第7話 勧誘
「アキラ、俺たちは先に飲んどくぞ」
気を利かせてくれたのか、隊長達はその場から少し離れたテーブルに腰掛けた。
「久し…ぶりだね」
アキラは照れくさそうに話す。
「……最初は誰だか気づかなかった……。お前、ほんとは女だったのか!?…。少し飲まないか?……積もる話もあるだろう……」
「おい誰だバルボッサ。この可愛い女は!?バルボッサ、案外お前も隅に置けないやつだな」
アレクがタイミング良くトイレから帰ってきた。
「……バカ。よく見ろ。……お前もよく知っているやつだ……」
「は?ちょっと頭が追いつかねー。こんな美少女、見たことも聞いたこともねーぞ」
アキラは追放された直後、魔女に女にされてしまったこと。そして、今は【ラッキークローバー】の一員として冒険者を続けていたこと。それで今日はB級昇格の打ち上げで酒場に来ていたことを話した。
「そういえば、キッドマンが見あたらないな」
「あいつとは今、ぎくしゃくしてるんだよ。いつもパルルパルル〜って……だから今日は2人で飲んでんだ。てかアキラ、めっちゃ胸デカイじゃん」
「はぁー……どこ見てんだよ……」
思わず溜め息がでるアキラ。
アレクとバルボッサはアキラが抜けた後のことを話した。
冒険者を1人増やしてみたものの、クエストがあまりうまくこなせていないこと。アレクがクエストで怪我をおってしまったこと。
さらに、A級クラスからB級クラスに降格していたことを。
ランクには昇格することもあれば、降格することもある。A級クラスは60日間で1度でもA級クエストをクリアしていると降格することはない。だがしかし、逆に60日間で1度もA級クエストをクリアしていないと降格してしまう。
つまりは、そういうことだ。
「そうだったのか…。なかなか苦労しているんだな」
「アキラ、俺たちお前が居なくなって初めてお前の存在の大切さに気づいたよ。お前さえ良ければ、また【結合する絆】に帰ってこないか?キッドマンとパルルには俺から上手く話すからさ」
「……すまない。そう言ってもらえるのは嬉しい。でも今は俺、いや私は【ラッキークローバー】を気にいってるんだ」
「……そうだよな。だがもし、気が向いたらいつでも言ってくれ。お前が抜けてからすべてが悪い方に流れているような気がするんだ……ていうかお前、俺らと離れてから可愛くなりすぎだろ。おまけに巨乳だしよー。ちくしょめー」
胸部を抑えるアキラ。
「確かにね。ずいぶんと見た目は変わってしまったかも」
「おやおや!?これはこれは最近A級からB級に降格なさった【結合する絆】さんではありませんか」
「っチ。相変わらず嫌味な野郎だな、ヨハン」
A級パーティ【永遠の満足】のリーダーヨハン。
どうやら、俺たちの姿が見えて挨拶に来たらしい。
「アレク、お前には失望したよ。同じA級どうし良いライバル関係にあると思ってたのに。残念他ならない」
「お前、絶対思ってなかっただろ」
ヨハンはアキラのほうに目を向けた。
「最近、乗りに乗っている【ラッキークローバー】のアキラだな。お前らの噂は最近ギルド内でも話題になっている。まずはB級昇格おめでとう」
「……何しにわざわざ来たんだ?……冷やかしでもあるまいし……」と バルボッサがヨハンに問いかける。
「久しぶりだなバルボッサ。だが今日はお前らに用はない。単刀直入に言おうアキラ。俺たちのパーティに入らないか?見てくれは問題ないし今回の【ラッキークローバー】の昇格もお前がかんでんだろ?そんなパーティに埋もれてるより、俺たちと一緒に高みを目指そうじゃないか」
「フフっ。困ったな……買い被りすぎだよ」
「……まあ良い。今日は挨拶に来ただけだ。今日のところはこれで失礼するよ」
ヨハンは颯爽と去っていった。
「私もそろそろ戻らないとガイルに怒られちゃうから」
アキラもガイル達のいるテーブルに向かうことにした。
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