新たなクエスト5
レミアが洞窟に入って数分、ケイはジッと洞窟を見ていた。
「レミア……やっぱりオレもーー……」
レミアが心配で、ケイも中へ入ろうとして、やめた。
レミアは強い。そしてケイは弱い。
中へ入っても、レミアはケイが心配で全力を出せないかもしれない。それが分かっていたから。
ーークソッ。
自身の無力感に震えていると、洞窟の方から何か音がした。
「……?」
何か土を掘っているようなーー
ーーまさかレミアが……!?
ーーいや、レミアは強い。それにもしそうなら、ゴブリンは入り口から出てくるはずだ。
ーーもしかして中の戦闘のドサクサに紛れて逃げようとしている奴がいる?
そう思ったケイは、音のする方へと向かった。すると、
「ギギ!」
思った通りゴブリンが、そしてそのゴブリンが守るように子供のゴブリンを連れていた。
ケイはすぐ剣を構える。
すると、それを見たゴブリンは、
「ギギィ!」
雄叫びを上げるゴブリンーー直後、そのゴブリンの身体が変化し始める。
グングンと背が伸び、筋肉もついて、小ぶりなゴブリンが、2メートルを越える筋肉質のゴブリンになった。
「……おいおい、そんなのアリか……?」
戸惑うケイーーしかし。
「悪ぃけど、逃すわけにはいかないんだよ!」
言い、ケイは魔力を使い身体能力と剣を強化、ゴブリンに斬りかかる。
ケイの斬撃はゴブリンを捉えた。
しかし直前でゴブリンが身を引いたため斬撃は浅い。
直後、今度はゴブリンの攻撃。
ゴブリンが拳を振り下ろす。
その拳もまた、魔力で強化されていた。
ケイはその一撃を、剣で受け止める。
ーー重い……!!
何とかその一撃は受け止めたケイだったがしかし、
「ギギャアアアアアアア!!」
ゴブリンはそこから更に拳のラッシュをケイに叩き込んだ。
その速さと手数に、ケイは何も出来ず吹き飛ばされてしまう。
「ぐぁああ!」
「ギー……ギー……」
ケイを倒したと思ったゴブリンが、子供ゴブリンを連れてその場を離れようとする。
「……待てよ」
しかし、その声に立ち止まり、振り返る。
そこには何事もなかったかのように立ち上がるケイ。
「治るつっても痛てーんだぞこの野郎」
治癒魔法を使い傷を治したケイ。
しかし今の攻撃で、剣は砕けてしまった。
ーー武器はもうない。なら。
ケイが無手で構える。
文武両道が家訓の秋花家で生まれ育ったケイ。
幼少期より勉強はもちろん、武道もやらされた。
もっとも、それは家伝の武道だったが。
「ーー行くぞ!」
再び魔力で身体を強化し、ケイがゴブリンの懐に潜る。
そして左の下突きを見せる。
「ギー!」
それはゴブリンの腹部を捉える。
魔力を乗せた打突。それは確かに効いた。
ゴブリンは負けじとケイの顔面に左の拳を突き出す。が、ケイはそれを躱す。
ゴブリンの攻撃を躱したケイはゴブリンの脇腹に、回し蹴りを叩き込んだ。
「ギィ!」
ゴブリンの身体がグラつく。
「ーーお返しだ」
フラついているゴブリンに、ケイは拳のラッシュを叩き込む。そして、
「トドメ!」
トドメと、ケイは跳び上がり右の回し蹴りをゴブリンの側頭部の繰り出した。
「ギ……!」
ズンという音を立てて、ゴブリンは沈んだ。
「フー……」
一息吐いたケイ。
すると、遠くからケイたちを見ていた子ゴブリンが倒したゴブリンに駆け寄りしがみ付く。
そしてケイを睨みつけた。
「………………」
ここからどうするかーーそうケイが考えていると、
上空から剣が降り注ぎ、ゴブリンと子ゴブリンを貫いた。
「ケイ!無事!?」
レミアがケイに駆け寄る。
「レミア……ああ。大丈夫だ」
「良かった……ところでケイ、この大きなゴブリンは……」
「いや、最初は普通に小ぶりなゴブリンだったんだけどさ、急に大きくなりやがって」
「ケイが倒したの?」
「え?ああ、まあ」
「そう。すごいわ」
ーーケイは私が思っているよりずっと強いのね。
「魔物の中にも魔法を使える個体はいるからその類ね。コイツが群れのボスで、そして仲間を囮に子供のゴブリンを連れ出した」
「ああ……なあレミア……子供のゴブリンは、どうしても殺さないとダメだったのか?」
「ケイ……ケイの気持ちも分かるけど、クエストの依頼だし、ゴブリンは必ず人を襲うわ……今回みたいに人間に怨みを持ったゴブリンは特に、ね」
「そうか……そうだよな……ごめん」
「いいのよ……さ、巣の中のゴブリンも始末したし、ケイがボスを倒してくれた。クエスト完了ね、帰りましょう」
「ああ」
こうしてクエストを達成し、二人は王都へ帰った。




