第5話 アレク視点2
「パルルです。まさか自分が加入できるとは思いませんでしたが、精一杯がんばります」
【結合する絆】の面々と自己紹介を済ますとクエストの受注に行く。
Bランククエスト
《ユウヤケの丘にてミノタウロスが大量繁殖中
ミノタウロスの10頭討伐 (報酬12000G)》
「これに行こうか。俺たちは本来Aランククエストばかりこなしている。だがパルルは初日だしこんなんでいいだろう」
武器以外の荷物は新人のパルルに持たせるアレク。
「いつもこんなに沢山持っていくんですか?」
「あぁ!?ああ。雑用は新人の仕事だけど、何か文句でも?」
「いえ、そういう訳では」
「……ポーションも頼む…」
「そんなのいるか?まぁいい。パルル、ポーションも積んどいてくれ」
「分かりました!」
受付を済ませて、クエストに出る。
ユウヤケの丘まで少し距離はあるが午前中に出発すれば夕方までには余裕で到着するだろう。
緊張した様子でパルルは初クエストに同行。みんなの後を追うようにして歩きだした。
「よし、ここらで昼休憩としようか」
ぷしゅーっと風船の空気が抜けるようにパルルはその場でへたり込む。
「……何だ。もうへばったのか?」とバルボッサが笑う。
「少し荷物持ってやろうか?」とキッドマン。
「お前ら、甘やかすんじゃねーよ。それより飯にしようぜ。パルル、なんか作ってくれ」
「へ?そんなの作れないですよ。私お料理苦手ですし、そもそも調理器具も材料も持ってきてないですよ。私はお弁当持参してきましたけど」
「何だと!?あのポンコツでさえも料理くらいはできたのに。じゃあ俺は何を食べればいいんだよ」
「……携帯食料なら…俺が持ってきている…。今日のところはそれで我慢するんだな」
「まあまあ、アレク。バルボッサが持ってきてくれて良かったじゃないか。パルル、気にしなくていいからな」
終始、ぶつぶつとボヤいていたアレク。パルルもマイペースな分、特に気にしている様子はなかったがキッドマンは執拗にパルルに道中気を配っていた。
ようやくユウヤケの丘付近に到着。
ミノタウロスがうようよいた。どうやら本当に大量繁殖していたみたいだ。
「……アレク……。作戦はどう考えている?」
「あ?作戦?そんなのばーっといって、ずばーっとやっちゃえばいいだろ」
「……聞いた俺が…バカだったか……」
「あわわわ、、あんな狂暴そうな魔物と闘うんですか?」
「パルルはそこで隠れて見ていればいいよ。俺たち3人で10頭でも20頭でも討伐してくるさ」
切り込み隊長のキッドマンがランスでミノタウロスの群れに向かって突進。すかさず、バルボッサがキッドマンのサポートをしつつミノタウロスに大斧を振り回す。
「おおおぉぉぉぉ!!」
バルボッサの大斧でミノタウロスを一閃。
遅れて少し離れたところでアレクはミノタウロス4頭に囲まれていた。
「なんだ?お前ら俺とやろうってのか」
ミノタウロスは一斉にアレクめがけて斧を振り下ろす。
身を交すアレクだが、逃げ道を塞ぐようにして立ちはだかる。
「オラっ!」
アレクもドラゴニックソードで応戦。しかし、なかなかダメージを与えられない。
「なんなんだこいつら。こんな手強い相手じゃなかったろうが」
大斧を頭上でクルクルと回しながら、アレクの援護に向かうバルボッサ。
「おおぉぉおお!!」
バルボッサはジャンプし、大根切りでミノタウロスの1頭を切りかかる。ミノタウロスどもは陣形が崩れたせいか、かなり隙がうまれた。
「グサッ」アレクは剣先でミノタウロスの目をひと突き。
「ざまあみやがれ」
怒り狂うミノタウロスは猪突猛進。アレクはかなりふっ飛ばされ、うなだれる。
「……まずいな……キッドマン!!しばらく俺がここを食い止める。その間にアレクを抱えて逃げてくれ!!」
ミノタウロスの注意がバルボッサに向くと、キッドマンはアレクを抱きかかえてパルルと合流し退避。
みんなの退散を確認するとバルボッサもその後を追うようにして退避した。
「あわわわ。ポーション、ポーション……」
パルルは慌てた様子でアレクにポーションを飲ませる。
どうにかギルドに戻ってきた【結合する絆】。
「あわわわ。アレクさん大丈夫ですか?」
「……かなり酷いな。しばらくの間、クエストにはいけないだろう……」
「チっ。何やってんだよ、ったくよ~」
ギルドにクエスト失敗の報告。
「残念な結果でしたね。ミノタウロス3頭の討伐は確認しましたので、合わせて2000Gになります」
「……ありがとう。確かに受け取った……」
アレクが戦線離脱を余儀無くされた今、残りのメンバーで簡単なクエストをこなしていく他ないだろう。
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