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3話 ルミスティア魔法学院

今回は、ノアが少し暴走します。

さすが、魔王予備軍ですね。

「うわぁ…」


翌日、ルカはノアを連れて魔法学院に赴いた。ルカは今日、授業や実験があるわけではないが学院長にノアを合格させる必要があった。試験を受けるノアは学院の建物が気になって仕方がない。


「どうだい?これからここで僕のアシスタントをしながら魔法を学び、極め、創造していく。そのためにもまずは、学院長に認めてもらわないとね。あ、学院内では許可された場所でしか魔法は使えないからね。廊下とかは使えないから、練習室にまず案内するけど。って、聞いてる?」


ノアは建物の壁を見つめ、目を輝かせている。


「見てください、これ。防御魔法が建物全体にかけられているにも関わらず、壁を作る土からも防御魔法が滲み出ています!」

「そうだねー、すごいねー。そんなことより、入ろうか?」


ノアはハッとしてルカのもとに近寄る。


「すみません…」


ルカはそんなノアを見て安心する。

(人見知りだったし不安だったけど、魔法の話が出来れば誰でも打ち解けられそうだなぁ。)


2人は建物に1歩踏み出す。地面に足が着いたと思った途端、地面が消えた。


「わっ!え?ぎゃぁぁぁ!」


ノアが驚いてルカを見るが、ルカは当たり前のことだという風に平然と落下している。


「な、なんで平然としていられるんですか!落ちてるんですよ?わかってますか?ここは魔法使って大丈夫な場所なんですか?浮遊魔法使っていいですか!」

「ん?あぁ、大丈夫だよ。ここはいつもこんな感じなの。」

「へ?いつもこんな感じなんですか?」

「うん。そのうち着くから気楽にしてなよ。」


ノアは落ち着いたルカを見て、困惑しながらも指示に従うことにした。正座をしてみたり、ルカと同じく足を組んだり。

(もし着いて落下死したら呪ってやる…!)


ノアの内に、ルカに対する負の感情が少しだけ芽生えた。1キロメートル程落下して、地面に着いた。着く少し前から風魔法で速度が落ちていたためスムーズに着地をしたが、ノアは内心ルカを本気で呪おうと考えていた。


「着いたね!ここが、魔法国最大級の国立魔法学院、ルミスティア魔法学院!」


着地したのは学院の玄関にあたる大広間。ルカが後ろに振り向き、扉を勢いよく開ける。そこには地下のはずなのに太陽の光が照っていた。地中だと感じさせないほど広い。学院は高台にあるようで、見渡すと学院を中心に大きな1つの街になっている。


「どう?感想は?」

「凄いです!ここは地中なんですよね?空間魔法でこんなに広くできるものなんですか?私、こんな大きな街見たことありません!」


ずっと山の中でクララとロアンとノアの3人でいたため、ここまで大きな街を見るのも、道を埋め尽くすほどの人も初めてだった。目を輝かせて街を見下ろす。


「すごいだろう?一応、ここは街というよりは学院都市だね。ここは見ての通り広い!だから、見えないけどもっと遠くには海があるし他にも街があるよ。今はキャラバンの時期が被ってるから賑わってるけど、普段ならここは学院生や学院関係者や貴族なんかが住んでる。」

「海もあるんですか?見てみたいです!」

「そう?じゃあまずは試験で合格を勝ち取らないとね。」


練習室で練習を終え、試験会場に行く。途中で男女3人組の学院生に会う。


「おはようございます!ティーチャー・クローネ。」

「おはよう!ちょうど良かったサイフー君、放課後に研究室に顔を出してよ。初級から中級に丁度いい魔法書を4、5冊持ってきて。あ、あと課題提出まだだったよね?きっと素晴らしい出来なんだろーなー!楽しみにしてるよ〜」

