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異世界転生の天人族《ハイランダー》〜異世界の山奥で悠々自適なスローライフ〜  作者: SIGMA・The・REVENANT
第一章・第二話:山奥スローライフ
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家具を作る

 朝が来た!


 天気は快晴────昨夜の雨で草木は濡れているものの、清々しい目覚めが出来る程に空は晴れ渡り、一日の始まりとしては絶好調のスタートである。


 今回は周りに生えている木々を使って、ヨミの為の家具を作ろうと思う。


 ちなみにヨミは朝早くから麓の町へと買い物に出かけている。


 俺が彼女にベッドに使う布や毛布などを買いに行くようお願いしたからだ。


 彼女が買い出しに行っている間に、ある程度の作業を進めることにするか。



(〝全世界知識(アーカイブ)〟、ベッドのデザイン)



 脳裏にズラっと流れる様々なベッドのデザインの中から、ヨミに似合いそうなデザインを選出してゆく。


 そしてデザインが決まったら今度は材料となる木材の切り出しだ。


 都牟刈で木を切り倒し、脳内にあるベッドのデザインの形に切り分けていくのだが、ここで俺はあるスキルについて理解することになる。


 それは〝万能〟というスキルだ。


 これは〝全世界知識〟のように念じてから発動するタイプのものではなく、どうやら常時発動するタイプのスキルのようで、その効果はあらゆる事が出来るようになるというものだ。


