11話 ノアvsセリス
〜建国祭2日目〜
「では、ルールの確認です。
1 気絶、またはギブを宣言した場合、負けとなる
2 使えるのは、上級魔法まで
3 ノアは自分の全力を出す
4 セリス様が負けた場合、古い文献をノアにあげる
この4つになります。いいですね?」
ノア、セリス「はい!」
説明を終えたミリアは、大練習場の観戦室に行く。
「では、両者、正々堂々戦ってください。始め!」
「"ウォーターボム"!」 「"アイシング"」
合図とともに、ノアが水と火を融合させて水蒸気爆発を起こした。だが、セリスは爆発が届く前に"爆発そのもの"を凍らせた。
ノア(一筋縄ではいかないか…)
ノアはセリスに、刺すような視線を送る。セリスは楽しそうな笑顔を作る。
「"サンドボム"」 「"アースウォール"、"レイン"」
「!」
続いて、セリスが土と火の融合で粉塵爆発を起こす。ノアは土の壁で爆風を防ぎ、雨を降らせて威力を落とした。
セリス(2つ同時か。7歳なのかね…?)
その後も、ノアとセリスは一進一退の攻防を繰り広げた。セリスの魔力は、残り半分。
(やばいな。魔法を2つ使って、隙を作って斬り込むしかないか…)
セリスは卑怯だが、剣で片をつけることにした。
「"ライトスラッシュ"、"ウォーターショット"」
(ルカは、"火・水・風・土・光・木属性は完璧"って言ってた。ノアには悪いけど…)
光属性魔法は、闇属性魔法でしか防げない。
セリスは唱えると同時に、一気に攻め込む。鋭い光がノアへ向かっていく。飛散させた水で、光が乱反射して、ノアの視界が悪くなる。
セリスはノアから背後を取った。ノアはまだ眩しそうにしている。セリスは口角が自然と上がる。
5m…4m…
(勝った…!)
「"ブラックホール"…"アイスソード"」
ボォンッ!シュッ!シュッ!
ノアは闇属性でブラックホールを出し、セリスの魔法2つを吸い込む。同時に、ノアの手元に氷の剣が出現する。後ろを振り向き、すぐ後ろまで迫っていたセリスの首元で、剣をピタリと止める。
「はぁはぁはぁ…。くっ…!」
「終わりです。」
エースたち「!」
観戦室にいたエースたちは、全員で立ち上がった。ノアとセリスの元へ行く。
「まいりました…。」
セリスはノアに負けを認めた。
「2人とも、怪我は?」
「私はないですが、セリスさんは首元に少し傷が…。すみません!」
セリスの首元は、少し凍っていた。
「大丈夫だよ〜。でも、ほんとにすごいね!全て中級魔法とはいえ、上級並の威力だからビビったよ〜。」
セリスは嬉しそうに言いながら、立ち上がる。
「あ〜、楽しかった!久しぶりに手こずったよ!はい。これ、文献ね。」
一同「ありがとうございます!」
ノアたちは、受け取った文献をすぐに広げた。
【ドラゴンの生態と可能性について】
・言葉を発することができ、人間とのコミュニケーションが可能である。…
・己の体の大きさを自在に変化させることが可能である。…
・負の感情を感じ取ることができ、人の考えがわかる種も存在する。…
〜略〜
一同「ドラゴンが話す?!」
「そうだ!真偽は定かではないが、オムケルと話してみるといい!役に立ったかい?」
「はい!とても興味深い内容です!可能性があるだけでも、参考になります!本当にありがとうございます!」
エースたち「ありがとうございます!」
ノアたちは礼を言う。
「早速、オムケルに会いに行こっか!」
「えっ、今ですか?」
「もちろん!今だ!」
セリスは大練習場を飛び出し、研究室に向かう。
「待ってください!」
ノアたちは追いかけるが、遅かった。
バンッ!
「オムケル〜!昨日ぶりだね!」
「間に合いませんでしたわね…」
ギュァァァァ!
セリスに向かってオムケルが叫ぶ。なぜか、今日は朝から機嫌が悪い。
「機嫌悪いね。」
「はい。すみません…」
「まあ、何か聞いたりしてごらんよ。」
セリスに言われるが、ノアたちは何を言えばいいのかわからない。
「あ!オムケル、おやつ食うか?」
きゅるきゅる?
ルシルの問いかけに、反応を示す。
「なら!欲しいなら、"はい"って言ってくださいまし!」
きゅるる?
「あぁ。ダメっぽいな。オムケル!は・い、だよ!」
きゃき?
