使い魔4人
俺が名付けた動物達が軒並み人間になったという出来事があった翌日────
俺は改めて四人の特徴を確認する。
梟のオウルは平均よりは少し身長が高めの女性であり、執事服に片眼鏡といった服装をしている。
しかし人間と違うのは翼と尻尾、そして足が鳥の足という点だろう。
この世界だと〝鳥人族〟と言うやつらしい。
というかメスだった事に驚きだ。
〝会話していたら分かるのでは?〟と思うだろう……しかし、これは動物達の言葉が分かる俺しか知らないが、動物達の声は女性と男性の声が二重になったようにしか聞こえないのである。
なので声でオスかメスかを判別するのは難しい。
ウォルフとアルクトスが男性体で良かったと心からそう思う。
そのウォルフについては筋肉質な男性といった感じで、こちらは野性味溢れる服装をしている。
動きやすさに特化した服装だとも言えるな。
まぁこちらも狼の耳と尻尾がある以外、人間と変わりない。
ちなみにウォルフは〝人狼族〟と言うやつだ。
アルクトスは熊特有の大柄な身体の男性体で、こちらは狩人か木こりのような服装をしている。
今後の薪担当はアルクトスにしておこう。
こちらは〝熊人族〟と言うやつらしい。
最後にレイヴンについてはオウルと同じく翼と尻尾があるが、一つオウルと違うのは足も人間の足だと言うこと。
そして日本の陰陽師が来ているような服装をしている。
〝鴉天狗族〟らしい……見た通りではあるな。
しかし何故この4体……ではなく四人が人間体になったかは、俺が名付けた事が関係しているらしい。
と言うのも〝魔導師〟、〝魔女〟、〝賢者〟、〝召喚術師〟といった魔法を使う職業の者が名付けをする事によって、名付けられた対象はその者の〝使い魔〟となるらしい。
なのでそれらの特性を持つ〝隠者〟の俺でも同様の事が起こったという。
しかし本来ならば魔物や魔獣が一般的らしいが、今回は異例として魔力を持たない動物達が名付けによって魔力を得たらしく、それで人間体へとなれたらしい。
異世界恐るべしだな。
今後は慎重に名付けをしていかなければなるまい。
節操無しに名付けをしてしまえば、この山全ての動物達が人間体になりかねないからな。
しかしこの四人はまだ人間体になったばかりか、動物だった頃の習慣が抜けてないようだ。
なにせオウルとレイヴンはずっとソワソワしながら時折、家の中に作った止まり木をチラチラ見ているし、ウォルフは〝おすわり〟の姿勢をしてはハッとしてそそくさと立ち上がったりを繰り返している。
アルクトスについては蜂蜜の入った瓶を見てはヨダレを垂らしているしな。
俺は大きくため息をつくと、四人に人間としての所作を一から教えることにしたのだった。
そんな苦労も甲斐があって、数日すれば四人は人間としての動作を身につけ始めていた。
うむ、あと数日間もすれば人と変わらぬように見えるだろう。
箸やスプーンの使い方を教えるのには本当に苦労したが……。
それに四人にもそれぞれ役割を与える事にもした。
オウルはその服装通り執事として食事の手伝いやら家事を担当する事に、ウォルフとアルクトスは狩りや薪割りなどの力仕事、レイヴンは周囲の警備や町の情報収集……これが見事にどハマりし、正に適材適所の活躍を見せている。
これにより俺とヨミの負担の軽減にも繋がり、更に快適な生活環境になったと言えよう。
まぁ、だからと言って怠惰を決め込むつもりはないけどな。
しかしやりたい事に専念出来るというのはこれまた大切な事で、セインとイヴの稽古も更に進んでいった。
二人の飲み込みも優れていて、今ではヨミと良い勝負が出来るようになっていた。
連携も立ち回りも動きも精錬されており、このままいけば俺とも良い勝負が出来るだろう。
幼いので魔獣討伐にはまだまだ早いけれども。
しかし、そろそろ魔物討伐くらいはステップを進めても良さそうだろう。
そうだ────ウォルフやアルクトスとかに武器を持たせ、二人のサポートに回せば二人以上での戦闘での連携や立ち回りを学ぶいい機会になるかもしれん。
俺はそう考えると、早速その準備へと行動を移すのであった。




