番外編2 140.5話 素敵な休日(昼~夜)
※前提
本編140話と141話の間のチケンとグリセルダ、おタヒののんびりとした日常回です
140話
https://ncode.syosetu.com/n5319kw/140
141話
https://ncode.syosetu.com/n5319kw/141
ビーチバレーで力尽きた俺は気がつくと俺はすっかり昼寝をしていた。グリセルダの膝の上で。
なんという役得!
そして、俺の手を握りつつ牛頭くんを枕におタヒが気持ちよさそうに昼寝をしていた。
「ごめん、いつの間にか寝てた……」
「構わぬ。海を眺めていた。良いものだな、海というのは」
「ローレンツェンにはないんだっけ」
「無いな、大きな川や湖はあるのだが、また違う風情がある」
グリセルダの横にはお茶の入ったコップが置かれていたのでマウ族の人たちが気を利かせて持ってきてくれたのだろう。色々大変だろうに、気のいい人たちだ。
「これからどうしますか、グリセルダお嬢様?」
「ふむ、軽く昼食にでもするか」
そう言った瞬間、おタヒが飛び起きた。
「食べるー!」
「お前元気だなあ……二人とも何か食べたいものあるのか?」
「うーむ、軽いもので良い」
「塩気のあるものが食べたいわ」
なんとも難しいオーダーが来たもんだな……。塩気のあるものって範囲が広すぎる。
一旦セーフエリアに戻って着替え、インテにおすすめの材料を出してもらうことにした。
「チケン様、お素麺などはいかがですか? 夏のお昼にはちょうどよいかと!」
「いいな! すごくいい! さすが俺の天才カバンだよ。それだけじゃ栄養が偏るから何か添えるものがあるといいんだが」
俺は夏の間節約のためと味が好きなので、社会人なりたての夏に素麺ばっかり食べてたら体調を悪くしたことがある。
素麺には何か他の栄養素も必要なのだ。完全栄養素麺とかどっか出さないかな。
「ヴィルステッド村でもらった野菜とペッパードラゴンの肉を戻した物がありますので、卵もございますし軽く茹でてサラダ風などはいかがでしょう。めんつゆは吉田さんと清野さんが買っておいてくださいましたので」
素麺をサラダ風にするのか。思いつかなかったけど冷やし中華っぽくて豪華で美味そうだ。
「なんかもう、インテパッドとか名乗っても許されるんじゃないか? あまりにも、あまりにも俺のカバンが有能すぎる……!」
「ふふ、あちらの私が日々情報を蓄積しておりますからね!」
お湯を沸かしたり、野菜を切ったりして準備していると、エト姫が声をかけてきた。
「茅原氏、私の分も頼むよ。五人前くらいね」
「はいはい一人前承りました」
「そんな! 私は人の五倍働いてるんだぞ!」
エト姫の無茶振りは放置しつつ、卵は薄焼き卵ではなくゆで卵で妥協し、レタス系の野菜の緑とトマトの赤、ゆで卵の黄色が目に鮮やかなサラダ風素麺を作った。
薄焼き卵は案の定破れたので、証拠隠滅として俺が一人で食った。アレは難しいわ……。
めんつゆは少し濃い目に。動いたあとだからな……。
「麺類か、久しく食べてなかったな……なかなか美味いではないか」
お、一番心配だったグリセルダが喜んでくれてる。良かった。
パスタみたいな食い方をしてるが、俺はマナー講師じゃない。食ってくれれば何でも良いよ。
「わあ、随分と細いうどんね! 細い分麺につゆが絡んでいいわね!」
「うーん、よくわからんけどしょっぱくて美味いな! 茅原氏、これあと三杯つくって!」
「だからエト姫は食い過ぎだって!」
そもそもエト姫にはお代わりが要らないように多めに作ったのだ。
というか、エト姫の分は三束茹でたのになんで足りねえんだよ。おかしいだろ。
午後もインテとエト姫は忙しいらしく、邪魔だから出て行けと追い出されてしまった。
「さて、午後は何をする?」
「こんなにきれいな海があるなら船遊びがしたいわ!」
「私も船に乗ってみたい」
意見は揃ったので、長老のところに行くと小舟を貸してもらえることになった。
もちろん、漕ぎ手は俺……と思っていたが、グリセルダがやりたいといい出したので替わってもらうことにした。
