オウカ・タチカワ
「「刀は抜かない」の約束の方は、別に破ってもいいぜ」
座り、壁にもたれかかる女にそう言ったケイ。
すると、女は血を垂らした口角を上げる。
「案外慎重なんだな……迂闊に近づいて来たところを殴ってやるつもりだったのに」
そう言いながら立ち上がる女。
ーーやっぱり立ち上がるか……
「まぁな……殴った時のあの手応えのなさと太ももに走った衝撃……アンタ拳をもらいながらもオレの太ももを蹴って自分で後ろに跳んだな」
「気づいたか……それで近寄って来なかったんだな……フフ。いいな。顔に拳をもらうなんていつぶりだろうな」
口元の血を拭い、なおも女は笑う。
「しかしその魔眼……あの小娘、余程貴様に肩入れしているな」
「……まだ戦うか?」
ケイが訊くと、女は声を出して笑った。
「クハハハハ!!借り物の力で一発入れたぐらいでいい気になるなよ小僧!……しかしヒマつぶしとはいえ中々の相手だ。敬意をひょうして名乗ってやる。オウカ・タチカワだ」
「ケイ・アキハナ」
名乗ると同時ーーケイが再び魔眼の能力を発動。
オウカを引き寄せ殴りかかる。が、
瞬間移動直後の攻撃。にも関わらずオウカはケイの拳を防いだ。
「重いな」
そう笑い、そして反撃。
ケイの腹部にオウカの拳が飛ぶ。
「グハッ」
フラつくケイに、オウカは怒涛の追撃をかます。
「やはり借り物の力。ロクに使いこなせていないな!」
トドメとばかりに放たれる右の大振り。
ケイはそれを回転し躱しながらオウカの腕を掴み、そしてその勢いのまま背負い投げをみせる。
しかし頭から落とすつもりで投げたが、オウカは空中で体勢を整え両足で着地。
反撃の拳が飛ぶ。
躱そうとバックステップしようとしたケイだったが、いつの間にかオウカはケイの腕を取っていた。
「ガッ!」
拳が当たり、足元がおぼつかないケイ。
そんなケイにオウカは、
「背負い投げとはこうやるのだ」
オウカがケイを背負う。
その投げのキレ、スピードはケイとは比べ物にならない。
「グハッ!」
鈍い音とともにケイが頭から地面に落とされた。
横たわるケイを見て、オウカはつまらなそうにする。
「この程度か……運動にもヒマつぶしにもならんな」
ケイを放置しどこかへ帰ろうとするオウカ。しかしーー……
「ほう」
ゆらり、ケイが立ち上がる。
「どこへ行くつもりだ。まだ勝負は着いちゃいない」
「クハッ、いいぞ。そうこなくては」
再び二人が向かい合う。




