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4話 魔法オタク「キャラバン行きたい!」

ルミスティアのお金が欲しいです。

ノアはお金より魔法です。

「ふぅ。終わりました…」


書類と格闘すること2時間、ノアはようやく全ての書類に記入を終えた。ヴァルロスは書類を渡すとすぐに目を通す。


「よし。大丈夫だ。もう昼になるが、キャラバンの出店で食べるのか?」

「その予定ですが、あの人が終わってないようなら食堂の方で食べようかと思います。」

「キャラバンはいいのか?ルカに仕事をするように急かしたのは私だが、案内人としてルカが適任だ。」

「大丈夫ですよ。ただ見たいだけだったので。」

「うーん。なら、ルカではなく、ミリアに案内させよう。ミリアは、この学院でもあまりいない、3属性を身につけた実力者。しかも、首席だ。キャラバンの案内は容易にできるだろう。魔法が好きすぎる部分があるし、話が合って、一緒にいても楽しいだろう。」


ノアは断ろうと思ったが、ミリアという生徒には興味があった。


「ミリアさんが良いと言ってくれるなら、お願いしようと思います。」

「私から話を通しておこう。楽しんでくるといい。」

「はい。ありがとうございます!」

(ルカがキャラバンの話を出した時、とても目が輝いていたからな。アシスタントが始まってしまうと、休暇もあまり取れないだろうからな。楽しんでほしいな。)


ノアは学院長室を出る。ヴァルロスは微笑ましく思うが、ふと思い出す。ノアには学院内を案内していないことを。

ノアは廊下をスキップしながら進む。喜びで飛び出して行ったのはいいが、もちろん道はわからない。

絶賛迷子である。

(あ〜、ここはどこだろう?ま、いっか。学院ツアーだと思えば。それにしても楽しみだ!キャラバンには珍しい薬草や魔法具が多くあるはず!何より魔法動物!詠唱もしないのに、どうやって魔法を放つのか?)


そんなことを考えている間に、学院最南端の部屋に着く。魔法具創造研究部と書いてある。南の方に進むにつれてドアが古くなっていたが、最南端であるため、特に古びている。ノアがドアノブを捻ると、開いた。鍵がかかっていないようだった。

「警備、ガバガバすぎませんか?何も知らない人なら間違えて入っちゃいますよねー。」


ノアはわざとらしく言うと素早く部屋に入った。

(何か研究途中の魔法具が残ってるかも!もう使ってない部屋だし、持ち帰れそうなら持って帰ろう!)


部屋は案の定、埃っぽくてカーテンがされたままであるため、薄暗い。辺りを見回すと使われていない魔法具が乱雑に置かれている。よくある魔法具は生活用だが、ここにはアクセサリーのような物があった。

(指輪…。誰かの物かな?でも、封印魔法が書き込まれてる。)


ノアが指輪を手に取る。


ドクンッ

(脈打った…?)


不思議に思い、じっくり指輪を観察していると、扉が開く音がする。ノアは焦って指輪をポケットに押し込み、棚の裏に隠れる。様子を伺うと学院生の服を着ている。

(もしかして、この部屋はまだ使われていたのかも…。怒られるかもしれないけど隠れてるより謝った方が、まだマシだろう。)


ノアは覚悟を決めて勢いよく飛び出す。


「もう使ってないと思ったんです!ごめんなさい!」

「うわっ!」


ガタンッドテッ

(え?)


ノアが頭を上げると、入ってきた学院生はミリアだった。ミリアは、ノアに驚いて転けてしまった。


「あ、すみません。大丈夫ですか?ってミリアさんだ。」

「びっくりしたぁ。私以外にもここを隠れ家にしてる人がいるなんて。って、ティーチャー・クローネが連れてた子だ。どうして、こんなとこに居るの?てか、名前教えたっけ?」

「あ、いや、ちょっとあの後話が聞こえたので…」

「なんだ〜。で?なんでここに居るの?あ、迷子か?仕方ないなぁ。先輩が直々にティーチャー・クローネのいる所まで案内しよう!大体の場所はわかってるからさ。あ、私はミリア・アルディ。12歳で3学年。よろしくね!」


怒っていると思ったら、ミリアは意外と優しかった。


「わ、私はノア・フェレア。7歳で、ル…、ティーチャー・クローネのアシスタントになります。よろしくお願いします。案内、助かります。できれば学院長室でお願いします。きっと学院長、ミリアさんのこと探してます。」

「じゃあ、私先輩だね〜。でも、アシスタントの方が偉いのか?わからん…。てか、呼ばれてたの?なんでだろう?私、何かしたかな?ま、話は歩きながら聞こうか。」

「はい。」


2人は廊下に出て、歩き出す。


「それで、なんでヴァルロス院長は私を探しているのかな?」

「それは、キャラバンの案内を頼みたいからです。」

「キャラバンの案内?誰の案内なの?」

「あ、私です。キャラバン、初めて見たので行ってみたいんです。本当ならティーチャー・クローネ?に連れて行ってもらう予定だったのですが、書類と格闘してて行けないんです。そしたら、ミリアさんに案内をしてもらおう、と院長先生が言うので。」

「ティーチャー・クローネは書類溜める癖あるから、いっつも苦情が来るの。まぁ、私でよければ案内、引き受けるよ。」

「本当ですか?お時間とか大丈夫なんですか?」

「うん!必要な単位取ってるから困らないし。今回のキャラバンは忙しくて行けてなかったから丁度いいよ!院長に報告したらすぐに出発しよう!」

「いいんですか!ありがとうございます!」

「いえいえ〜。あ、もう学院長室着くよ。」


コンコンッ


「失礼します。院長、迷子の子猫を拾ったんです!ノアっていいます!」

「猫?ノアか!やっぱりか。ありがとう、ミリア。すまないな。すっかり学院の案内を忘れてて。だが、ちょうど良かった。ミリア、出来ればノアにキャラバンの案内をして欲しいんだ。」


