好きと好き
ケイが斬られ、レミアが魔力を解放し、数時間が経った。
レミアの魔力により洞窟は崩れ辺りはめちゃくちゃ。
騎士たちも、いつの間にか消えてしまった。
「う……」
「ケイ!良かった……目が覚めたのね」
崩れた洞窟跡で、ケイが目を覚ますと、レミアに膝枕をしてもらっていた。
目覚め、ケイが一番に思ったのは、
ーーおお!まさかオレにも膝枕をしてもらえる日が来るとは!
内心すごく感動するケイ。
しかしレミアはすぐにケイを膝から降ろし立ち上がった。
立ち上がったレミアが、ケイを見下ろす。
その目は、すごく寂しげだった。
「……レミア……?」
「ケイ……傷はもう平気?」
訊かれ、ケイは自分が斬られたことを思い出す。
ーーそうだ、オレ斬られて……
ケイが斬られた箇所に手をやる。しかし、痛みはない。
次いで服を捲ってみる。やはり傷は塞がっていた。
「これ、レミアがやってくれたのか……あれ?でもどつやって……レミアは治癒魔法が使えないからオレを呼んだはずじゃ……」
レミアは顔を伏せ、言う。
「そう、あなたを呼んだのは私……本当にごめんなさい……」
「……?何で謝ってーー……」
一歩、レミアに歩み寄るケイ。
しかしレミアは反対に一歩後退った。
「来ないで、ケイ。……やっぱり私はあなたとは一緒にいられないわ」
「何でーー」
ケイが訊くと、レミアは顔を上げた。
その顔は、目は、最初にケイが見たレミアとはまるで違い、どこまでも寂しげでーー
「辺りを見て、ケイ」
レミアに言われ、ケイが辺りを見る。
洞窟が崩れ、辺りは岩でむちゃくちゃになっている。
「これはね、私がやったの……あなたを斬られた怒りで、頭が真っ白になって……自分では魔力を完全に制御できているつもりだったけれど、この有様よ……次、いつまた我を忘れてこんな風にしてしまうか分からない……あなた
のことは、ちゃんと元の居場所に送り届ける。だから……」
さようならーーそう、レミアが言おうとした時、
「嫌だ」
きっぱり言って、ケイがレミアに歩み寄る。
「!来ないで……」
「それも嫌だ」
近づくケイに、慌てて後ろに下がろうとするレミア。
しかしそれより早くケイがレミアの手を掴み、引き寄せ、そして抱きしめる。
「ケ、ケイ……」
「一緒にいられないとか言うから、てっきり嫌われたのかと思った」
「……嫌いになんて、ならないわ……」
「そっか、良かった。それにありがとう……オレのために怒ってくれて」
ケイが少し強くレミアを抱きしめると、レミアもケイを抱き返した。
「……レミア、本心で言ってくれ……オレはお前が思っているよりもずっとお前が好きだ、だからお前の傍にいたい……傍に、いさせてくれないか?」
その言葉に、レミアが少しケイを強く抱きしめる。
「本心を言うわ。ケイ。私は私を好きだと言ってくれるあなたが好き。……だからこそあなたを失いたくない……でも、私と一緒にいたらまたさっきみたいなことがあるかもしれない。それが怖いの……」
「じゃあーー強くなるよ。色んな意味で、レミアの傍にいられるように。だからオレ、レミアを好きでいていいか?」
「そんなに、私のことを……?」
ケイがレミアの顔を見る。
「好きだ。今までにこんな誰かを好きになったことはない……好きってこんな感じなんだな。レミアを思うだけで胸がいっぱいだ」
笑うケイに、レミアは首の後ろに手を回し、そしてキスをした。
「ーー……私もあなたが好き。胸がいっぱいになるぐらいに。だから私の傍にいて」
「ああ。喜んで」
今度はケイからキスをし、二人はまた抱きしめ合った。