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異世界転生の天人族《ハイランダー》〜異世界の山奥で悠々自適なスローライフ〜  作者: SIGMA・The・REVENANT
第一章・第二話:山奥スローライフ
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訪れし者達・その1

タイトル変えました

 湖に住む最高位精霊のヴィヴィアンと出会ってから数日……俺はそこかしこから視線を感じるようになった。


 オウルから我が家にも精霊がいると聞いて、その事を意識するようになったのも理由の一つかもしれないが、それでも視線の数が多すぎるような気がしてならない。


 中にはまとわりつくように俺の周りを飛び交う者もいたりして、本当に天人族とやらは精霊に人気だということを理解する。


 そんなある日、新たに作ったバルコニーに置かれたロッキングチェアに座りながら本を読んでいると、今までよりも強い視線を感じた。


 勘づかれないように視線をそちらへと向けると……。


 ────いた……四つ、五つ……いや、七つの人影が木の影から顔を覗かせてこちらを見ている。


 揺らめく炎のような赤い髪の男。


 青色の長い髪の女。


 緑色の短い髪の女。


 黒髪に黒い服の男。


 茶髪に肌も茶色い男。


 白一色の女。


 そして所々に木の枝や葉っぱを纏った女。


 彼らは明らかに人間ではなく、しかしちゃんと人の姿をしているところを見るにヴィヴィアンと同じ最高位精霊なのだろう。


 俺は本を閉じると静かに立ち上がり、家の中へと入ったのだった。


 まぁ……これはフェイントなんだけどな?






