悪さはしない……それよりもあなたのご先祖様だな……この人が呆けている様子が見える。ふむ、ふむ」

 どうもやはり僕の祖父の事を言っているらしいのだが、何か腑に落ちない。そんなことを思っているが、占い師は続けた。

「はあ、この人は妻を先に亡くしていて……その後ひとりで生活していたようだ。なるほど、この人は時々呆けていたが、ちゃんと生活していたようだ。ああ、そうか……この人はあなたのおじいさんですね」

 僕の祖父は仏間でいつも寝起きしていた。それがどうしたというのだろうか、と僕は思いました。

「おじいさんが会いたがっています。あなた大人になってから会っていませんでしたね」

「ええ、それが何か運気を下げている原因ですか」

「そのとおりです。これではおじいさんが浮かばれません。あなた、おじいさんのところに行かないといけません。でも、あなたも本当はずっと気にかけていたのですね」

 占い師の言う事を聞いていると何かズレていると思ったのです。僕は釈然としないながらも聞いていました。

「おじいさんは淋しかったのですよ」

「そうですか。いつでも会えると思っていたので……ついつい」

「それが運勢を下げてしまったのです。あなた、おじいさんに会いに行ってくる勇気がありますか?」

「会いに行ってくればいいんですか?」

 僕はなんか変に思いました。何か気の抜けたオチが待っているような気がします。

「そうです。その方法はわかりますか?」

「ええ、今も田舎で生活していますから」

「あっ、生きてたの」

 呆れて僕は占い師に呟きました。

「はあ?やっぱりそんな感じですか」

 



































    予定通り八話まで掲載できました。もしすべて読んでくれた人がいましたら、その方に感謝いたします。

 このまま完結しようかと思いましたが、他の某文学賞に応募した落選する作品を掲載しきって、この短編の連載を終了しようと思います。

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