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5話 魔法オタクと指輪と卵

ノアが持ってきた指輪、ドワーフもびっくりです。

学院の周りの森を抜けて都市に降りると、全ての道の両側が店のテントに覆われており、歩く道がないほど人で溢れていた。


「人が凄いです…。私、小さい町の外れにお義母さんとお義父さんと私の3人で住んでいたので、人に会う機会が滅多になかったんです。ましてや、こんな人だかり、初めてです…。」


ノアはあからさまに嫌な顔をする。

(住んでいた…?ティーチャー・クローネに連れられてたけど、誘拐?ではない、か。)


「今ふと、疑問に思ったんだけど、ノアはなんで、ティーチャー・クローネのアシスタントになる流れになったの?普通は10歳から入学して、17歳に卒業なんだけど、ノアはまだ、7歳でしょ?」


ノアの表情が曇り出す。


「ちょっと重い話ですが…。私、魔王の使いと思われる者に、家族を殺されたんです。」

「っ…!」


ノアは、ゆっくりと話し始めた。ミリアは真面目に、だが、深刻になりすぎていない雰囲気で話を聞いた。


「そっか。魔王に復讐をするために魔法を。そっかぁ。」


ミリアのあっさりした態度にノアは少し驚いた。人は家族の死に関する話は気まずくなる、と聞いていたからだ。


「気にしないんですね…」

「気にしてほしい?私が気にしたら、気まずくなるでしょ。私はノアと魔法を極めたいんだ。」


(復讐のことを言っても、肯定も否定もしない…。気まずくない。)

ノアは少し楽になった。


「ま、今はキャラバンを楽しも!ここは入口で人気な店が毎回陣取るから人が集まるけど、奥の方行っちゃえばある程度人は減るし、掘り出し物とか貴重な魔法書なんか山ほどあるんだから…!行かなきゃ損だよ!」

「貴重な魔法書!魔法動物もいたりしますか?」


先程までの暗い雰囲気がパッと明るくなる。


「もちろん!むしろ、魔法動物とかはもっと奥の方。出口になる道に魔法動物の店がいっぱいあるはず!行こ!」

「はい!」


ノアの脳は復讐から魔法へと書き換えられ、ミリアと一緒に勢いよく人混みに飛び込む。進めば進むほど、自分の向かっている方向があっているのかわからなくなる。人とぶつかり、足を踏まれ、潰されそうになる。なんとか人集りを抜けると、薬草の店や魔法具の店、日用品の店なんかもある。


「やっと抜けられたね…。これだけで疲れちゃう!ノアは大丈夫?人酔いしたりした?」

「だ、大丈夫です…。ちょっと足を踏まれたので痛いですけど。」

「大丈夫?試しにポーション買って試す?これ、新商品らしいよ!」


ミリアはもう店のポーションに目が行っている。ノアの心配をしているようで、心配はさほどしていない。ノアは歩き始め、つられてミリアも後を追う。


「大丈夫です。それより、私は魔法書が見たいんです!特に、魔法動物と魔法の関連が記載されている本!」

「それ面白そう!あ、だから魔法動物見たいのか!でも、具体的に何が知りたいの?」

「私、昔から魔法動物が無詠唱で魔法を放つのが不思議だったんです。なので、実際の魔法動物を調べれば、人類が無詠唱で魔法を放てるようになると思うんです!」

「確かに、魔法動物は無詠唱だったね。当たり前すぎて疑問にも思ったこと無かった。無詠唱で魔法が放てたらとても楽になる。」


ミリアの顔が一気に変わる。先程までのヘラッとした表情が真剣な表情になった。ミリアは魔法が本当に好きで、魔法に真剣に向きあっているなのだとわかる。


「はい。それは私も考えてました。魔法動物の中で、無詠唱で魔法を放つための条件などがあるのなら、人間に代用が出来るかもしれませんし、そうでなくとも、詠唱をする声の代わりになるヒントがあるかもしれないです。」

「そうだね。ノアはどう仮説を立ててる?」

「魔法動物でも、魔法を放つための条件があると思います。」

「条件?」

「はい。今までの経験から、魔法動物は魔法を放つ時少し唸っていました。きっと、それが条件です。魔法動物は詠唱というより、声の響きに魔法式を書いていると考えられます。つまり、空気中に魔法式を書くことが可能である。という仮説です。」

