番外編3 ヴェレルの余罪
この161話の序盤の没パートです、よかったら読んでみてください!
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「それはそれとして、茅原氏、少し意見が欲しいんだがちょっといいかな?」
エト姫がごくごく真面目な顔で俺に向き合う。俺はおタヒとグリセルダに挟まれて明日の準備をしていたが、別に話を聞く時間くらいはありそうだったので頷いた。
グリセルダが入れてくれたお茶を飲みながら、荷物の整理や雑談をしていただけだからだ。
「ほら、マウ族の人達が作っていた服あっただろう? 私好みのやつ」
「うしろでスフォーのおっさんが見てるぞ」
「ヒッ!」
後には微笑むスフォーのおっさん。無敵の人エト姫の唯一の天敵である。
「え、えーと、ほら、あのちょっと布地の少なくて派手なやつ……」
「あったな」
「それのデザインの元になったデザインブックが数冊出てきたんだけど、これ、地球の本じゃないか?」
スッとエト姫が薄くてでかい本を数冊出してきた。どれどれ、全部日本語の本だな……。
『魔法少女□辱シリーズ ファッション設定集』
『貞操逆転世界のナイトプール SNSイラスト集』
『美少女達にエロ水着を着せる本』
俺は思いっきりむせた。
「……うわあああああ! なにしとるんじゃこのボンクラ姫!」
俺は無言かつ超高速で三冊を奪い取った。有名イラストレーターのエロイラスト同人誌だったからだ。おタヒがいるんだからやめてほしい。教育に悪い。
「急に何をするんだ茅原氏!」
「男性成人向けの薄い本を未成年やうら若い女性の前に並べるんじゃねえこのボケェ!」
なんだかいたたまれない気持ちになる。俺はともかく、未成年とうら若い女性にこんなもん見せるんじゃねえ!
「私だってうら若い女性だが?!」
「チケン、私は一応既婚者だったこともある、気にしなくても良い」
「気にしないわよ春画の類でしょう? 男はそういうのが好きだものね」
意外に二人共ず太い態度で助かったが、それでも羞恥心がなくなったわけじゃない。俺は耳まで真っ赤になっている実感がある……。
エト姫がうら若いと自分で言うのは図々しいにもほどがある気がするが、とりあえず聞かれたことには答えるか……。
「まあ日本の本だよ……。描いてるのはプロイラストレーターだけど、個人が趣味で出したんだ」
「……じゃあこの本の作者とヴェレルはつながっていない?」
「無いと思うぞ、同人誌即売会とか同人誌専門書店で買える本だし、三冊とも作者違うし」
「そうか……しかし、マウ族の長老に聴取したところ、このデザインはあの神子がデザインしたからじゃんじゃん作れと言ってたらしい」
マウ族の人にあれ見せたんだ……というやりきれない気持ちのあとに、脳に大量の『?』が浮かび上がってくる。これをヴェレルが描いた?
「へ? ありえない。この人は超人気イラストレーターで、ヴェレルなんか関係ないはず。カハールカさんも多分知ってるよ」
「これは有名な絵描きさんでゲームとかソシャゲの仕事でスケジュールきつくて有名なんですよね」
「僕も知ってる。うちでもゲストキャラの依頼したんだけど、スケジュールつまりすぎてて3年後ならって言われて諦めた……」
カハールカさんとファビエ社長も知ってたレベルの超有名イラストレーターだ。
たまに、ネットで聞くよな。中学生とかがイラストレーターの絵を『自分が描いた!』ってなりすますやつ。
それの超邪悪なやつなやつなのか……。ヴェレル、どんどん株が下がっていってくな、もう底をついたと思っていたのに更に下がっていく。底なしの株価だ。
恐ろしいことに、このエロいが神絵師の絵がヴェレルのものとして流通する可能性があった。地球の絵とかいってもほとんどの人に伝わらないだろうしな。
困った顔をしてスフォーのおっさんが言う。
「今外部とやり取りしたんだけど、どうも夜の社交界でその服が大流行してるらしくてねえ……。刺激的な服を作った天才デザイナーサラという触れ込みで成人向けの店で高級品として流通してるらしくて……」
「……ちなみに、おいくらで売ってるんですか、あの紐」
「二万ルードから十万ルードかな、ファビエに聞いたレートが正しければ日本円で六十万円から三百万円くらい」
「……あの紐が?!」
ぼろ儲けじゃねーか。俺の持ってる服のどんな服よりも高い。あの紐が……。
「茅原氏、ちなみに日本とやらに行けばその刺激的な服をいつでも買えるのかい?」
「イラストの中にしか存在しねえよ! 日本をどんな国だと思ってるんだ!」
「そうなのか、残念だな……」
エト姫は本当に残念そうな顔をしている。ファビエ社長がドン引きした顔をし、スフォーのおっさんが渋い顔でエト姫を見た。たぶんエト姫は後でお説教を食らうと思う。王太子並みに精度の高い予言だと言ってもいいだろう。
「チケンもそういう服が好きなの?」
「俺は普通の服が好きだ。毎日こんな紐だったら夏の水着の有難みがないだろ!」
「あー、解かるっすね……冬着の季節を経て夏にやっと見られるから水着に有り難みが……」
カハールカさんはさすが水着エトワールを企画しただけある。道理というものを理解しておられる。素晴らしい、さすがテオデジに舞い降りた大天使だ……。
俺はカハールカさんと社長に手を合わせ拝んだ。
それを見てみんなが不気味そうな顔をしている。何故だ。メテクエは俺にとって宗教なのに……。
「でもなあ、そうやって自分の絵だって人の絵を見せて自慢したりするのって地球でもあるんだよ。でもさあ、やるのはほとんど中学生……十四、五歳の子供なんだよ。高校生とか大人とかもたまにいるけど、ちょっと調べたらすぐ嘘だってバレるから普通はやらないんだ。ヴェレルって一体何歳なんだ?」
俺の問いに、スフォーのおっさんが困惑した顔をして答えた。
「……実はあいつ、同期で同い年なんだけどね……六百五十歳だよ」
「ええ……六百五十歳が厨二病を……?」
「エトワールといいヴェレルといい、この国大丈夫? 傾いていないかしら」
おタヒのツッコミにスフォーのおっさんは苦笑いしていた。
「しかし、その痛々しい悪事も他の悪事に比べればマシなのがな」
たしかにそうなんだよな……。ただのバ美肉絵師なりすましおじさんだったら、まだ良かったんだがなあ……。
161話の序盤。
長くなりすぎるので削除した部分です。実際はこういう会話をしていました。
ヴェレルの株価、この頃はこれが底値だと思っていました
全然そんな事なかったぜ
この頃は「200話までに終わりたいなー♡」とかいってました
お前200話超えてもまだ話全然終わってないぞ、とこの頃の自分に言ってやりたいです




