7話 エース&…
極度の人見知りって、結構慎重なんです。
めちゃくちゃ考えて話すんですけど、テンパっちゃうんです
「よし。これで準備万端です!呼び出しに行きましょう。」
「なあ、テスト受けさせるだけなのに、どうしてこうも準備が必要なんだ、ノア?」
ルカが面倒くさそうに言うと、ノアは呆れた表情になる。
「こういうのは、研究者として協力したいかの確認と、協力することの合意が必要なんです!学院長が、私をアシスタントにするだけでも、契約書を沢山書かされましたから。」
「へいへい。」
〜1時間前〜
「急には無理ですぅぅぅぅ!」
「狼狽えるな!俺がついてるぞ!」
「もうっ!やめてくださいっ!"ファイアーボール"!」
ボフッボフッ
「アッツ!"ウォーター"!」
ノアのファイアーボールがルカに直撃し、ルカの動きが止まった。
「もう!何するんだ!もう3学年のエースに会ってるってのに、他学年のエースには会いたくないってか?」
「違います!あなたはわからないと思いますが、私は人1人に会うにしても準備が必要なんです!その準備もしてないのに、会いになんて無理だって言ってるんです!」
「もうっ!わかったよ!準備すればいいんだな?」
「そうですよ。」
「よし、なら会議室行くぞ。準備とやらは、どうせテスト内容とか審査基準のことだろ?」
2人は会議室に向けて歩き出す。
「まあ、そんなとこです。」
「はぁ。なんで会うだけで準備が必要なんだか…」
〜〜
そして、今に至る。
「まさか、話す内容まで用意するとは…」
「大事ですよ。備えあれば憂いなし!これで安心して会いに行けます!あなたからある程度の候補者の情報を聞けたのが、何よりも安心材料になりました。その…、ありがとうございます…//」
(照れてら!あはは!子供らしくて、かわいいとこあんだよなぁ)
ノアが少し照れながら言う感謝に、ルカはほっこりした。
「じゃ、準備整ったし呼び出すか!」
「はい。」
12時に、ルカの用意した転移魔法陣で8人のエースに手紙を送る。
「送れたようですし、時間まで準備に専念しましょう!」
「まぁだやるか?」
ルカは嫌そうに言う。
「もちろんです!」
4時間後、ルカとノアは集合場所の大練習場にいた。ミリアは集合時間の10分前に来てくれていた。
「ミリアさん!来てくれて良かったです!」
「もちろん!私が研究の話を院長にしたからね〜」
話していると、続々と他のエース達が集まる。全員で大練習場に入る。ノアは全員の前に立ち、説明を始める。
「今回は、来ていただきありがとうございます。皆さんにはまず、この研究に協力していただく合意をしていただきたいと思います。」
ノアは研究の説明をし始める。
(ノア、人見知りとか言って普通に話せてんじゃん)
ルカは笑顔で見守る。
「ここまでで、研究に関する質問はありますか?」
エースたちは、首を横に振る。
「それでは、この研究に協力してくださる方は、この書類に目を通した上で署名してください。」
ノアはエースたちに書類を配る。エースたちが署名し始めたのと同時に、肩の荷がおりた。
(緊っ張したぁ。大丈夫だよね?)
ノアがちらっとミリアの方を見ると、ウィンクが返ってきた。全員の書類を集め、目を通す。皆が同意してくれている。
「では、自己紹介をしましょう。私はノア・フェレアです。ティーチャー・クローネのアシスタントをする予定でしたが、この研究をしたくて研究者として、学院に協力していただくことになりました。まだまだ未熟な所があると思いますが、よろしくお願いします。」
パチパチパチ
ミリアをはじめ、全員が拍手をする。
「ど、どうも…。次からは学年順でお願いします。」
「じゃ、俺だな。1学年、カイン・グランヴェ。水と土属性の魔法を使う。研究参加は放課後だけになるかもしれないが、よろしく。」
「次はあたしね!2学年、レオンハート・ブレイズ!火属性の魔法しか使わないわ!研究はいつでも参加できるけど、つまらなくなったら来なくなっちゃうかもー。ま、よろしくね!」
レオンハートはノアに視線を向ける。
(レオンハートさんをどうにか繋ぎ止めないといけないか…)
「私は3学年、ミリア・アルディ。火と雷と風属性の魔法を使うよ!この研究は内容だけじゃなくて、ノアにも惚れてるから、参加一択!」
ミリアはいつも通り話す。
「あたくしは4学年、ゼファティス・ヴォル。風と雷属性の魔法を使いますの。研究には積極的に参加する予定ではありますわ。」
「5学年、ルシル・ノクスだ。光と闇属性の魔法を使う。俺は無詠唱で魔法を放つことに興味がある!協力は惜しまないよ。」
(なんだか、口角が引きつってる?)