「は、はい…。ティーチャー・クローネ。」


そういうサイフーの顔は暗かった。歩き続ける中、後ろから声が聞こえてきたため、顔を向ける。


「やばい、忘れてた。あれ、絶対罰ゲームで研究に付き合わされるやつだ…」

「だから言ったろ?早く終わらせて提出しろって。まあ、珍しくご機嫌だったしなぁ。何かあったのかな?なぁ、ミリア?」

「…。あ、ごめん!なぁに?」

「だからさ〜」


"ミリア"と呼ばれる生徒と目が合って、ノアは急いで目を逸らす。

(ミリアって男の子、あの中で1番魔力を帯びてた…)


そんなことを考えながら試験会場に着く。中に入ると学院長というより、国の大臣のような中年の男が立っていた。


「ようこそ。ルミスティア魔法学院へ。私がこの学院の院長"ヴァルロス・アーセナル"だ。よろしく。」

「よろしくお願いします。」


優しい声で挨拶をし、ノアと握手をする。


「昨日急にルカから連絡が来た時に聞いていたが、本当に子供だな。大丈夫なんだろうな?ルカ。」

「大丈夫だ!この目で見たところ、魔王の使い2人くらいなら簡単に倒せていたし。見ていてわかるだろ?この魔力量で7歳だ。技術も知識もあるから、アシスタントでももったいねぇくらいだ。」

「なるほど。確かに魔力量は多いが…。お前の研究には危険が伴う。学びたいならアシスタントではなく、学院に入学した方がいいんじゃないか?」

「わかってないなぁ。ヴァル。試験も受けてないのにノアの実力をわかったように言っちゃダメだよ〜」


ヴァルロスがギクリとなる。思い当たる節があるようだ。


「ま、まあルカが言うなら、試験次第で7歳という特例のアシスタントを認めよう。ノア、魔法の創造というのは危険が伴うんだよ?それをわかっててアシスタントになるための試験を受けるんだね?」


ヴァルロスはノアのことを心配していた。ヴァルロスから見てもノアは熟練魔法使い並の魔力量を纏っていた。才能の塊なら尚更、学院でしっかり学んだ方がノアのためになるとヴァルロスは考えていたのだ。


「確かに、1から学ぶのも楽しいかもしれません。ですが、私は今ある知識を再度学ぶよりも応用がしたいのです!私を誇りに思ってくれていたクララやロアンのためにも…」

「もしかして、世界初の魔法使いのみのパーティ、"パボマージ"の主力2人か?」

「パボマージ?何ですか、それ。」


ノアとヴァルロスは目を合わせて、2人して頭を傾ける。


「あ、ノアはクララたちから聞いてなかったんだね!2人は元々冒険者。だけど、恋に落ちてそのまま結婚!2人で生活していくためにパーティを脱退。僕の教え子でもあるんだよ?」

「え、冒険者だったんですか?私には冒険者にだけは死んでもなるなってうるさかったのに…」


ヴァルロスはクララとロアンを知っていた。会ったことは無かったが、クララとロアンがパーティ単位でなく、1人1人が世界中に名を知られている冒険者だったからだ。


「クララさんたちから教わっていたのなら、期待大だな。」

「ヴァル?ノアは僕の教え子にもなったんだよ?僕が師であることには何も触れないわけぇ?」

「だって、ルカがノアの師になったのは昨日のことでしょう?何も教えてないに決まっている。しかも、貴方は教え子にした子たちをアシスタントとして使い古してしまう困った癖があるだろう?」

「うっ…」


ルカは思い当たる節があるようだ。


「え、私はそんな人の教え子になったんですか?」

「そうだ。あの人は生活力が皆無と言ってもいい。だから、やって貰ってたんだ。というか、今でもお手伝いさんに頼んで週1で全部やって貰ってるから、相当だぞ。覚悟した方がいい…!」


ヴァルロスがノアに熱弁する。


「あ、あれはだな、えっと…。鍛練!鍛練の1つだったんだよ!」

「貴方の家の家事を全てやることがか?」

「あはは…。あっ、そんなことより、ノアの試験だろ?早くやろうか!ははっ!」

((あ、話逸らした))

