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さようなら、好きだったはずの人

作者: ガネコ
掲載日:2023/05/20

 ――自分で殺しといて皮肉なものだ。

 悲願とも言える目標を達成した今になって、この想定外で衝撃的な事実が身体中を駆け巡っている。

 それは、まるで思いもよらぬ閃きのように突然訪れたが、妙に納得がいく。

 

 そう、君への深い憎しみ、そして周りから異常だと言われるほどの執着。なんだ、すべては愛情や独占欲の裏返しだったのか。

 これも二人の立場がこうじゃなけりゃもっと、違う形で君の目にも写っただろうに。君の両親を殺した時から僕は君の仇となった。

 出会った瞬間よりもずっと前から敵同士では、心も身体もこれが愛だと伝えられなかったのだろう。

 

 まあ、それならそれで、今になってから伝えるのではなく、僕が死ぬまで黙っていてほしかったね。ほかにもっとマシなタイミングがあっただろうに。

 殺した瞬間、命が消えた瞬間に、まるで堰を切ったように溢れ出してきやがって。

 ここに至るまでの長い年月。僕はこの幸せな瞬間を待ち望んでいたのに、悲しいくらい台無しだ。

 

 ……どうせ返事がないのは分かっているけど、ねぇ、君にとって僕はどういう存在だったんだろう?

 単なる敵だったのかな? それとも、僕のように、単なる悲哀や憎悪とは言い切れない、拗らせて複雑な感情を抱いていたのかな?

 もしこれが逆の立場だったら、君は僕のように思ってくれただろうか? 君が僕を殺して喜ぶ姿は何となく想像できるよ。

 でも、今の僕のような気持ちを抱いている君の姿を見たことがない。僕が知らないだけで、他の人には見せてたのかもしれないけど。

 うわ、今更嫉妬するとか虚しくてたまらないね。

 

 初めて彼女の頬に触れる。数分前まで生きていた彼女の肌はまだほんのりと温かい。

 撫でるようにじっくり触れると、へぇ、意外にも滑らかで綺麗な肌だ。

 こう見ると何だか眠っているみたいだね。そんな関係じゃなかったから、君の眠っている姿なんてこれまでも、これからも見ることはないけど。

 

 もし、君が眠りから目を覚ましたとき、僕が告白したら、一体どんな顔をしただろう。想像してみる。

 ……君ならきっと馬鹿にされたと思って、まず顔を怒りで赤く染めるだろう。

「二人の間にそんな面倒なものは微塵もない。元からおかしいと思っていたが、とうとうそこまで頭がおかしくなったのか!」みたいな感じで僕がとうとう狂ったと思って、怒りに満ちた目で僕を睨み、突き飛ばして殺そうとするだろうね。

 僕も同じ状況になっていたら、きっと同じようにしただろう。まあ、ほんの数分前までなら、ね。

 

 眺めているうちに、こうするのが当たり前だったかのように自然と唇を重ねる。

 その瞬間、涙が彼女に落ちると同時に現れた生温かい感触に、薄ら寒い興奮を覚えた。

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