「確かに。空気中に魔法式を書けるんだったら、あとは短縮化すればいいだけ。」

「はい。そうなりますね。」


2人の話し合いが一段落した頃には、すっかり打ち解けていた。


「面白い!私も是非、その研究に参加させてもらおう!前例がないから、他にも優秀な魔法使いが揃うはず!そうと決まれば、キャラバンで必要な物とか見ないと!まずは、魔法書からね。」

「はい。行きましょう!」


すると、ミリアが歩いてきた道の方へ振り向く。


「戻るんですか?」

「え?だって、魔法書の店はさっき通り過ぎてたから、戻らないとだよ?」

「あ、そうだったんですね。てっきり迷子になったのかと思って焦りましたよ〜。」

「ノアは学院でも迷子だったね!私がいるから安心してね。」


それから2人は魔法書の店に着き、魔法と魔法動物に関する本を6冊買って店を出る。


「思った以上に品揃えいいですね!町のキャラバンは主に日用品を売っていたので、とても嬉しいです!」

「よかった〜。楽しんでくれてるみたいで!魔法具創造研究部の部屋にいたし、次は魔法具の店見てみる?結構珍しい物とか置いてたりするし!」


(魔法具の店…!さっきの指輪みたいなアクセサリー型の魔法具が売ってるかも!)

「見てみたいです!行きましょう!」


ノアはテンションマックスであるため、走り出す。ミリアもその後を追う。


「うわ、でっかいですね…」


魔法具の店はどの店よりも大きいテントだった。


「そうだね。ここに来るキャラバンの中では1番規模が大きいし、古株なんだよ〜。だから、品揃えが他に比べていいし、価格も良心的!行こ!」


2人は店に入る。店には沢山の魔法具。どれも生活用で、アクセサリー型はない。


「いらっしゃい!俺はここの職人だ。今、店主は酒を買いに行っちまっていないんだ。それで、お嬢ちゃん達は何を探してるんだ?って、ミリアか!」


出迎えてくれたのはドワーフだった。ミリアとは知り合いらしい。


「久しぶり!元気してた〜?私たちは、魔法具を見たくて来たんだよ!ね、ノア!」

「あ、はい。その…」

「どうした?」

「あの、アクセサリー型の魔法具ってあったりするんですか?それか、封印魔法が施されている魔法具とか…?」

「え、そんなの聞いたことないよ?教科書にも載ってなかったし…」


ノアは、そんな魔法具はないと以前にも言われたが、指輪には確かに封印魔法が書かれていたため、確かめたいのだ。

ドワーフはニヤリと笑みを浮かべる。


「その様子だと、お嬢ちゃんは見たことがあるか、持ってるんだろう?」

「!」


ノアが驚いた表情を浮かべるとドワーフが笑い出す。


「ガハハハ!図星か?持ってるんだな?」

「はい…」

(なんで…わかったの?)


「ほれ、見せてみろ。なあに、奪ったりはせん。」


ノアはためらいながら指輪を手渡す。ドワーフは指輪を受け取り、眼鏡をかけてジロジロと観察し出す。


「ノア、これどこで貰ったの?」

「あ、えっと…。住んでた町に来たキャラバンの人がくれたんですよー…」


ノアは魔法具創造研究部の部屋から持ってきたことは言わなかった。言ったら、そこに残った他の魔法具が処分される気がしたからだ。


「お嬢ちゃん、書かれた魔法式をパッと見てわかったのか?」

「…はい。そうですよ?」

「お嬢ちゃんはすげぇなぁ。そんで、こいつもすげぇぞ!アクセサリー型の魔法具で間違いない。こんな小さな物にこれだけの魔法を書き込んだんだ!ドワーフでもできるやつはそういない!」


ドワーフはとても興奮したようで指輪を拝みだした。


「あはは…。すごいね、ドワーフの魔法具への好奇心。ノア、あれは魔法具創造研究部の部屋で見つけたんだろう?」


ミリアはニヤリと不敵な笑みを浮かべて聞いてくる。


「げっ。なんでわかるんですか?バレたら、処分されるかもと思って必死だったのに…」

「このミリア様に隠し事は通用しないのだよ!わはは!しかも、わかっても処分はしないよ?私だって残った魔法具見てみたくて、授業をサボったんだ。今度一緒に見に行こうね!」