ノアはルシルの口角が異常な程上がっているのが気になった。
「6学年、エルヴィ・シルファだよ。僕は木属性の魔法しか使わない。研究協力はしっかりするよ。」
「7学年のイリシア・フロストです。氷と水属性の魔法を使います。研究、楽しみです…!」
「最後は僕だね。8学年のセレディ・アークレンだ。空間と水属性の魔法を使っているよ。研究には、個人的に興味がある分野だ。参加できて光栄だよ。」
パチパチパチ
「皆さん、自己紹介ありがとうございます。この研究は」
「ちょっとー!あたしたちの使う属性教えたんだから、ノアちゃんのも教えてよー!あ、見せてほしーなー!」
レオンハートが話に割って入った。
「す、すみません…。私は、火・水・風・土・光・木属性の魔法を使います…。」
ノアは6属性の下級魔法を、順番に放った。
「ま、待って!待って!これは、マジなんですか?ティーチャー・クローネ…?」
レオンハートの問いに、ルカは黙って頷いた。
「見ての通りだな。下級だけじゃなく、中級あたりまで難なく放てるだろうな。」
「「「「「「マジ?」」」」」」
ミリア以外の7人のエースが驚く。7人はノアに近づく。
「俺に土属性を教えてくれ!」
「あたしと戦って!」
「俺は、君に闇属性を教えよう!」
「僕と一緒に、自然と融合しよう!」
「私の氷属性、教えます!」
「どうやって、6属性も身につけたんだい?」
夢中で質問する7人が、ハッとして後ろに下がる。
「す、すまない…。ミリアと院長から話は聞いていたんだが、実際見ると違うな。7歳でできるものなんだな。」
セレディが困るノアに、優しく言う。
「だ、大丈夫ですよ。ちょっとびっくりしたくらいなので。あ、じゃあ研究室案内しますね。」
(ビビった…。怒りを買ったかと思った…!)
「「「「うん!」」」」 「「「「おう!」」」」
ノアはエースたちを研究室に案内した。ノアも初めて研究室を訪れて感動した。ドーム型の研究室には、必要な物は全て揃い、9人だけでいるのが勿体ないほど広い。天井はガラス張りで、太陽の光が室内を照らす。
「設備が全部整ってる…」
「来てなかったの?」
ミリアが聞く。
「はい。準備してたら、時間なくなっちゃったんです…」
「そっか!なら、みんなで初めて来たわけだし、まずは円陣組もう!」
「え…?」
「ほら〜!みんなで円陣するよ!」
何が何だかわからないノアを他所に、ミリアがみんなを呼び始める。皆が集まると、すぐに円陣を組み出す。
「ほら、ノア!掛け声!」
「や、やったことないですよ…」
「頑張るぞー!とかでいいから!ほーら!」
ミリアがノアを急かす。
「えっと…。研究、頑張るぞー!」
「「「「「「「「オーッ!」」」」」」」」
エース全員がノアの掛け声に反応した。
(嬉しい…)
ノアは人生初円陣をして、絆というものがなんとなくだが、わかった。自然と笑顔が生まれた。
「そういえば、魔法動物を扱うんだよね。何の動物なの?」
「それは…」
ノアは卵を取り出す。
「これからお世話をして、孵化させます。」
「つまり、まだ用意出来ていないと?」
カインが言う。
「頭のお堅いカインは、魔法動物を使う研究がどれだけ難しいか、わかってないわね〜。さすが、"バカイン"!」
「俺はバカじゃない!魔法動物なんて、研究者が育てる必要ないだろう!」
レオンハートの挑発に、カインはあっさり乗ってしまう。そこにルカが割り込む。
「それがなカイン。まだ子供のお前たちが研究をするにあたって、安全面を考慮するとなると、魔法動物と仲良くしてもらわないといけないんだよ。その方が研究もやりやすいしよ。わかってくれるか、カイン?」
「それなら…。育てましょう。」
カインは少しムスッとした表情を浮かべて、育てることに賛成した。
「ありがとうございます。他の方もよろしいでしょうか?」
全員が頷いて賛成する。