ゼファティスとカインの問いかけで、少しずつ発音が整っていく。
「オムケル、は!」
きゃ…。は!
「い!」
き…。キィーイ!
ノアが声をかけ続ける。
「そうです!は!い!」
は!ひ!…はい!
ついに、発音が整った。
一同「やった!オムケル、もう1回!」
はい!
オムケルは笑顔で"はい"と、しっかりと発音した。
「よく出来ましたね、オムケル!」
きょ…。おやつ!
"はい"だけでなく、他の単語も話した。ノアたちは、歓喜のあまり、泣き出した。
その後も、オムケルと話す練習や大きさを変える練習をした。
「さあ、オムケル!中ぐらいの大きさになってください!」
うん!
しゅしゅしゅん。と徐々に小さくなって、1m程の大きさになった。
「できてますよ!次、小さくです!」
頑張る!う〜ん…
先程よりは時間がかかったが、30cm程の大きさになって、ノアの腕に収まる。
「よく出来ました!」
「やったね!」
エースたち(2人ともがわ゛い゛い゛…!)
みんなはオムケルにたくさん、おやつをあげる。
「この大きさはかわいいなぁ!」
この大きさ"は"?
セリスが可愛がると、オムケルは聞き返す。セリスは少し焦ったようにおやつをたくさんあげる。
「あ〜、そうだ!明日の戦闘大会は、オムケルも連れて行ったらどうだい?」
「オムケルもですか?そんなこと、いいんですか?」
「うん!動物と一緒に見ることも出来るよ!地上で開催だから、逃げられないようにしてくれればいいよ〜。」
その言葉を聞いて、ノアたちは顔を見合わせた。オムケルを床に立たせ、真剣に聞く。
「オムケルは、私達が戦うの見たいですか?」
…見たい!
「いい子にできるかな?」
うん!
「ずっと、この大きさのままですのよ?」
大丈夫!
ノア、エルヴィ、ゼファティスの質問にしっかりと答え、オムケルも戦闘大会を観戦することになった。
「セリスさん、文献を見せてくださって、ありがとうございます!」
「いいんだよ〜。オムケルも話せるようになって良かったじゃないか〜!ね〜!ディバイン。」
セリスは、ノアたちがオムケルに夢中になっている最中、ディバインと遊んでくれていた。
ブルルゥ、ヒヒン
ディバインは少し怒ったように鳴いた。
ヒューッ、パァン
「あ、花火か。じゃ、今日はお開きにしないかい?明日に備えてね!」
「そうですね。また、私の部屋に泊まりますか?」
「ぜひ、そうさせてもらおうかな!」
ノアたちはそれぞれ、自分の部屋に戻っていく。
「また明日!おやすみなさい!」
「ノアに勝てる気しないよ!おやすみ!」
「絶対勝つわ!覚悟しておきなさいよ!」
ミリアとレオンハートが、言い残して部屋へ向かった。
「では、行きましょうか!」
「うん。オムケルも一緒に寝られればいいのにね〜。」
「それはディバインが可哀想です。できませんよ。」
「そっか〜。」
話しながら歩いていると、大練習場まで来た。見ると、ルカとヴァルロスがいた。
「これできんのって、ノアくらいだよなー。なぁ、ヴァル?」
「あぁ。きっとな。だが、セリスもいるから、わからん。あの2人には、戦わないでもらいたいものだ…。」
「あの2人が戦ったら、こんなんじゃすまないだろうな…。」
2人の会話を盗み聞きした、ノアとセリスは顔を見合わせ、隠れながらノアの部屋に向かった。
「あれ、ルカたちに知らせるの忘れてたね…」
「はい…。でも、修正魔法で直しますよ。大丈夫です!」
「ま、そうだね。今日はもう寝よう。おやすみ。」
「はい。おやすみなさい。」
〜建国祭3日目〜
5000人の学院生のうち、戦闘大会に出場したのは500人。8つのリーグに分かれて、リーグ内1位が決勝戦に出られる。
夜になって、郷土料理専門店でノアたちは、ルカとヴァルロス、セリスと食事をしていた。
「まさか、ノアとレオンハート以外の現首席が、決勝戦に進出とは…。すごいね!」
セリスの言葉を聞いて、レオンハートがいじけた。
「ノアはチート!手加減されてたのに、全然勝てない!」
「私は、手加減してませんよ?」
「ノアの中では、私のレベルに合った全力を出してるんでしょ!前も聞いた…。」
レオンハートはムスッとして、ご飯を食べだした。
