晴れ渡るにはほど遠い
雲一つない晴れ渡る空が、夏休みが始まるという気分を否応なく高揚させ、無言で配布されながらも多弁な成績表などというのは、一睡の夢でしかないかのように錯覚させる。
一学期終業式の一般的なそんな感覚を、昨日の俺が感じているはずはなかった。
というのも、俺の心はちっとも晴れ渡ってはいなかったし、高揚なんてものもしていなかった。いや、高揚っぽいものはあったか。高揚と書いて緊張とルビをふるみたいなものが。そして、そんな状況に追い込まれたことを思い出して、ただただ二酸化炭素の排出量を増加させるくらいしかなかったのだ。
転校してきた高校での初めての夏休みを迎えるというのに、俺がそんな梅雨の残像を引きずるくらいに湿っぽくなっていたのには、もちろん理由があった。それは、大体育館に集合した、総勢約六〇〇名の全校生徒の前で、壇上から発表をしなければならないということがあったからだ。
しかしだ。それは優秀賞を取った読書感想文の朗読とか、二年生ながらも生徒会役員として奮闘したことへの拍手喝采後の一言とかいったものではまるでない。そもそも後者は転校して日の浅い俺ができるものではないし。
では、心躍るはずのそんな日になぜ俺がそんな絶賛メランコリック中だったかと言えば、それは、とある実験結果の発表だったのである。
言っておくが、俺は本来そんな大役を仰せつかっていたわけではない。俺はあくまでその実験の協力者でしかなく、壇上に立っていなければならない張本人が出席不能の状況に陥ったので、代理に任命され、致し方なくなったのだったである。
という導入があれば、当然のことながら、これから述べるのは、その実験にかかわることの顛末になるわけだ。
しばらくの間、俺のモノローグにお付き合いいただけないだろうか。言っておくが、長くなるけどな。