「…!はい!是非!」


ドワーフがある程度拝み終わり、手だけで手招きをする。


「やっと拝み終わった?」

「あぁ。こいつはとんでもねぇ。見れただけ、俺ぁ、幸せもんだ!それで、この店にはこいつみたいなアクセサリー型の魔法具はないなぁ。封印魔法の施しをしてある魔法具なんてのもない。あるとしたら、ドラゴンを封印してるっていう"最古の魔法具"だ。まあ、おとぎ話だがな。それで、他に何か欲しいもんとかあるか?」


そう言いながら指輪をノアに返す。


「いえ、それが聞けただけで十分です。ありがとうございます。」

「礼はこっちがするもんだぜ?あれはすげぇもんだからな。」

「あ!私、洗濯用の魔法具が欲しかったんだ!」

「ミリアは洗濯用をご所望か!今、いいもんがあるんだ!こっち来い!」


ドワーフとミリアは2人で奥に行き、ミリアはおすすめされた魔法具を買うことを即決した。


「ありがとね!またキャラバン来る時期決まったら、連絡ちょうだいね!」

「おうっ!ミリアもお嬢ちゃんも元気でな!」

「はいっ。ありがとうございました!」


そして、2人は魔法動物の店がある道へと歩きだした。


「あ、そうだ!魔法動物見てたらきっと夜になっちゃう。だから、一緒にキャラバンの店で晩ごはん食べよ!この期間は夜は祭り騒ぎだから、結構賑やかなんだよ。21時になると花火が上がってとても綺麗なんだよ!」

「いいですね!花火は偽物しか見たことがないので、楽しみです!」

「偽物の花火?何それ?」


ミリアは逆に偽物の花火を見たことがなかった。というか、初耳だった。


「偽物っていうのは、魔法実験に失敗した時の花火です。昔はよく失敗して、毎日のように見てたんですよ〜。」


ノアは魔法実験をしてクララに手加減しなさい、と怒られたのを思い出す。


「え?」

(それ、花火っていうより爆発なんじゃ…)


「あ、でも綺麗なんですよ!」


ノアが明るい笑顔で言う。現時点で1番の笑顔を見せるノアを、ミリアは愛らしく思った。


(こんな笑顔、できるのかぁ。かわいい!)

「そっかぁ。綺麗かぁ。なら良かった!私も見たい!」


「実験に失敗すれば、誰でも見れますよ!」

「あ、そうだったね!」


そうして、魔法動物の店に着く。中に入ると、羽の生えた猫"エンジェルキャット"や額に角がある馬"ユニコーン"、様々な動物と融合された動物"キメラ"などがいる。どの魔法動物も値段は金貨30枚からで、とても手が出しやすい値段ではない。


「この中で1番調べやすいのは"ウォーターバード"だけど、高すぎる…」

「あ、あそこの商品は何でしょう?」


ノアが指さしたのは店の隅にある卵だった。値段は金貨1枚とリーズナブルである。


「あぁ、これは地上のダンジョンでたまに出てくる、"ランダムエッグ"。何の卵かは生まれてからのお楽しみ。でも、孵化させるのは危険だからって食用で買う人がほとんど。」


ノアの目が輝き出した。

(ランダム?なら、もしかしたら私が欲しいと思ってるペガサスだったり!)


「ミリアさん、これ。これにしましょう!無詠唱の研究が出来れば、多少時間がかかってもなんでもいいです!2つ買いましょう!私たちそれぞれが1つずつです。」


ミリアは少し悩んだが、ペットなどを飼ったことがないため、好奇心で承諾した。


「どんな動物が生まれても、後悔しない?ちゃんとお世話できる?」

「もちろん、最後までお世話します。研究で使う動物としてではなく、家族として。」

(家族か…。この卵から生まれてくる魔法動物はノアの家族になる。でも、もしまた家族を失ったら…?)


ミリアはノアをチラリと見る。


「!」


ノアの目は真剣だった。


「わかった。私もしっかりお世話するから、2人で頑張ろ!じゃ、お会計しよっか!すみませーん!店員さあーん!」


奥から人が出てくる。


「はいはい。ん?これ、買うのかい?何が出ても、うちは責任とらないよ。」


店員は2人を睨む。


「あ、はい。大丈夫です。わかってて買いますので、お店に責任を取ってもらおうとは思ってません。安心してください。」


ノアは店員の威嚇に気づかなかった。会計を済ませて店を出る。外はすっかり夜になっていた。


「お腹空いたし、広場にある店美味しいらしいから、そこ行こ!すぐ近くだよ。」

「はい!行きましょう!」


2人は広場に向かって進んでいく。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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