ヴァルロスは頭を搔く。


「はい!ノアから直々に案内依頼を受けましたから。」

「そうなのか?ノア。」

「はい。偶然にもまほ…廊下で会ったんです。今日ミリアさんを見かけたので。」


ノアは魔法具創造研究部の部屋で会ったと言いかけたが、入ってはいけない部屋だったかもしれないので、廊下で会ったことにした。

(まほ…?ノアはなんて言おうとしたのだろうか。魔法具創造研究部?いや、最南端までは行ってないだろう。あそこには、昔いた天才と呼ばれる生徒が生み出したという、魔法動物を封印できる魔法具もある。たしか、フェンリルが封印されていたか?まあ、指輪型だから、見てもアクセサリーと勘違いしてるだろう。)


「そうだったのか。魔法具創造研究部の部屋にでも行かれたら困ったが、そうでは無さそうで安心だ。では改めて。ミリア、ノアにキャラバンを案内してくれるね?」


ギクリッ

ノアは魔法具創造研究部の部屋について怒られると思い、身構える。


「はい!私も今回のキャラバンはまだ行けてなかったので、ちょうどいいので。」

「うん。では、ミリア、ノア。2人とも楽しんでくるんだぞ。ノアはまだこの国での通貨を持っていないだろう?お小遣いだと思ってこれを使ってくれ。ルカの給料から差し引いてるだけだから、安心しなさい。」


ヴァルロスはそう言いながら、金貨の入った、果物のオレンジ程の大きさの袋を手渡した。


「え、こんなにいいんですか?」

「気にするな。100枚程だろう。」

(金貨100枚?多すぎるっ!)


困っていたところをミリアが割って入る。


「院長。それはやり過ぎです!これほど持っていたら、ノアが狙われます!危ないので、私が預かりましょう!」

「ミリアは部屋に戻って金を持ってくるのが面倒なだけだろう?はぁ。わかった。それは、ふ・た・りで使うといい。ミリアは特別だぞ?」

「やったー!院長大好き!」

「こ、これってどれくらいの価値なんですか?」


ノアはあまりお金に興味がないため、こんな多くの金貨を持ったことがない。しかも、新しい通貨で価値がわからない。もし、国家予算レベルの額が入っていたら、買い物どころではない。


「そうだったね!まず、通貨の種類は3種類!銅貨、銀貨、金貨。地上で使われる世界共通通貨の価値は銅貨1枚が100円。銀貨1枚で1000円。金貨1枚が10000円の価値がある。」

「はい。」

「でも、ルミスティアの通貨価値は銅貨が世界共通通貨の銀貨1枚、銀貨が金貨1枚、金貨が金貨10枚分。銅貨から順に1000円、10000円、100000円。つまり、地上の10倍の価値がそれぞれの通貨にあるってこと。」

「え、地上では金貨1枚で普通の大きさの家が買えますよ?!院長、この量の金貨はさすがに使えません…。」

「えー、勿体ない!使える!大丈夫だから。キャラバンには珍しい物も多くて値段が高い物もいっぱいあるんだよ?貰って損はないって!」

「そうだぞ、ノア。子どもは遠慮するな。欲しいものが高価だったらどうするんだ?」

「で、でも…」


ノアがとても困っているのを見て、ミリアが助け舟を出す。


「わかった!3分の1、置いていこう!それならまだマシになるよ!院長があげすぎるから、困っちゃうんだよ?ノアも!好意は受け取るのも礼儀なんだからね!」

「すみません…。3分の2くらいなら、まだなんとか…。」

「だがなぁ、この学院にいるのは12歳以上。皆がしっかりしていて、可愛げがない…」

「院長?今、ちゃっかり私たちのこと可愛くないって言いましたね!」

「そ、そういう意味では無い!ただ、少し反抗期な子が多い、という印象があるだけだ。」


ガチャッ

入ってきたのは教員の1人だった。


「院長、会議の時間です。」

「そうだったな。すぐ行く。ミリア、ノアを頼んだぞ。2人とも楽しんできなさい。」


そう言い残して、ヴァルロスは会議室に向かった。


「結局、院長はただの寂しんぼなんだね。」

「そうですね。見るからに寂しそうでしたね。こんなに広い部屋にポツンと1人ですからね。」

「そっか!なら、定期的に私たちが会いに来てあげようか。院長の研究してた魔法についての話、すごく面白いんだよ!」

「研究してたんですか?是非聞きたいです!」

「それはまた今度聞きに来るとして、キャラバン行こ!もう少しで午後の部が始まるし!」

「午後の部ってなんですか?」

「キャラバン期間は学院生が沢山買うから、商品を昼に入荷するの。その入荷時間が休憩みたいなものだから、午前と午後の部で分けられてる。」

「なるほど!今まで、キャラバンは半日ぐらいしか町にいなかったので、そういう区切りがあるのは知りませんでした。」

「地上はそれが普通だよ。ここは学院都市で、キャラバン自体が長期間滞在する。だから、こういう時は思いっきり楽しんだ方が、勉強も捗るんだ!」

「確かに!楽しみです!早く行きましょ!」

「レッツゴー!キャラバンッ!」

「オーッ!」


2人は廊下に出て、学院都市の入口に向かって歩き始めた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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