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「おい!お前、何者だ?人間なのか?」俺は、低くて怯えたような声の男の声で目を開けた。血で顔を染めた汚い顔の大きな男が、瞳孔を開き息を切らしながら俺をのぞき込んでいた。
「君には俺がなにに見える?人か?それとも・・・」「俺が質問したんだ!あと五秒で答えなければ貴様を殺す。」そういって男は血でさびている大きな剣を僕の首元にかけた。「わからないよ!僕だって何でここにいるのかも、ここがどこかも分かっていないんだ!」僕は焦って叫んだ。
「答えになっていない。悪いが、お前を殺す。」大柄な男が剣を振りかざそうと剣を握りしめる。「ちょっと落ちつけよ、隊長さんよ。今殺しても何も解決しないぜ。まずはジョージに相談してからのほうがいいんじゃないか?この前の件といい、次やらかしたらお前の首もあのごみどもと一緒に焼かれることになるぜ。」細身で顔の薄い男が指をさす。そこにはさっきまでぎりぎりと嫌な音を立てていたやつらが、切刻まれて倒れていた。おそらく、今僕を殺そうとしているこの男がやったんだろうと容易に察した。血まみれの顔はやつらの返り血だろう。僕は恐ろしくなって体中の筋肉がふるえて止まらなくなった。
「おまえ、俺に命令するのか?」「そういうわけじゃないさ。でもビビッてしょんべん垂らしてる情けない男に、俺に反抗するなんて大層なことが出来るとは思えないだけさ。だから一回ジョージに聞こうって提案してるだけだよ」そう言って細い男は目を細めて僕を見て鼻で笑った。大きな男は汚い顔をさらにゆがめて、じっと僕をにらんだ。「トーマス。いつまで隠れているつもりだ。お前はどう思う。」大きな男は僕から目をそらさずにもう一人の男に聞いた。
「ぼ、ぼく?そんなのわかんないよ。」そういってトーマスという男は顔をこちらに一瞬向けたが、またすぐにそらした。「どいつもこいつも使えないやつばかりだな。仕方がない。いったん拠点に戻ってジョージにすべて押し付けてやる。面倒ごとはもうこりごりだ。」そう言って大きな男は剣を僕からおろした。それでも僕は震えが収まらなかった。気づくと僕はぐるぐるに縄で巻かれて先の見えない地獄みたいな地面を歩いていた。