第一話 超燃料エネギニウム
世界を変える未知のエネルギー「エネギニウム」。
その発表の場に、黒い悪意が襲いかかる——
勇敢なるヒーロー、ブレイブの戦いがいま始まる!
「それでは、エネギニウムの発見とその応用可能性について、ご説明します」
都市、オリンシティの中心の大ホール。
壇上に立つ白衣の男、アインは、静かにそう口を開いた。
会場はカメラのシャッター音、観客の歓声、期待、そして少しの緊張感で満ちていた。
ホールの後方。ひときわ鋭い視線を送る二人の男がいた。
ひとりは、“世界で最も勇敢な男”と称されるヒーロー、ブレイヴ。世界中の難事件を解決してきた伝説の存在だ。
もうひとりは、彼の相棒・ノーイ。冷静かつ機転の利くサポート役であり、互いに信頼し合う絶妙なバディだ。
「なあ、ノーイ。俺は、今最高にワクワクしてるぞ!こんな歴史的瞬間に立ち会えるなんて!」
「へ、世界一のヒーロー様も所詮は人間だもんな。てか俺らは、ここの護衛を任されてるんだから、呑気にしてるわけにはいかねえぜ」
「わかってるって。」
そう言いながら注意を前方に戻す。
「……エネギニウム。それはアメリカの山岳地帯で発見された未知のエネルギー物質。
一粒で都市ひとつを一週間稼働させる力を持つとも言われています」
アインが何か喋るごとに、シャッター音と、歓声が高まる。
「そしてその実物が、こちらです。」
バン、と壇の前方がスポットライトで照らされ、透明な箱に入った、青白い光を放つ立方体が見える。アインがそれを手に取り、すごきに合わせてスポットライトも移動する。
「今回特別にラボから持ち出してきました。」
ホールの盛り上がりが最高潮に達したその時、
突如、ホールの天井を突き破り、黒光りするロボットが降ってきた。
その頭部には、一際異様な笑みを浮かべた男。Dr.ゲノム。
「エネギニウムは我がものとなるッ!」
観客全員の視線が上に行く。
「やっぱし来たか、ゲノム……!」
ブレイヴは席を蹴って立ち上がると、ノーイに合図を送った。
「行くぞ、ノーイ!」
「了解。ブレイヴ!」
びっくりして、立ちすくむアインに、ロボットのアー厶が伸びて近づく。
「させるか!」
高く舞い上がったブレイヴの足が、アームを蹴り上げる。が、びくともしない。
「くっ…!」
アームが、床に転がったエネギニウムをつかむ。
「もらった!じゃあなブレイヴ!」
ジェット噴射で、会場から抜け出すロボ。
「まずい!捕まえるぞ!ノーイ!」
ブレイヴは、全速力で出口へ駆け出し、ノーイが遅れてあとに続く。
「はあ?どうやって?相手はロボだぞ?」
「車で突進するんだよ!」
「お前正気か?!俺ら死ぬぞ?」
「俺を何者だと思ってる?"世界で最も勇敢な男"だぞ?」
「ふ、もういい分かった!」
あっという間に、ホールの外に出た。
「やべ!あんな遠くに!」
急いで車を発進し、音をも置いてく勢いで駆け出す。
ロボとの間は、20メートル、10メートルとみるみるうちに近づく。
「クソ!まさか追いつかれるなんて!」
コックピットからDr.ゲノムが顔を出す。
「残念だったな!俺にあったが最後だ!ノーイ、いけーー!」
「うおっっ!!」
思いっ切り、アクセルを踏む。
足の関節に、車が激突する。
その瞬間、ロボは崩れ落ち、失速する。
激しい衝撃音と共にアームで掴まれていたエネギニウムは、コロコロと地面に落ちる。
「ぐっ…!」
車の中で、ブレイヴとノーイは体を激しく打ち付けられる。
「まだだ!まだ終わってない!」
よろよろの足で、エネギニウムの元へ駆けつける。ゆっくりながらも、一歩、二歩と確実に歩みを進める。
「俺らは、守ったぞ…!」
エネギニウムを手に取るとそれまでの疲れが一気に来て、その場に倒れた。
まもなくして、警察が駆けつける。
「大丈夫ですか!ブレイヴさん!」
「あぁ…そんなことよりあいつを…捕まえて…」
「くそ!もういないぞ!」
ロボの方で声がした。」
「くそっ!また逃がしたか…」
このことは、大々的にメディアに報じられ、
ブレイヴのヒーローとしての立場は、より確固たるものになった。
3日後なんとか回復したブレイブたちは、アインと共にエネギニウムを地下施設に移動させ、厳重に保管することになった。
都市地下の研究所に移送されたエネギニウムには、特殊捜査隊の護衛がついた。
「すっげー!こんなとこがオリンシティにあったとはな。」
「すごいでしょう。ここだったら、あいつらが来ても大丈夫ですね。」
とアインが言う。
「今から特別にエネギニウムを見せてあげましょう。ついてきてください。」
そう言ってエレベーターに乗り込むアインについていく。
「ここは、地下30階建てで、1階ごとに厳重なセキュリティがあるので、突破するのは本当に困難だと思います。アリ一匹だって通しませんから。」
しばらくすると、30階に到達した。
何度も分厚い扉を通り抜けた先に、目当ての品があった。エネギニウムだ。
「すげー!明るい!」
ホールで見るよりも近くで見るエネギニウムは、未知の燃料そのものだった。
エネギニウムに見とれていたその時、研究所の警報が鳴いた。
「まさか、アイツラか?!」
「おいおい早くないか?」
「とりあえず、ここを何とかして守るぞ!」
その時、一階では、バトルスーツを身に着けた、怪しい男たちがいた。
「このスーツなかなかいいですな…ゲノムさん。」
一人はトカゲ、一人はゴリラ、もう一人は、チーターのようなスーツだった。