深夜の森の攻防7
「ハァ…ハァ……勝負アリ…ですね」
息を切らし、フラフラしながらも、ネイがゆっくり立ち上がり、そして仮面の女に近付く。
「さて、ではその顔、拝見いたしましょうか」
そしてーーネイが仮面の女の仮面を取ろうとしたその時、
「!」
仮面の女は立ち上がり、手にしていた小さなナイフでネイの腹部を刺した。
「くぁ……」
刺され、がしりと仮面の女にしがみつくネイ。
仮面の女はゆっくり退がり、ネイはその場に崩れ落ちた。
しかしすぐに立ち上がり、ゆっくり退がり、距離を取ろうとするネイ。
フラフラとおぼつく足取りで後退する。
「どうして……『雷槍』は、確実に当たっていた……アレに耐えるなんて……」
「………………」
仮面の女は依然何も喋らず、ただゆっくりネイに近付く。
「何も…話す気はないということですか……なら」
ネイがそう言った時、ピタリと仮面の女がその歩みを止めた。
「話は牢屋で聞くことにしましょう」
「………………」
「動けないでしょう?動きを封じる結界魔法です……幼馴染から習いましてね……さっき刺されたと同時に仕込ませてもらいました。これで動きはーーって、ちょっと……」
結界魔法により、完全に相手の動きを封じたと思ったネイ。
しかし仮面の女は、その膨大な魔力で、ネイの魔法を強引に破りにかかる。
「まったく……!」
ーーこの状況はマズい。私も深傷を負った。ポーションもない、今すぐにでも治療しなければ……
ーーしかしこの人の動きを封じるための魔法ももう破られる……それにカラクリは分からないけれど、この人には何か魔法を無効化する術がある……『雷槍』ですら効かなかった……なら。
「仕方ありませんね……あなたが強かった。だから私も、今出せる全力を……!!」
ネイが残り少ない魔力を練り上げる。
「『紫電、龍の嘆き、天からの一撃』」
そして呪文を詠唱し、放たれるのは、
「『雷葬』」
放たれるのは、天から降る龍の形をした雷撃。
今ネイの放てる最強の技。
その龍が、仮面の女に放たれる、その直前。
「『時操、思い出、切なる願い』」
仮面の女もまた、詠唱を口にする。
放たれた龍、その龍の動きが、仮面の女を呑み込む直前に、止まる。
「え…!?」
驚きの表情を見せるネイ。
そんなネイをよそに龍は、真っ二つに裂け、消えた。
ガクリ、膝を着くネイ。
「どうして……私は魔法を解除していない……なのにどうして……」
「私が強制的に解除したから」
ここで、仮面の女が初めて口を開いた。
「私の能力は時間を操作する……加速したり、ほんの一瞬対象の時を止めたり」
「時間の操作……!」
ネイが仮面の女の速度、そして不意に止まる自分の身体を思い出す。
「そして私の開花魔法は時間の巻き戻し……さっきはあなたの魔法を放たれる前に戻した……だからあなたの魔法は消滅したの……流石にアレは当たってから時を戻して回復するんじゃ遅いから」
「なるほど……最初の攻撃や、『雷槍』を喰らって立ち上がれたのは、その開花魔法で自身の肉体を戻していたからですか……」
「正解」
「ーーいやに饒舌ですね」
「ーーこれから『略奪剣』の餌食になって、あなたは死ぬ……冥土の土産……顔は見せてあげないけど」
ゆっくり、仮面の女がネイに近付く。
「でも、『略奪剣』を持ってくるまでチョロチョロされても嫌だから、動けなくはなってもらう」
そうして、仮面の女のナイフが、ネイの脚めがけ振り下ろされた。
「……!」
しかし、そこにネイの姿はない。
「ーーあなたは」
ネイは、その場に駆けつけたケイの腕の中に居た。




