表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/60

仇 002



 闇ギルド「(グール)」が、ミアの親父さんの会社を潰した。

 そんな衝撃的な事実を、当事者であるテスラは半笑いで語る。


「どっかの企業から依頼されたんだが、結構手こずったもんだぜ。それまでは殺人か強盗くらいしかやってこなかったからさ……商品の仕入れのルートを絶ったり、魔物に店を襲わせたり、細かいことをいろいろやったもんだ。いやー、懐かしい。俺たちにとっても初の大口の仕事でよ、マスターもかなり乗り気だったな」


 アインズベル商会を潰したということは。

 その事象が示すことは。

 つまり。


「当時の『賊』は無名に近かったんだが、あれをきっかけに名前も売れるようになっていったのよ……まあ、俺的には面白味のねえ仕事だったがな。裏でこそこそ工作するのは趣味じゃねーし」


 如何にも退屈だったと言わんばかりに、テスラはため息をついた。


「とにかく、思い出せてすっきりしたぜ。喉に刺さった小骨が抜けた感じ? 歯に挟まった繊維質が取れたとか? つーかさ、爪楊枝って歯の間を掃除するには太過ぎねぇ?」

「……」


 飄々とふざけたことを言い続けるテスラとは対照的に、ミアは暗く顔を伏せる。

 彼女は今、何を思っているのだろうか。


「……クーラ・アインズベルは、私の父よ」


 俯いたまま、ミアは呟く。


「あなたたちの所為で会社は倒産して、お父さんは自殺したわ」


 感情を殺した平坦な声色。

 だが、きっと。

 彼女の心の中は、熱く燃えている。

 いくらお父さんのことを嫌っていたとしても、その仇となる存在が目の前に現れて、何も感じないはずがない。

 怒りなのか。

 悲しみなのか。

 復讐心なのか。

 僕には、わからないが。


「へー、そいつはすげえ偶然だな。奇縁ってやつか……まあ、ご愁傷様」


 テスラは形だけ合掌する。

 ミアの話に心底興味がないのだろう。

 あいつは、自分が楽しむことしか頭にない。

 面白いかどうかで物事を判断している。

 ミアの父親を間接的に殺しておいて。

 何も、感じていない。


「――っ」


 ふと、顔を上げたミアに目線をやれば。


 彼女は――泣いていた。


 金色の瞳から流れ出た透明な線が、頬を伝う。


 仲間が。


 僕の仲間が、泣いている。


 それは。



 怒りを覚えるのに、充分足る事実だった。



「……おい、テスラ」

「どうした、にーちゃん」

「申し訳ないけど、ここで死んでくれ」


 ミアを泣かせる奴のことを。

 仲間を悲しませる奴のことを。

 僕は、許せない。


「……かははははははっ‼ いいぜ、イチカ! 存分に殺し合おう!」


 テスラは今日一番の高笑いをして、懐から例の箱を取り出した。

 【収集箱】……箱に収まるサイズの物なら、無制限に出し入れができるスキル。

 そこから、無数のコアが飛び出してくる。


「……っ」


 先程とは比較できない量のコア。

 だが、どれだけ頭数を増やしても僕のスキルで……いや、待て。

 確かあいつは、もうペットは使わないと言っていなかったか?

 ならばあのコアたちには、別の使い道が……


「さあ、本気の遊びをしよう! 【継ぎ接ぎ(フランケン)】‼」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