 頭に思い描いたとおりに身体が動き、あっという間にベッドの骨組みが完成した。


 確か彼女から聞いた話で〝アステール〟とは〝星〟という意味があり、その名は彼女が幼い頃に過ごしていた教会施設のシスターにつけてもらった名前だそうだ。


 なのでベッドの装飾には所々に星が象られている。


 〝喜んでくれるといいなぁ〟と思う一方、前世では独身だった俺には初めての感情だっただけに作業は予想よりも捗っていた。


 あれよあれよという間にベッドの骨組みは組み上がったのだが、まだヨミが帰ってくる気配は無い。


 なので今度はタンスを作ることにした。


 時間があれば机や椅子、一階に置かれていた鏡も使って鏡台も作ろうと思う。


 そうしてタンスが出来た頃合でヨミが帰宅……完成したベッドとタンスを見て驚きつつも喜んでくれていた。


 素直にこちらも嬉しい。



「タケルって何でも作れるのね?」


「まぁ、こういうのは好きだからな」



 嘘ではない。


 こう見えて前世ではDIYにハマりにハマっていたのである。


 まぁ前世には〝万能〟なんてもんは無かったから、今より不格好なものが多かったけどな。


 完成したベッドやタンスをヨミの為に用意した部屋へと運び込み、彼女が買ってきた毛布などをセットして、とりあえずは彼女専用の部屋が完成した。


 まだベッドとタンスしかないが、机などはこれから作っていく予定なので大丈夫だろう。


 ちなみにヨミは毛布などの他にカーペットなども買っていたらしく、自分なりにそれらを配置していた。


 空を見上げればいつの間にか太陽が真上にまで上がっている……そろそろ昼飯時か。


 今度は時計でも作っ────いや……時間を合わせる為の目安となるものが無いのでやめておくか。


 昼食をとった後は余った木材でロッキングチェアを作ってみた。


 座り心地は中々に良い。


 そういえばこの家にはバルコニーらしきものが無かったので、暇な時に作ってみるか。


 とりあえずロッキングチェアを外に起き、心地よい風を受けながら揺られる。


 傍らではいつの間に仲良くなったのか、ヨミがウォルフに身を寄せながら眠っていた。


 昨日の今日なので、彼女には十分に心癒されて貰いたいと思う。


 アニマルセラピーのようなものだしな。


 そしてアルクトスよ……お前は羨ましそうにヨミとウォルフを見てるんじゃない。


 お前にもいつか機会が訪れると思うからよ……。


 家の中の本棚に置かれていた本を読みながら、その日の午後はまったりとした時間を過ごしたのだった。


 夜はなんとヨミが自ら料理を振舞ってくれると言うので、お言葉に甘えて夕食は彼女に任せることにした。


 卵などはニワトリのような鳥達が無精卵を自ら提供してくれるので、卵料理を作ることも出来る。


 ジュ〜っという焼く音と共に美味しそうな匂いが鼻の奥を刺激し、それにつられて空腹感が増していった。


 〝待ち遠しい〟というようにソワソワし始める子供達の気持ちが今ならよく分かるな。



「はい、お待たせ♪︎」



 運び込まれてきた料理はどれも美味しそうだった。


 いや、〝だった〟では無い……現に美味しいのである、これが。


 調味料の使い分けが上手く、それにより素材本来の美味しさを一層際立たせている彼女の料理は、五つ星レストランのそれであった。


 クール系の美人が作ったというのも、美味しく感じる要因の一つかもしれないが……。


 そして我を忘れて頬張る俺を見て、ヨミは嬉しそうに笑みを浮かべていた。


 すると、そんなヨミが一言。



「ねぇ、今ある野菜やお肉が無くなったらどうするの?あとそれとお魚は無いのかしら?」



 そういえばそんな事を忘れていたな。



「肉は魔獣を狩って手に入れようと思ってて、野菜は家庭菜園でもして補おうかと……。魚は考えたことも無かったな」


「種は?ジャガイモならどうにか出来るけれど、レタスとかはどうするの?あとお魚も食べないと栄養が偏るわよ」



 呆れ顔でそう言われてしまった。


 確かに……レタスやキャベツといった野菜はどうすればいいのか分からんかった。


 いや、全世界知識ならば育て方が分かるのだろうが、その為に必要なものは知らなかったな。


 あと魚は確かに必要なのだろうが、いざ釣りなどをしたとしても、声が聞こえてきそうで気が進まない。


 そんな頭を抱える俺に見かねたのか、ヨミがため息混じりにこんな提案をしてきた。



「はぁ……必要になったら私が町まで買いに行ってくるわよ。貴方は知らないでしょうけど、街には湖や川で捕れた魚も売っているのよ」


「ほぉ〜……それならわざわざ釣りをしたり野菜を育てたりしなくても済むなぁ」


「貴方、時々凄いのか凄くないのか分からなくなるわ……」



 そんな事を言われても、俺はつい最近この世界に転生してきたばかりだ。


 山すら降りてないのに、どうやってここの場所以外の情報を得るというのだ。


 そんな時、俺はふとあることに気づく。



「金はどうするんだ?」


「貯めていたお金が十分あるけれど……でも確かにその事も考えないと駄目よね」



 これから野菜やら何やら買うのだとすれば、金が必要になってくる。


 残念ながら俺は働いてはおらず、ヨミだって昨日ギルドをクビになった身だ。


 困り果てる俺達……そんな時、俺はふと頭によぎった疑問をヨミへと訊ねる。



「町では何の肉を売ってるんだ?」


「いきなり何?まぁ牧場で飼育されている牛や豚……それに鳥や羊くらいね。いきなりどうしたの?」


「いや……ちなみに魔獣の肉は売ってるのか?」


「売っている時もあるけれど、自ら魔獣を狩る人なんてあの町にいないから、たまたま来た冒険者とかが狩った魔獣を肉屋が買い取って売ってる感じかしら?だからとても高くて、買うのは富裕層……つまり貴族や豪商人くらいかしらね。ねぇ、本当になんでそんな事を聞くの?」



 ふむふむ……つまり値段はかなり高いが、売ってない訳では無いという事か。


 俺は暫く考え込み、そして戸惑うヨミに俺の考えを述べた。



「それじゃあ俺が狩った砕牙獣の肉をいくらか肉屋に売って、それで金を得るというのはどうだろう?」


「────!!……考えもしなかったわ。でも、状態はいいの?」


「魔法で狩ったばかりの状態を維持しているからそこら辺は大丈夫じゃねぇかな?それにこの山にはまだ魔獣がいるようだし、俺が定期的に狩って、いくらか肉屋に融通してやりゃ、肉屋は上質な肉が手に入り、俺達は金を得る。これでウィンウィンだろ?」


「ウィ……?まぁ、確かにそれなら安定したお金が手に入りそうね」


「ある程度数があれば相場は安くなるはずだ。とは言ってもあまり売り過ぎると返って希少価値が下がる……まぁ、そこら辺は実践してみてだな。ということでどうだろう?」


「いい考えね。それじゃあ明日、試しに肉屋へ持って行ってみるわ」


「頼むわ。それと肉は各部位ごとにわけて保存してあるから、そこからいくつか売り物用に分けておくよ」


「お願いね。もし良い結果が得られたら教えるわね」


「頼むわァ」



 こうして俺達は金を得る方法を編み出し、明日に向けて準備をした後に眠るのだった。


 異世界の山奥へと転生し、動物達と仲良くなり、綺麗な女性と共に過ごすことになり、そしてお金を稼ぐ方法を考えついた。


 明日はいったいどんな事が起きるのだろう……俺は期待に胸を踊らせるのであった。


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