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無職のおっさん、幼女にTSして後日談  作者: 芥部


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後日談4 日に三度の悩み


 俺は悩んでいた。


「毎日の飯って考えるのだりぃー!」


 三人とも毎日うまそうに食ってくれるし、似たようなメニューを出しても文句一つ言わないんだが、なんかこう、仕事としてやってるからメニュー被りが気になるんだよな……。


 毎日うまいものを食わせてやりたいが、外食は塩分と脂質が気になる。

 かといって俺の知ってる範囲だとレシピが限られる。

 栄養が偏らず取れて、バラエティーがあり、三人ともに美味しく食べてもらえるもの……


 ここ半月手を尽くしたものの、万策尽きた感パない。 

 それに、そもそも俺は料理がすごく得意というわけでもない。

 苦手というほどでもないが。ごく一般の成人男性の料理力よりちょっとマシという程度だ。


 ハウスキーパーを頼むというのも考えたが、この家はテオネリアの技術がそこかしこに使われているし、家の中では牛頭くんなどの式神やインテが自由に歩き回っている。

 謎の牛のゆるキャラや、喋るカバンを見られるのは問題があるだろうな……。


「知らない人が家に来るのはちょっと……」


 一応駄目元で三人に聞いてみた所、おタヒとグリセルダは全然問題なさそうだったのだが、平岡さんが困った顔をしている。

 じゃあ駄目だな。平岡さん地味に人見知りなのか、かわいいな。

 おタヒとグリセルダは、常に他人に囲まれる生活をしてたからその辺わりと図太い。


 おっさんに相談した所、うってつけの人材がいるということで、紹介してもらえることになった。

 俺達が知っている人間らしいが、心当たりがない。


「やあ、みんな久しぶり。元気だったかな」


 翌日やってきたのはおっさんだった。も、もしや……。


「おっさんが料理を作るとか!?」

「ふむ、そうだとして何の料理だと思う?」

「カブトムシ……?」


 こわごわ口にすると、おっさんは爆笑した。


「はははは、違うよ。その人を呼ぶための装置を今設置するから待っていてくれ」


 おっさんは、一番奥のヴェレルの元同人誌部屋にカバンから取り出した機材を設置していく。あ、簡易ポータルだ。こうやって設置するんだなあ。

 この同人誌部屋、同人誌が証拠物件として押収されて広いけど置くものなかったからちょうどいいな。

 十分程でポータル設置は完了し、ポータルから、三人が飛び出してきた。


「チケンさんお久しぶりマウ~!」

「チケン様、おタヒ様、グリセルダ様、お久しぶりですわ!」

「お料理ができると聞いてやってきましたわ!」


 やってきたのはクリームちゃんと……誰だ!? 声に聞き覚えがあった。えーっと……。


「クリームちゃんお久しぶり! その声はもしかして、ミネルヴァさんとエミーリアさん!?」


 たしか、ヴィルステッド村の村長婦人(王妃様)と侯爵令嬢だ。


「うふふ、正解です! スフォー様が私たちに体を作ってくださって、人間に戻りましたのよ!」

「それで、チケン様達が料理でお困りと聞きまして!」

「私たちが手伝いに来たマウ! マウも結構料理は得意マウよ!」


 その様子を見た三人は喜んだ。


「まあクリーム、そしてエミーリアとミネルヴァ、久しいわね。元気にしていた?」

「おお、クリーム嬢にクラヴァット嬢、ヴィルステッド夫人ではないか」

「お久しぶりです、御三方ともお元気そうで何よりです!」


 なるほど、たしかにこれなら平岡さんが人見知りでも全然問題ないな。

 しかも腕は折り紙付きだ。


「キッチンを拝見しても?」


 ということで、キッチンへ案内する。元ヴェレル邸だけあって、クソ高そうな設備が揃っている。アイランドキッチンにオーブンやビルトイン食洗機、五口あるIHっぽいけど、実はIHではないクッキングヒーター等だ。

