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熟れることなし

作者: 水峰うらら
掲載日:2026/10/14

短編のヒロイン?足立ヒカル視点の話です。短編をゲームでいうグッドエンドだとすれば、このお話はバッドエンドのその後のお話です。でもゲームの前の話は一緒なので読んでみてくれると嬉しいです。

一部抜粋

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X年N月M日 『ヒカル』 優しい声色がじんわりと私の耳に溶け込んでいった。「なに?」『僕と付き合ってくれないかな、今更言うのもなんだけど』「...もちろんいいに決まってるじゃん...」『じゃこれで僕たち晴れて恋人、だね』彼の屈託のない微笑み、いつも見ていたけどその日は特別素敵に見えた。

これが事故の前日のことだ。彼は優しい人だった。小学校から高校まで一緒だった幼馴染と、いうべきか、私の初恋の人と言うべきか、とにかく言葉では言い尽くせないほど彼は私にとって大きな存在だ。私は彼とこれからの生涯を共に暮らすと、思っていた。そんな幸福な時期だった。彼は小学校で少し女子たちの間でひそかな人気を集めていた。少し、もやっとしていた。そんな彼の恋心を自覚したのは、中学生に入ってから彼の両親たちが彼を置いて逝ってしまったというのを、彼自身から聞いた時だった。彼に励ましの言葉をかけて、「そんなにお金が心配なら私、両親に頼んで養子縁組させるから!」と言った時だった。彼を自分の両親に養子縁組するように働きかけるほど仲が良かったわけでもなく、両親は彼のことを知らなかった状態だったのに、そんなことを言ってしまった。後にそのことに気づいたとき、私は顔を真っ赤にしてバクバクと早まる鼓動を聞いていた。結局彼はその後『ごめんな、心配かけてでも大丈夫だから』といった。心配かけているわけじゃない、あなたのことが大切なんだと言えばよかった。そんなこんなで中学校生活はなんにも進展がないまま、高校生を迎えた。中学生にして彼は孤児院へ行き、高校生では最年長としてほかの子供たちを支えていた。高校では私が彼のことを好きだということが、同じクラスメイトにバレてしまい、彼と話すのも段々なくなっていた。ある日、たまたま同じ時間帯に一緒に帰ることになった。彼は『いつも僕のこと励ましてくれてありがとう』とお礼を言った。私はつい、「ありがとう、...好き」と言ってしまった。つい漏れ出てしまった。でもこの告白はスルーされてしまった。聞かれてなかったようだ。

話は変わるが、彼は孤児院に行った後からいじめられていて、高校生になってもそのいじめが続いていた。しかし彼と私は違うクラスで、授業が一緒になることもなかったので、止めるなんてことはできなかった。止めればよかった...と後悔している。もしこの世界に神、なんてものがいたらきっとそれにすがって彼が亡くなる日までに時を戻してなんて願うかもしれない。いじめは高校生になって一年後にぱったりとおさまった。主犯たちが、退学になったからだ。それから私は彼と一緒に帰ろうと言ったり、休日に二人で出かけたりした。そして、彼が見せる微笑みは私をりんごのように真っ赤にさせた。もちろんその間に何度も告白した。でも『両親がハマっていた宗教と決別ができてから』といった。彼は両親が残した教団への寄付金を借金として、払っていた。決別、というのは借金がなくなることだ。事故が起こったその日はちょうど借金を払い終わる日だった。そして事故に巻き込まれて...、数日後に死んでしまった。彼の親族はとても良いひとたちだったが、彼を引き取るようなことはしなかった。その人たちと一緒に遺体を見たが、今にも動き出しそうな、今もただ眠っているだけのようなそんな気さえした。でも私、あなたの名前のことを忘れてしまいそうになるの。まだ事故から二週間しか経っていないのに。まるで世界全体があなたの存在をなかったことにしてしまいそうで、そんなわけないのに、私が覚えてないだけなのに。

だからあなたの名前をここに書くの。あなたが世界から忘れられないように書くの。あなたの名前は、中田瑠衣だってことを。

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この日記はこの後のページが破り去られている。

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「ふぅん、なにこれ」

「この日記、意外と読めるわね」

「でもこの後のページはこれを書いた人物が死ぬだけのお話でつまらないわ」

「そうだ、破ってあげましょう」

   びりびりッびりッぐしゃぐしゃぐっギュッ

「これはゴミ箱に捨てて...」

「日記はせっかくだから数十年後ぐらいに世界に公表されるようにしときましょうか」

「そっちのほうが面白いですしね」


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このお話を見てくださりありがとうございます。このバッドエンドはパラレルワールド的な感じなので短編の内容に直接のかかわりはないです。

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