「ふむ、なかなか力がいるが面白いな!」
グリセルダのパワーでスイスイと進む小舟。海底が見えて、まるで浮いていると勘違いするほど透明な海に、小魚が泳いでいるのがたくさん見える。
「すごい! この魚菓子とか食べるかしら?」
おタヒが懐に入れていたお菓子を砕いて撒くと、色鮮やかな魚が寄ってきてそれをついばむ。それを見るおタヒとグリセルダは楽しそうにしていて本当に良かった。
それを見ている俺が一番得をしているという自覚はある。
ふと、何かが海底にあるのが見えエリア鑑定を発動してみる。
『真珠貝/大粒の真珠が入っている貝。食用可』
『夜光貝/螺鈿細工の材料にもなる。食用可』
おお、良さそうなものがあるじゃないか。実はいま着ている服、普通の服っぽいが水着なのである。
やっぱプールや海には飛び込みたくなるんだよな。隙あらば泳ごうと思ってたので昨日俺も勝手に注文していたのだ。
俺の水着はスク水とかではない普通の女児水着である。ヒラヒラも付いてるしリボンも付いているし、何より色をお任せにしたらおしゃれなピンクになってしまったが……。
恥ずかしくないといえば嘘になるが、そもそも女装している三十歳男性が恥ずかしいので何を今更感はある。
「えっ、チケン服のまま泳ぐの?!」
「泳ぐための服だよ、これ」
「泳げるのか?!」
「俺のいた国はみんな学校で習うんだよ、水泳。ちょっと待ってろ」
そう言い残して俺は袋を持って海中にダイブした。毒のある魚やタコなんかもいなかったので、大きな真珠貝や夜光貝をいくつか採取して、泳いで船に戻る。
そんなに長く息が続くわけでもないので。
水もそんなに冷たくないし、大きな水たまりに潜るのはやはり気持ちいい。
「うそ、すごい! 本当に泳げるのね!」
「うーむ、特技なのではないか?」
学校でやらされたからできるってだけのことが、場所が変わると褒められるのは不思議な気分だな……。喜んでいいのかどうかわからん。
「それよりも陸に戻ろう、貝とってきたぞ!」
「貝って干して食べるの? よく乾物の貝は食べたわ」
「うーん、俺は刺し身が好きだけど、グリセルダもいるし火を通そうとは思う」
「じゃあ夕食はそれで頼もう」
「へいへい」
そしてインテの指導の元、ナイフで貝を開けるとたしかに真珠が出てきた。真珠は二つあったので、二人に一個ずつ渡す。
「真珠って実物は初めて見たわ、絹を球にしたような美しい石なのね……! あとこの貝の裏、すてき、キラキラしてる!」
「大粒の真珠ではないか、このように採れるものなのだな……興味深い」
俺は加工も何もできないけど、村の人に頼めばやってくれそうな気もする。ペンダントとか指輪とか。まあ、もらった金貨や香木には足りない気もするが、そこは一般社会人の限界ということで……。
おタヒは特に貝の方を喜んでいた。おタヒがいつも持っている文箱の表面には美しい螺鈿細工がある。ずっとそれと貝殻を見比べていた。
「螺鈿って元はこうなのね、帰ったらこの貝で細工を作らせてみたいわ」
おタヒは螺鈿が好きなのだろう、とても喜んでいて潜って取りに行った甲斐があったな。
結局、貝殻も二人で半分こしたようだ。
ちなみに貝の肉の方はインテパッドの指導の元、夕食のボンゴレビアンコに生まれ変わった。これはエト姫も美味しそうに食べており、お代わりを要求された。食べ過ぎなんだよこの姫は。パスタはエト姫の分だけで茹でる前の量で300g分くらい入れたんだが……。
二人は食事の後もしばらく嬉しそうに真珠を眺めていて、水着を着て備えた甲斐があったなーと俺はしみじみ思った。
こういう毎日がずっと続くといいんだけど、明日はもう光の柱の復活日で、その上謎の祭りがある。オカルト漫画の世界に突入するのか……。
俺はため息を付いて、明日の準備をすることにした。
ちょっと書きたいところを書いたけど、あとからまるっと消したところです(リサイクル)
こういうの増やしたい気持ちと、これ毎回やってると永遠に話進まねえなの気持ちがあります
書いてて楽しいんですが……




