上
自分が何者なのか。自分に何ができるのか。
佐藤一郎はもやもやしている。大学二年の無駄に長い春休み。
「なにかせねば」、漠然とそんな思いが胸を覆う。
長期休みというのは不思議なものだ。入る前はどこまでも待ち遠しい。だが、入ってしまうと自分と向き合う時間がありすぎるせいか焦りにも似た気持ちがあふれる。
「大学三年目が目前に迫る中、僕は何もしていないのでは」
インスタを開けば充実した学生生活を送る者。話を聞くに社会人として働いている者。
学生時代というモラトリアムの中その半分を無駄にしてきたのでは?今も無駄にしているのでは?
これは羨望で焦燥感。
充実した学生生活に憧れを抱き、遠くない未来である社会人から顔を背ける。
そして、何かしないといけないことがある、それが心底うらやましい。
全力で遊ぶこともせず、未来を見据えるわけでもない。
そんな透明な自分にやきもきする。
その他大勢の人生を送りたくない。人生に色どりが欲しい。
そんな誰しもがふんわりと思い、忘れていくようなことを。
僕ができていることなんてなにかあったっけな。
強いて言うならバイトだろうか。大学の学費、家賃、食費、交際費、もろもろ全部自分のバイト代から出しているな。でもまあ自分のことだから自分でお金出すのは当たり前だよなあ。
なんだかんだ自炊も毎日しているなあ。毎日自炊しているのはアピールポイントなりえるだろうか。でも男らしくはないよなあ。
勉強。勉強も特になにもだな。資格と英語の勉強を惰性でしているくらいか。周りには真面目って言われるけど。そういや真面目って今誉め言葉だっけ?
あんまりないなあ。
いや、友人にはかなりの自信があるな。みんなすごい輝いている人達な気がする。それこそなんで僕によくしてくれるのか本当にわからないくらいだ。
いや、それは友達がすごいだけか。自分の長所で友達を褒めるなんてな。
それほど見つからなかったか。自分と比べればそりゃ輝いても見えるよ。
僕はみんなに比べれば才能があるわけでも努力ができるわけでもない。
「ほんとに、どうしていくんだろうなー。」
初めてなのでゆるーくお願いします。
感想いただけたらうれしいです。
あれ?主人公めっちゃすごいやつじゃね?って気づいた人もいるのではないかと思います。
凄いやつなんです。
これだけ凄くても同じように悩んでいるのだとこれから考えるようになっていただけたら嬉しいです。