昔の話
宿へと戻ったケイは、レミアをベッドへと寝かせた。
「……レミア…………」
傷は治した。しかしまだ意識は戻らない。
ケイはベッドの側のイスに座り、レミアの意識が回復するのを待った。
そうして数時間後。
「ん…ケ、イ……」
レミアが意識を取り戻した。
「!レミア。良かった。大丈夫か?どこか痛む所は?」
「大丈夫……あっ。それよりケイ。イバ・ルーゲラーは……?ケイは大丈夫なの?」
「ああ。オレは大丈夫。アイツなら退いたよ」
「そう……」
「ーーなあレミア。この数日、ずっと一人で王都の事件について調べてたのか?」
「ーー……それは………」
「……オレは、レミアにとってオレはそんなに足手まといなのか?」
「!違ッ……」
「確かにオレはレミアと比べたら力不足かもしれない。でもーーオレだって、少しぐらいレミアの力に……」
「違う!」
大きな声を出したレミアに、ケイが少し驚く。
「違うの……」
そしてその瞳からはら大粒の涙が溢れていた。
「ーーケイ。少し、私の昔話を聞いてくれる?」
「ああ」
「ありがとう……昔、私は別の国の田舎でお父さんと二人で暮らしていたの……お母さんは、身体が弱くて私を産んですぐに亡くなってしまったわ」
「………………」
「でも寂しくはなかった。お母さんの分も、お父さんが愛してくれたから……ふふ。本当に優しくて、「大好きだよ、レミア」が口癖だった」
「そうか」
「うん……本当に、幸せな日々だった……私に『六翼印』なんて忌まわしいものが出るまでは」
「『六翼印』…」
「そう……原初の魔女が使ったとされる魔女の証。発現した者は魔女とされる……それには膨大な魔力が蓄積されているの……昔、たまたま入った森で魔物に出くわした時発現したわ……その時私は『魔女』になった」
「………………」
「そして私が魔女になって数日後、国が私を捕えるために兵をよこしたの……魔女の力を軍事利用するために……幼い魔女なら、これからいくらでも利用できると判断したんでしょうね……その国の兵は、なんとかお父さんを丸め込んで私を引き渡すように言ったわ。お金…権力……でもお父さんは決して私を渡さなかった。結果ーー国の兵は力づくに出て、お父さんを攻撃した……お父さんは必死に抵抗して逃げろって叫んでいたわ。でも、私は動けなかった。お父さんから、離れたくなかった」
再び、レミアの瞳から涙が溢れる。
「でも、お父さんは必死に抵抗したけど、斬られてしまったの。血を吹き出して倒れたお父さん……そこで私の意識はなくなったわ。多分、『六翼印』が暴走したんでしょうね……気付いた時には、辺り一帯が消えていたから……」
「レミア……」
レミアが濡れた瞳をケイに向ける。
「お父さんが大好きだった。ずっと一緒にいたかった。でも、いなくなってしまった。私のせいで……だから、だから嫌なの。もう、大好きな人が私の前からいなくなってしまうのは!だから、一人で行動したの……私一人で全て終わらせて、そしてケイと静かに暮らしていきたかったから」
ボロボロと泣くレミア。そんなレミアを、ケイは優しく抱きしめた。
「レミア。レミアの気持ちはよく分かったよ。ありがとう……オレとの未来を考えてくれて……」
「う…うう……」
「じゃあ、今度はオレの話を聞いてくれ。まず、お父さんがいなくなったのは絶対レミアのせいじゃない……レミアは何も悪くないよ……そして、オレは絶対いなくならない。絶対だ」
レミアがケイを見る。
「絶対に……?」
「ああ。絶対に……約束だ」
ゆっくりと優しく、ケイがレミアを抱きしめる。
「大好きだよ、レミア」




