いきさつ
※王子視点
* * *
昔昔、大昔勇者と呼ばれる者たちが魔王を倒したらしい。
それまでの世界は魔王の配下と戦争をしており穏やかな生活等望めなかった。
けれど魔王を倒してそれで世界が平和になった訳ではなかった。
魔王は死の間際呪いをばらまいた。
呪いを抑えることのできるものはこの世界には誰もいなかった。
被害が広がって未曾有の災害になってしまった頃、神託があったという。
別の世界から聖女を呼べばそのものに呪いを祓う力を与えるという。
人々は信託の通り別の世界から少女を召喚することに成功した。
その少女は災害であった呪いを抑えた。
少女は「呪いは祓うものだ」と教えてくれた。
けれど、少女の寿命が尽きるとき、それでもまだ呪いは残っていた。
そして少女を召喚しては呪いを抑えてきた。
それがこの世界の歴史だ。
けれど、神託によるというところがあり、呪いを祓う聖女の功績は神殿のものとされてしまった。
このままでは神殿に世界が乗っ取られてしまう。
各国の貴族たちは様々な方法を取った。
聖女と婚姻を結んだ王子がいた。
これはいい方法だった。
弱いけれど血脈に呪いを祓う能力のあるものが生まれる様になった。
それに呪いは少しずつ力を弱め、効力のある場所も限られてきていた。
人々はそこに立ち寄らなければ平和に暮らせるようになった。
聖女召喚には多額の資金と、聖女を呼ぶために多数の魔術師の能力が失われてしまう。
次々と好きなだけ呼べるような代物ではなかった。
けれど呪いは不定期に突然増大することがある。
聖女がいないという状況もリスクが高い。
御しやすい馬鹿な女ならばと、多数の王族や貴族の者は思ったようだ。
快楽に弱い者、贅沢が好きな者。
そういう人間は扱いやすい。
それに、神殿の権威が上がりにくいのもいい。
けれど、今回呼び出された少女はそういうタイプにはどう考えても見えなかった。
だから、馬鹿のままでいてもらうために態と勉強がはかどらないようにした。
自分が下の立場だと分からせるために貴族の学園に入れ立場を分からせるようにした。
神殿には買収した手の者を入れ邪魔をされないようにした。
そして、神殿の地位もろとも陥れるために、罪を着せ罪人として扱った。
けれど、そのまま処刑してしまうのは恐ろしかった。
神託の少女を殺した場合どうなるかということは文献を調べても、他の王族に聞いても見つからなかった。
神罰というものが実在するのかは分からない。
けれど、自国で試してみる気持ちにはどうしてもなれなかった。
罪人にはした。
けれどその先どうしたらいいのかが分からなかった。
臣下の一人が「知のエリーシャに判断させるのはいかがでしょうか?」と言った。
この国にいる学者の家系の者だ。
社交をほとんどせず、学園にも通わず、貴族でありながらその一生のほとんどを独自の学問についやすという。
適任だと思った。
けれど、エリーシャがよこしたのは一人の少女だけだった。
聞くと彼女が次期当主なのだという。
父親である国王陛下が聖女の罪をどう清算すべきかと問うた。
エリーシャはすぐに答えた。
「それは罪の重さを調べねば分からぬこと」
「それでは、罪の重さとやらを計ってみよ」
「調査が必要ですのでお時間をいただきたく」
その時は知のなんて言われる割に時間稼ぎしかできないのかとがっかりした。
けれど、そのがっかっかりは日増しに大きくなった。
彼女のしたことと言えばあちこち歩き回り、聖女が暮らしていた部屋を見て、なぜか庭を掘り起こし、そして学園のカリキュラムとテストの内容を確認することだった。
申し訳程度に高位貴族に聖女がどういい寄って来たかを聞いた位で後はよくわからない事ばかりしていた。
けれど、それでもこれで責任は押し付けられた。
知といっても大したことは無いとわかっただけでよかったとしよう。
俺は取り巻き達や婚約者とそう言って笑い合った。