 冷蔵庫と冷凍庫もでかいやつがあり、冷凍庫は二個あるので、一つはアイス専用になっている。


「いいキッチンマウ~!」

「それにしてもこちらのチケン様は三人おられるんですのね!」

「ええまあ……」

「色々ありまして」


 俺達は苦笑いしたが、三人があまり気にしてないようなので幸いだった。

 そういえばおっさんもエト姫もあそこに二人いたし、吉田さんとかも複数いたもんな。気にしないか。

 俺達は三人が料理をするのをとりあえず見学させてもらうことになった。おタヒとグリセルダは作る過程には興味がないらしく出来るまでリビングで待っているという。

 平岡さんは資料になるかもと言って見学するらしい。

 これがメテクエや他のゲームの礎になるならいくらでも見学してください。



 念の為インテに録画してもらいつつ、料理教室が始まった。


 三人はまず、材料を手際よく揃え切りそろえ、調味料を準備していく。


「この準備が面倒ですけれども、一番大切ですのよ」

「調理しながら準備すると、火が通り過ぎたり、後の工程がズレたりしてダメマウね」


 なるほど。参考になるなあ……。


 肉に調味料を振って臭みを抜いたり、水分を抜いて旨味を凝縮したりする。

 その様子を俺達は質問したりメモを取りながら見ている。


 少し大きめにカットした肉に手際よく焼きめを入れ、ワインで煮込んだり、煮込んでいる間にメインに添えるサラダやスープなんかを調理していく。

 その合間合間で使った皿を片っ端から片付け、調理が終わる頃には、今使っている鍋やフライパン以外の全てが食洗機に収まっていた。


 流石三人とも調理経験が豊富なだけあり、手際が良かった。学ぶべき場所が多い……。


 キッチンの中にものすごくいい匂いが漂いはじめる。嗅いでるだけで腹が減るな、これは。


「この煮込みは、他の肉でも多少味付けを変えれば美味しくいただけますのよ」

「これ、仕上げにクリームかけると美味しいマウ! 大人は黒胡椒かけてもいいマウね」

「とりあえず、これは作ってから一日置くと美味しいので、食べるのは明日にしていただくとして……」


 とエミーリアさんがいうと、場外からブーイングの声が上がる。


「そんな! すごく出来るのを楽しみにしていたのよ!?」

「そうだぞ、私はその肉を一体何のワインに合わせて食べようかと……」


 手伝わないのに図々しい奴らだな……。


「うふふ、そうおっしゃると思いまして……スフォー様!」

「はいはい、じゃあここに出せばいいかい?」

「ええ!」


 おっさんは、カバンから大きな寸胴鍋を取り出してテーブルの上においた。


「昨日作って出来上がったものがこちらになりますわ!」


 うーん、まるで料理番組のような美しい流れ……!


「さあ、出来上がりましたわよ。皆様召し上がれ!」


 出てきたのはレプティリアン肉のシチューだったが、多分何も知らない人に食べさせればビーフシチューだと思うだろう。

 グリセルダはシチューとともに赤ワインを楽しみ、おタヒは白飯といっしょに、俺はジンジャーエールで、おっさんは水で。各自それぞれにシチューを楽しんだ。

 もちろん添えられたらサラダやスープも上手いし、デザートに出てきたジェラートも絶品だった。


「あー、俺が作った飯の百倍くらい美味い!」

「そうかしら、三割増くらいではない? チケンの料理結構好きよ」

「うむ、これも美味いがチケンの料理も悪くないぞ?」

「人の作った飯がうまいんだよ」


 そう言うとエミーリアさん達は笑顔になる。


「喜んでもらって嬉しいですわ!」

「デザートのおかわりもございますのよ!」

「アイスキャンディーとケバブも持ってきたマウ!」

「それと明後日食べていただければと、うちで採れた野菜のポタージュも持ってきて……スフォー様、お出ししてくださいます?」


 エミーリアさんに言われておっさんのカバンから出てくる出てくる大量の飯と菓子。


「えっ、こんなにいいんですか!?」


 俺は作らなくて済むので嬉しいが、いいのだろうか……。これはどう見ても四、五日分の量がある。


「ほら、みんな生きているから食べられるでしょう? と思うと作りすぎてしまうのですよね……」

「それでお父様たちにこんなに食べきれないと怒られてしまって……」

「マウは普通に楽しいから作ってきたマウ!」


 割とフリーダムな理由だったが、作り過ぎという理由なら貰わない理由もない。


「チケン様、ところでお洋服はいかが?」

「そういうのはおタヒとグリセルダに是非……」

「あ、マウもマウも! 服作らせて欲しいマウー!」


 ヴィルステッド村の皆様もマウ族のみなさんも服欲もすごいらしかった。


「あ、俺以外のみんなにお願いします」

「チケンも着なさいよ!」

「俺は地味な服が好きなんだよ……」

「レースとフリルは素敵ですのよ?」

「刺繍はいかが?」

「あ! 表面積の少ないおしゃれな水着はどうマウ!?」


 クリームちゃんの発言に、俺達は全員丁寧にお断りをせざるを得なかった。流石にアレは無理だ。


「おっさん、エト姫に水着は?」


 そういうと、おっさんは初めて眉間にシワを寄せてすごい顔をした。

 いつも穏やかなおっさんがそんな顔をしているのは初めて見た。


「大変すみませんでした、冗談です……」

「うん、わかってくれればいいよ……。王宮でアレをエトワールが国王に着て見せてね……それはそれはもうね……」


 おっさんは今まで見た中で一番つらそうな顔をしていた。

 ヴェレルの時だってあんな酷い顔はしていなかった気がする。

 エト姫が元気そうなのは良かったが、社長もおっさんも、みんな苦労してるんだろうな……。


「エト姫が自由なのはわかったよ、ほんとごめんな……」

「苦労しているのだな、スフォーよ……」

「……何をどうするとあんな自由な姫になるのかしら」

「王子と同じ育て方をしているんだけどねえ……」

「ジュスト……頑張ってね……」

「うん……ありがとうセヴィー……」


 おっさんは果てしなく遠い目をしていた。よっぽど辛かったんだろうな。

 それから時々、おっさんはエミーリアさんやクリームちゃんを連れて飯を配達しに着てくれた。

 これがいい息抜きになっていればいいのだが。



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