 ────────────────────────





 武尊が家の中へと入っていったのを見ていた七人の最高位精霊達……彼らは火、水、風、土、木、闇、そして光の最高位精霊達である。


 火の最高位精霊イフリート。


 水の最高位精霊アクエリアス。


 風の最高位精霊シルフィード。


 土の最高位精霊グラディウス。


 木の最高位精霊ユグドラシル。


 闇の最高位精霊ドゥンケルハイト。


 光の最高位精霊セイクリッド。


 彼らは家の中へと入っていった武尊の姿に、その場でヒソヒソと相談を始めた。



『ちょっと……もたもたしてるから中に入っちゃったじゃない!』


『落ち着けアクエリアス!ンな事言っても、それじゃあ堂々と現れれば良かったのかよ?』


『そんな事言ってないじゃない、バカイフリート!』


『んだとぉ!』


『なによ!』


『まぁまぁ、ここで喧嘩してもどうにもならないのですよ?』


『そうわ言ってもなセイクリッド……流石に話もせずに立ち去るのは我々としても悔いが残るのだよ』


『ドゥンケルハイトよ、それならば今すぐ声をかけに行けばいいではないか?』


『バッ────それとこれとは話が違うだろう、グラディウス!』


『ねぇ〜、こんな事をしてる暇があるならさっさと声をかけに行けばいいじゃーん?』


『ならばさっさと行けば良かろうシルフィード』


『えっ?皆が良いなら行くけど。ユグっちも行くもんね?』


『あぅぅ……私を巻き込まないで……』



 口論を始めるイフリートとアクエリアス。


 その横で呑気にそう話すセイクリッドと、それに対し苦言を呈したところ、直ぐにツッコミを入れるドゥンケルハイトにグラディウス。


 そしてユグドラシルの手を引っ張って武尊の元へと行こうとするシルフィード。


 そのせいで彼らは気づいていなかった……その話題の種である武尊が既に彼らの背後にいた事を。



「あのさぁ……用件があるならあるで、さっさと済ませて欲しいんだけどよ?」


『────!!?』



 武尊の声に全員が一斉に背後を振り向き、そして同時に後ろへと飛び退いた。


 そして一通りあたふたした後にそれぞれぎこちの無い挨拶を始める。



『ご、御機嫌よう〜なのですよ〜?わ、私は光の最高位精霊、名をセイクリッドと申すのですよ〜』


『わ、我は闇の最高位精霊であるドゥンケルハイトだ』


『お、俺様は火の最高位精霊イフリート様だ!』


『み、水の最高位精霊アクエリアスよ!文句ある?!』


『つ、土の最高位精霊であるグラディウスと申す』


『やっほ〜♪︎風の最高位精霊のシルフィードちゃんだよ〜』


『あぅ……木の最高位精霊ユグドラシル……です……』



 挨拶を終えてぎこちない笑みを浮かべる最高位精霊達。


 それに対し武尊は清々しい程の冷ややかな目を彼らに向けていた。


 たった数秒の沈黙が、この時の彼らには永遠に感じていたのであった。



「…………で?」


『〝……で?〟と申しますと……?』


「それで何の用だって聞いてんだよ」


『あ、はい!申し訳御座いませんなのですよ!』



 武尊は別に怒っていたわけではなかったのだが、その威圧感のせいでセイクリッドはその場に土下座をしてしまった。


 そして他の最高位精霊達もつられるようにその場に土下座をし始める。


 そのタイミングでヨミが武尊の元へと近寄ってきた。



「ちょっと、急に目の前で消えたから驚いたのだけれど?それとこれはいったい何事なの?そしてこの人達は誰?」


「あ〜?なんか火、水、風、土、木、闇、光の最高位精霊だってよ」


「ちょっ────四大精霊と双極精霊のトップ達じゃない!どうしてその方々がここに……って、もしかしていつもの?」


「どうやらその〝いつもの〟らしい」



 最初こそ驚いていたヨミであったが、ここ最近、精霊達が何かと武尊に会いに来ていることに慣れてきていたのか、直ぐにいつもの調子に戻った。



「この方達は普段は精霊界でそれぞれの妖精達を取り纏めているのだけれど……ここにいて大丈夫なの?今頃、精霊界は大騒ぎしてるような気がするのだけれど……」



 ヨミのその言葉に最高位精霊達が肩を震わせる。


 どうやら何の伝言も無くここに来ていたようで、完全に図星を突かれている状態である。


 それを察した武尊はため息混じりにこう言った。



「そういう事なら今すぐ帰れよお前ら……」


『し、しかし!最高位精霊として貴殿とお近付きになりたいのだ!』


「仕事サボって遊んでる上司を見て、従おうと思う部下はいるのかねぇ?」


『う……ぐっ……』



 意見を述べたドゥンケルハイトだったが、武尊に正論を言われると直ぐに何も言い返せなくなってしまった。


 〝本当にこんな奴らが最高位精霊で大丈夫なのだろうか?〟と、この時の武尊は不安感に襲われてしまう。



『あ、あの……』


「ん?」


『ひぃ────!!』



 何か言いたそうに声をかけたユグドラシルでさえもこのような調子である。


 武尊は酷い疲労感を感じ、頭が痛くなってきていた。


 だがシルフィードの次の一言で少しだけ納得することになる。



『確かに天人族のお兄さんの言いたいことは分かるけど、実は私達の仕事ってそんなにないんだ〜。だいたいが暇でさ、だって私達の主な仕事って、下位精霊達の報告を受けて、それを精霊神様に報告するだけだもん』


「なるほど、そういう事か」



 シルフィードの話を聞いて、無意識に雰囲気が和らいだのだろう……最高位精霊達がホッとした表情になる。



『それに今日は挨拶しに来ただけだから、直ぐに帰るしね〜』


「それじゃあなんでいつまでもこんな木の影に隠れてたんだ?」



 最高位精霊全員の動きが止まる。


 それを見た武尊とヨミは顔を見合せ首を傾げ、最高位精霊達はあちらこちらへと視線をさ迷わせていた。


 しかしその中でマイペースを崩さないシルフィードだけがその質問に答える。



『いやぁ、いざ挨拶しようと思ったら急に緊張しちゃってさ〜。いや、私はそんな事無かったんだけど、皆の踏ん切りがなかなかつかなくて』


「別に緊張されるような人間じゃねぇんだけどな」


『あはは!お兄さんは自分の事を過小評価し過ぎだよ〜♪︎私なんてこの場でお兄さんと契約したいくらいだし〜』


「契約?したいのならお好きにどうぞ」


『えっ!!いいの?!』



 OKを出されるとは思ってなかったのだろう……冗談交じりで契約の旨を零していたシルフィードは目を丸くして驚く。



「別に構わねぇよ。でも俺はここでのんびり暮らしたいんでね、お前を呼ぶ機会なんて早々ねぇけど、それでもいいんなら契約するのは厭わない」


『ホントにホント?!じゃあ今契約しよっ!』


「ちょっ────!」



 慌てて止めに入ろうとするヨミを他所に、シルフィードはあっという間に武尊と契約を交わしてしまった。


 それを見ていた他の最高位精霊達も後に続くように次々と契約を交わしてしまった。



「タケル、貴方……七大最高位精霊と同時に契約を結ぶなんて前代未聞よ……」



 呆れ返るヨミ。


 この世界の事を未だよく知らない武尊は首を傾げながら彼女に訊ねる。



「まずいのか?」


「これといって悪いという訳では無いわ……けれど普通は一つ、多くても三つの精霊としか契約出来ないの」


「そうなのか?」


「そうなのよ。なにせ三つだけでも身体には相当な負担がかかるわ。昔、貴方のように七大精霊全てと契約をしようとした精霊魔導師がいたのだけれど、その負担に耐えかねて若くして亡くなった事もあるくらいなんだから」


「でも俺は何ともねぇぞ?」


「本当に……時々貴方のことが分からなくなってくるわ……」



 ヨミの言う通り、火、水、風、土、木の五大精霊に光と闇の双極精霊を加えた七大精霊との契約すらまともな所業では無いのだが、今回の武尊はその最高位精霊達との契約を果たしてしまっている。


 これは歴代勇者でもなし得なかった事であるのだが、それを当の武尊は知る由もない。


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