コーヒーショップで
「今日は何か参考になった?」
「ま、空中に飛んでいる感覚は、ってとこかな」
「そう」
駅近くのビルのコーヒーショップに入っていた。バスが着いたとはいえ、まだ日が高かったので、俺からカナ姉を誘ったわけだった。
「しかし、この学校は変わってるよな」
「そうね。大変だったわね。三年間」
その年月を言われて、俺は妙に心がざわついた。
「カナ姉は進学?」
「うん、こっちに出てきてるから、こっちの国立大学に行こうかなと」
「学部は」
「教育学部」
「キョウイク?」
「何、その意外そうな反応」
「いや、予想外というか、案の定というか」
「だからその反応が失礼じゃない? 別にいいけど。教員免許取って田舎に帰ろうと思ってね」
「向こうで仕事すんの?」
「そのつもり」
「模試の判定とかは?」
「ギリギリかな。夏休みは補習もあるし、頑張ろうかなと」
「そうか」
「うん」
それ以上、カナ姉がその話をすることはなかった。前のカナ姉なら
「それで、伸大はどうするの、進路?」
とか尋ねてきたとて、なんらおかしくはなかった。が、今のカナ姉はそれをしなかった。その代わりに
「伸大はどう? こっちの高校は」
「刺激的……てのは、こっちの方が都会だからかな。かと言って、俺は……」
「そう」
その続きをカナ姉が何か言いかけた時、
「あら?」
と言う声が近づいて来た。




