付話3 無題
最終話です。
ありました。ありました。ある村に男の子がありました。
男の子はお参りにきました。
ありました。ありました。村のはずれに祠がありました。
雨が降っていました。風がうなっています。そこは道祖神が祀られています。それが男の子にはよくわかっていません。大人でもわかっている人はいないでしょう。男の子には「どうそしん」という感じで、とにかく願い事が叶うということをじじ、ばばから聞かされていたのです。
ありました。ありました。鬱蒼とした森がありました。
かろうじて太陽の火が残っていました。こういう日はお化けが出るとよくいわれていましたが、男の子は父親と喧嘩して勢いで飛び出して来たのです。 傘を差したまま、どちらかというと傘を被りながら、男の子はしゃがんで手を合わせ祈ります。喧嘩の理由は自分がお父さんの言いつけを守らなくて怒られたのですが、男の子は逆に根を持って、「どうそしん」に祈ったのです。ですが、自分が悪いことは知っていて、やましさがあります。それでも、意地を張って祈っていましたが、当然神様は答えてくれません。
ありました。ありました。夕闇迫る村のはずれの祠で、男の子がありました。
そのうち、男の子は怖くなってきました。風は吹くし、お化けは出そうだし、どうしようと半分怯え、ついに神様なんか大嫌いと言ってにらんだのです。
するとどうでしょう。
どさっ!という音がしたかと思うと、傘の上に何かのっかってきたのです。すっかり男の子は怖気づいてしまいました。半べそをかきながら、すごく怖いし、動こうにも重くて動けません。何がのっかっているのか暗くてわかりません。ついに怖くなってごめんなさいという始末です。
「お父さん、どうそしん、ごめんなさい」ということを何べんも言いましたが、傘にのっかったものはどけてはくれません。
男の子はどうしたら許してくれるのかわかりません。しゃがんだままでしたので、足も腰も痛くなってきます。
「許してください」と言ってついに泣き出しました。苦しくてつぶれてしまう、死んでしまうと怖くて仕方ありません。
するとその時、強い風が吹いたのです。
のっかったものが飛ばされました。ふっと身軽になって、しばらく「ありがとうございます」と何度もお祈りし、許してくれて良かったとほっとして立ち上がりました。
ありました。ありました。そこには人の心がありました。
周りは暗くて、心まで心細くなって、男の子はありもしないものを感じたのです。何が男の子にのっていたかというと、それは大きな木の枝でした。強い風で折れたのがそのまま落ちてきたのです。
ありました。ありました。そこに人の子の悲しさがありました。そして、いつものように祠がありました。
八話まで某公募で落選した本文そのままで掲載。付話1は別の某公募で落選した本文を修正して掲載。付話2は某公募で落選した本文をそのまま掲載。
最終話はついでに軽く書きました。
ありがとうございました。
全部読んだ方がいましたら、感謝します。少し読んだ方にも感謝します。 しばらく投稿はないです。忘れてくれて結構です。




