日本
「まあ、あなたから高位なる殿方たちに近づいていないことは調査をしてわかっていました」
その中であった違和感が、彼女が本当にあの学園で勉強をしていたかだった。
朱里の居住に残された勉強の跡、すべてが噂や断罪の場で言われていたことと異なっている様に見えた。
だから徹底的に調べた。
そもそも朱里から誰かと仲よくしようという行動が全く見られなかった。
知らぬ世界に来て朱里はずっと孤独だったのではないか。
しかもありもしない罪をかぶせられた。
怠惰は罪だろうか。
その人間の身の丈に合わないことをしないことは怠惰だろうか。
エリーシャの令嬢は自分にまるでにあっていないドレスを見た。
それから朱里を見た。
彼女に会うまでに既に彼女は噂をされている様な悪女ではないと調べがついていた。
別に令嬢が一人で調べたものではない。
様々な視点からエリーシャの一族の者達が調べた結果彼女は恐らく潔白だろう。
彼女はそれほど人と関わってこなかった。
仲間がいなかった。
だからこそ断罪された。
そう思って朱里と会った。
けれどそこにいたのは予想もしない少女だった。
「けれど、一つだけ謎がありますの」
「なにが?
私が男を頼らなかった理由?
それとも貴族になじもうとしなかった訳?
悪い噂を放置していた事?」
嘲笑う様に朱里は言った。
「いえ、あなたは何故ここで生きているかということです」
エリーシャの令嬢の言葉に朱里は目を細めた。
「私が死んでればよかったと?」
「いえ、そうではなく。
私たちの調査によれば断罪後のあなたの環境はとても劣悪だった筈です。
食事も碌に運ばれず、あの環境」
それに、とエリーシャの令嬢は言った。
「聖女の力はこの世界に点在する呪いを祓う力。
魔王が討伐した際に残された、魔王がばらまいた呪いから民を守り、その呪いの力を少しずつ浄化すること。
自分を癒したり、豊穣の力がある訳ではありません」
「それで?」
「その力はこの世界に呼ばれる時に得るものとされています。
本当にあなたが得たのはその力なんですか?」
「呪いを祓うのは王族の前でやって見せたわ」
「では、あなたは最初からその力を持っていた。
この世界に呼ばれた際に得た力は別のものだったということでしょうか」
エリーシャの令嬢はニコリと笑みを浮かべた。
「私の言っていた異世界の日本と、あなたの元居た世界って本当に同じなの?
あら、謎は一つではなくなってしまいましたね」
そう言って令嬢はクスクスと笑った。
その後「何? あなたはどこまで調べてきたの?」と朱里は答えた。
「少なくとも過去の聖女様の事例から、名を名乗らない方がいいということは理解しました。
あなたにも名乗らない方がよろしいのでしょうか?」
面白そうに朱里は笑った。
「名を扱う魔女の様な力はないわよ。
でも、過去にそういう聖女もいたのね。
いい情報をありがとうさすがに知のエリーシャね」
それを聞いてエリーシャの令嬢は言った。
「私のことはルシアとそうお呼びください」
「わかったわ、ルシア。
で、私をどうやってここから攫ってくれるの?」
朱里は聞いた。