ノアとヴァルロスは思った。


「はぁ。それじゃあノア、試験を始める。魔力量、知識分野、技術分野の3観点だ。まず、魔力量。その大きな水晶に両手をついてくれ。」


透明な水晶は小さめの馬車程の大きさで床から1.5メートル浮いている。

手をつくと水晶が光り出す。結果は8.5と記され、水晶は6色に光っている。


「うわぁ、綺麗…」


ノアは水晶の輝きが美しく思えた。ヴァルロスとルカを見るとヴァルロスは驚き、ルカはわかっていたかのような顔をしている。


「すごい…まさか、全ての属性を身につけているとは。魔力量も熟練魔法使い並…」

「な?言っただろ?ノアはアシスタントとしてしっかりやっていけるくらいの実力が…」

「いや、まだ2観点残っている!ノア、次は知識分野だ。軽いテストを行うから席に着いてくれ。」

「は、はい…」

「どうした?落ち込んでるのか?あれで?」

「お、落ち込んでません!次頑張りますから!」


ノアは水晶の数字を見て落ち込んでいた。クララから聞いていたのは、水晶の最大値は20だったからだ。

(8.5って、アシスタントなれるのかな?)


知識分野のテストは思ったより簡単で、ヴァルロスとルカは口を揃えて

「「そうだよな。」」

と言った。


「最後、技術分野だな。この円の上に立って、自分の得意な魔法を己の魔力が尽きるほどの威力で放ってくれ。」

(最大出力の魔法を放たれたら、いくら防御魔法を100層にしているこの建物でも壊れるかもしれん…請求はルカにいくようにしなければ。)


ノアは円の上に立つ。だが、なかなか魔法を使わない。痺れを切らしたルカが言う。


「どうした?ここに来て、アシスタント嫌とか言わないでくれよ?ヴァルから怒られるだけじゃすまないんだ!」

「…らない。」

「へ?」

「わからない。得意な魔法、私、わからないんです。」

「は?」


ヴァルロスとルカは2人で顔を見合わす。


「そ、そんなことあるのか?全属性を身につけてるとはいえ、これ好きだなとかあるだろ?」

「うーん?」

「ルカ、練習したんですよね?」

「もちろん!」


そう言ったはいいが、思い返すと練習はせず、2人で魔法について語り合っていただけだった。


「はぁ。もういい。ノア、君は火と光が得意だ。どっちでもいい。やってみてくれ。」

「あ、はい。"ファイアストームッ"!」


ノアは火魔法を使った。ロアンが得意としていたのは火魔法だった。その影響でノアも火魔法をよく使うようになった。ノアが唱えるとすぐに火が舞い上がる。最初は小さな火がクルクル回るが瞬きする事に大きくなる。やがて天井まで火が届く。部屋にある軽い物が飛び回り、吸い込まれて行く。名の通り火の嵐が起き、少しずつ建物の壁に目掛けて進む。


バキッ、ボアッ


「もういい!十分わかったから!」


ルカは止めるが、ヴァルロスは固まっている。ノアは自分の最大出力ではないためやめない。何より、本気で魔法を使ったことがないからこそ、好奇心が勝ってしまった。


「ヴァル?試験結果を伝えろ!このままだとこの部屋だけでなく、ここの空間までも燃えてしまう!あーもうっ!"クリア"っ!」


ノアは驚いた。ルカの魔法によってファイアストームが消えた。俗に言う魔法無効の魔法。使えるものは世界に5人いるかいないか。それを目の前で見れたノアは魔法無効の魔法で頭がいっぱいになった。


