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こんなことがありました。  作者: 金子よしふみ
第二章 新しい生活
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アパートに帰る

 アパート近くのショッピングセンターで夕食用の弁当を買った。頭をよぎったのはカナ姉の顔だった。男子高校生たる者、とんかつ弁当などで上々なのだが、カナ姉にしてみれば、きっと不満だろうな。栄養の面で。サラダを、野菜ジュースを、リンゴ一個を籠に入れた。これだけ揃えれば文句を言われることはあるまい。翌朝用のパンも買って帰宅。

 俺の部屋は、壁に好きなタレントのポスターが貼ってあるわけでもなく、モダンな、あるいはシックな家具が並ぶわけでもなく、カラフルでも、凝っているわけでもなく、至ってノーマルな、簡素な一室にしてあった。最低限の家電と家具が、ただ置いてあるだけの部屋にしてあった。ここを見た叔父さんがまたしても曰く、小ぢんまりし過ぎ、もっと若者らしく、男子的な色を醸し出してもいいのにとのことだった。とは言われても使うのは俺だしな。これでいいのさ。

 帰宅してしばらくは、机に向かって教科書やらノートやらを開いた。これでも学生である。職分は心得ている。地元でよくサボっていたヤツのセリフではないことは重々承知している。でも、時としてあるだろ。特に転校なんてして来てみれば。少しだけ「らしい」ことでもしてみようかなって思うことが。あくまで素振りだからな。実際、高々小一時間でそれらを伏せってしまったからさ。

 夕食を終え、面倒に思わないうちに、もとい忘れないうちにカナ姉へメールを送信した。食べる前に、テーブルに並べた御膳一行を撮っておいて、添付しておいた。律儀だろ。いや、これもそうかな、面倒にならないようにさ。

「本当に食べたの?」

 などという返信が来ないようにするための。これで万全かと思いきや、しばらく経って鳴ったカナ姉からの返信には

「お味噌汁は? 日本人はお味噌汁が身体に一番良いそうよ」

 さすが健康志向嬢なコメントが書いてあった。しかし、これは俺の手抜かりと言うんだろうか。そこまでツッコまれるとは。まあ、いい。明日からは味噌汁も買うことにしよう、なんてことで頭を掻きながら、携帯電話をテーブルの上に置いた。


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