「まぁ、落ち着けよ。ノアだって、少し焦ってたぞ?"ウォーターボム"だっけ?」
「あれは、ノアのを真似たの!真似しか出来ないんじゃ、勝てないわよぉ…」
「レオンは強いぞ〜!もう、大練習場に穴を開けるのはやめてくれよぉ?」
ルカはレオンハートをなぐさめる。
「明日は少し大変ですね。きっと、どの人と当たっても、躊躇してしまいます。」
エースたち(躊躇しても、戦うんだー)
「結局、魔法放つんでしょ?容赦なかったもんね〜。」
エースたちの心の声が、セリスによって代弁される。
「一応、大会ですからね。できる最大限のことをしないとです。手を抜くのは、その人の為にならないですし!」
近くでレオンハートをなぐさめているルカは、懐かしく思う。
(クララも、似たこと言ってたなぁ)
「明日はオムケルも見に来ますのよ?絶対に勝ちますわ!」
ゼファティスの一言に、ヴァルロスが驚く。
「ど、ドラゴンのオムケルが、来るだって?」
「はい!小さくなれるし、会話だってできるいい子なんですよ!」
「会話…?」
ミリアの言葉で、ヴァルロスは混乱した。昨日のことを説明したら、ヴァルロスも、オムケルの観戦を認めてくれた。
花火が上がり、21時になったことで、お開きとなった。いつも通り、ルカは酔っ払ってヴァルロスに絡んでいる。
〜建国祭4日目〜
昨晩、ノアはセリスに戦闘大会前に会うことを約束した。オムケルを抱きかかえてミリアと共にセリスのいる部屋に行った。
コンコンッ
「失礼します。ノアです。」
「あぁ。ちょっと待ってね〜。」
しばらくして、複数の足音とともに、ドアが開いた。ドアを開けたのは、セリスではなかった。
「セリスさん?」
「し、失礼したね…。」
ぎゃぅぅぅ!
オムケルが、唸る。
「あ、ごめんなさい。オムケル、だめですよ!めっ!」
ごめんなさい…でも…!
「別に気にしてないさ。セリス、またあとで。」
謎の人物は、足早に去っていった。
「ごめんね、ノア。こっちが誘ったのに…」
「大丈夫です。さっきの方は?」
「まぁまぁ。座って。」
ノアとミリアは、中央のソファに座った。同時にセリスがお茶を持ってくる。
「彼は、15年前に大魔王を討伐した大勇者の息子で、剣聖の"ヴァン・レイディア"。」
「大勇者の息子…。オムケルが威嚇するように唸っていたんですが、なぜでしょう?」
「私は、あまり彼を好んでいないからね…。ちょっと負の感情が混じってたかな?」
「それを感じて、敵だと勘違いしたんですね。なんで、好んでないんですか?」
セリスは、少し渋ってから話し出す。
「…剣を使った模擬戦を彼とした時、魔法で隙を作って勝ったんだ。それで、彼から邪道だと言われてしまってね。」
「それは…、勇者様は悪くないです!剣聖なら、魔法使われたくらいで負けないで欲しいですね!」
ミリアが、セリス以上に怒っている。
「まあ、誘ったのは、ただ、ノアの欠点を教えたくてね。負けたとはいえ、先輩としてちゃんと観察してたんだから!聞きたいかい?」
「ぜひ!」
セリスの話によると、ノアは目眩しをされると、反応が遅れてしまうらしい。
「今日の戦い、ノアの圧勝だと思うけど、この欠点をカバーして頑張ってね!ミリアも頑張って!ノアとだけは当たんないように!」
「そうですね…。ノアには勝てません!戦いたくないです!」
ミリアが戦いたくないと聞いて、ノアはムスッとする。
「戦いたくないなんて、酷いです!私はミリアさんと戦いたいのに…!」
「ごめんって〜。でもね、確実に負ける戦いだよ?やりたいとは思えないよぉ。」
ミリアはノアの頭をポンポンしながら答えた。
「ま、2人とも頑張ってね!みんなを応援してる!終わったら、昨日みたいにみんなで打ち上げしよ!」
2人「はい!頑張ってきますね!」
セリスに見送られて、2人は会場へ向かう。
開始30分前。会場の観戦席にはレオンハートがおり、オムケルを預ける。
「いい子にしててくださいね。」
うん!
「私が見てるから、大丈夫よ!…2人とも、頑張って来なさいよ…//」
レオンハートは照れながらも、2人にエールを送った。
あと25分で、決勝戦が始まる。
最後まで読んでいただきありがとうございます
12話は3月17日に出す予定です