「い、今のどうやったんですか?すごい…、すごいです!」

「その前に言うことは?あそこ、見てご覧?」


ルカは怖い笑みを浮かべている。ノアはルカが指さす方を見ると壁が1面燃えて無くなっていた。


「あ…。ご、ごめんなさい!」

「そう。それ。僕も失敗で何度かやっちゃったけど、まずは謝る!いいね?あと、ヴァル!」


ヴァルロスがハッとする。


「す、すまない。想像の何倍も凄かった。アシスタントなんて惜しいくらいだ。基準は満たしたが、学院生として入学しないか?君なら7学年位でもやっていけそうだ。」

「それはありがたいご提案ですが、お断りします。」

「そうだぞ、ヴァル。お目付け役がずっと側で監視できるわけじゃないんだから。じゃ、晴れて合格だし、キャラバン見に行こっか!」

「キャラバンに行くのか?」


ヴァルロスがルカに問う。


「そうだけど、どうかしたのか?ノアが初めてのキャラバン、どうしても見たいって言うんだよ!魔法動物とかも見たいらしい。キャラバンの時期はあと2日くらいだろう?」

「行くのはいいが、まだ手続きがあるだろう?しかも、お前はまだ今日の仕事が残っているはずだが?」

「あ、やべ…」


ルカはヴァルロスから目を逸らす。


「え、この人、まだ何かあるんですか?」

「そうだ。ルカはこの学院だけの制度、魔法使いギルドのギルドマスターだからな。ギルドマスターとしての仕事があるはずだ。」

「放課後やるから!今は授業してる時でしょ?話を聞きたい時に聞けないのは仕事に支障が出る。だから、先にキャラバン行く。」


ルカは仕事よりキャラバンを優先した。


「はぁ。何度同じことをすれば貴方は学んでくれるんだ。そう言ってあと周りにして、結局ミリアがやってたりするじゃないか。ノアの手続きの間だけでも自分の仕事をするんだ。」

「ちぇっ!猫かぶり野郎…」

「何か言ったか?ルカ?」

「なんも言ってないぞ?あはは…」

「それなら良かった。じゃ、手続きが終わったらルカのデスクに行くので、ある程度やってくださいね。」


ヴァルロスは笑顔こそ、会った時と変わらなかったが、雰囲気がとても怖かった。

ヴァルロスに案内され、ノアは学院長室に来た。ヴァルロスが手招きをする。近くに行くとカードが置かれていた。


「これに自分の魔力を込めてくれ。あ、魔力がきれそうならポーションもあるからな。」

「だ、大丈夫です。」


魔力を込めるとカードには名前ノア・フェレア、ランクC、魔法使いギルド所属、という文字が浮き出た。


「見せてくれ。」


カードを見て、ヴァルロスは驚いた。


「ら、ランクC?初めてでCとは、すごいな。」


ノアには凄さがわからなかった。ギルドに所属することも初めての経験だからだ。


「あぁ、ノアはどこかに所属していたわけではないからわからないか。では、説明するぞ。」


そう言って、ヴァルロスは大きな紙を広げる。


「まず、魔法使いギルドの説明だ。先程も言ったように、学院だけの制度で、文字通り魔法使いのみが所属している。創設したのはルカ・クローネだ。」

「え、あの人が?」

「そうだ。不思議だよな?そして、ギルドは主にダンジョン攻略研修や学院都市からの依頼、実践自主学習での戦利品の買い取りなどをしている。今までは学院卒業後はギルドからも卒業となっていたが、多くの魔法使いからの声によって来年からは卒業生も引き続き所属できるようになった。だが、学院から出て他国に行くと魔法使いギルドは力を持たないから、気をつけるんだ。その対処はまた今度、説明しよう。大体わかったかな?」

「はい!大丈夫です!」

(ダンジョン攻略研修!やってみたい!とても行きたい!)


「次はアシスタントとしての手続き。アシスタントは主にルカの側にずっといることになるだろう。研究も手伝うし、授業の時はルカがする手本の魔法を受けることになるだろう。そこで、怪我などがあった時用の書類、ルカのアシスタントをやる契約書などを書いてもらう。」


説明しながらヴァルロスは書類を広げる。


「うわぁ…。多いですね…。」

「それは、ノアの安全を考慮してのことだ。文句は受け付けないぞ。」

「はい…。」


こうして、ノアは無事にアシスタント試験合格をし、大量の書類とともに学院ライフが始まった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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