「では、どんな魔法動物が産まれるかわかりませんが、まずは孵化まで頑張りましょう。」
「はーい!」
レオンハートは元気よく返事をする。
次の日からノアとエースたちは、卵を孵化させるために毎日研究室に通い、必要な環境を整え続けた。カインも放課後だけの参加になったが、毎日来てくれた。
〜半年後〜
誰もいない研究室で
ピキッ
と音を立てて、卵にヒビが入った。
「ふわぁ〜。眠いです…。おはようございます。卵さ…、っん?!」
いつも通りノアが1番に研究室に来て、卵に挨拶をした。ヒビが入った卵を目にして、目を見開く。
「やったぁぁぁ!どこかにぶつかったとかじゃないですもんね?この子が自力でヒビを入れたんですもんね!ここまで約半年…。長かった…!」
ノアは卵を抱きかかえる。
「エースの皆さんにも頑張っていただいたんです!早く伝えて、お祝いです!」
ノアがドアの方へと振り向くと、エース8人が微笑んでノアを見ていた。
「あ…、えっと、嬉しくて、つい…//」
((((((((照れてる…!か゛わ゛い゛い゛ぃ!))))))))
8人はニヤけるのを我慢しながら、ノアの元に駆け寄る。
カイン「やったな!」
レオンハート「良かったわね!」
ゼファティス「一旦、お疲れ様ですわね!」
ルシル「がんばってたもんな、ノア!」
エルヴィ「生命の誕生だ…」
イリシア「良かった…良かったです!」
セレディ「よくやった…!ノア!」
7人が続々と言葉をかける。
「ノア、おめでとうっ!」
ミリアが引き取った卵は、5か月前に孵化をしていた。そのため、なかなか孵化しないノアの卵にヒビが入ったことは、9人にとってビッグニュースだった。
「はい!皆さん、ありがとうございます!ティーチャー・クローネと学院長に報告しに行きましょう!」
「「「「「「「「うん!」」」」」」」」
9人は研究室を出て、廊下を歩き出す。その時、ノアが思い出す。
「あ、あと魔法動物学科の皆さんにもですね!」
「「「え?」」」
レオンハートとエルヴィ、イリシアが立ち止まる。
「私は遠慮しておくよ…。あ、エルヴィ先輩とイリシア先輩も、やめとくってさ!あはは…」
「どうしたんですか?嫌なんですか?」
レオンハートの言葉に、ノアは疑問を持った。
ギクリッ
(ノアはなんで、こういう時に限って察しがいいんだ…!)
ノアが3人以外のエースを見ると、皆がノアと目を合わせないように、下を向いている。
「はぁ。皆さん…。確かに色々ありましたけど、魔法動物学科の方々は孵化させるのを、協力してくださったんです。感謝とまでは言いませんが、せめてヒビが入った報告ぐらいはしないとダメですよ!」
「「「うっ…」」」
ノアの言葉はレオンハート、エルヴィ、イリシアにぶっ刺さった。
(確かに…)
「みんなでお礼、言いに行こっか…。ね?」
セレディの言葉で皆が歩き出す。
(さすがセレディさん。8学年として、リーダーに向いているんだろうなぁ)
9人が魔法動物学科に向かって歩き出すと同時に、一限の鐘が鳴った。
「あ!俺、一限行かないとだ。」
「いいでしょ。授業なんかよりも、こっちの方が大事!」
「だな…!」
レオンハートはカインを止めた。魔法動物学科の前に着く。エースは全員、緊張した面持ちで深呼吸をする。
コンコンッ
「ノア・フェレアです。今回は、孵化に関する報告をさせていただきたく、出向きました。」
「…」
ドタッバタッガンッ
ガッチャッ
「とうとう、孵化したのかなっ?諸君!何が出た?何が出た?やっぱり、フェリックスかねっ!アハハッハハハっ!さぁっ!入りたまえ諸君!」
出てきたのは魔法動物学科のエース、"アズトラ・ダリウス"。
「あたし、やっぱりこいつ嫌いだわ」
「激しく同意だよ。」
心優しいエルヴィが、レオンハートの言葉に同意してしまった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。




