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1 天才の妹

結構前に創作意欲があり頑張って書いた作品です。よろしくお願いします。

 1 天才の妹



 神奈川県の外れで、十四歳の音村鏡夜おとむらきょうやはごく普通の一般家庭で育った。

 成績は普通。学校ではバスケ部に所属しているが、スタメンには成れず目立った活躍はしてはいない。

 黒髪の短髪で容姿も地味ではないが際立ってもいなく普通。

 そんな鏡夜には天才の妹がいた。凡庸凡百な鏡夜には似ても似つかない二つ年下の妹だ。

 本当に同じ両親から生まれてきたのだと懐疑的になる程に優秀。

 学校の成績も常にトップ。容姿も可愛く、女子生徒は嫉妬の念を滾らせ、多くの男子生徒から人気があった。

 そんな途方もない才覚を有している偉大な妹だ。

 だが、決して誇らしくなどない。何かが気になるのだ。その何かが、鏡夜には掴めなかった。

 そんな事を考えながら、鏡夜は部活の帰り道、友達の部活仲間の水谷純みずたにじゅんと町中の商店街を歩いていた。

 商店街は雑多な古めかしい町並みで、神奈川県の外れだと言う事を思い出させる。


「鏡花様、本当に可愛いよな。あんなに可愛い妹がいて羨ましいぜ」


 バスケ部のエースであり、自動販売機よりも大柄な体格を際立たせて水谷が目を輝かせていた。

 水谷は音村の天才の妹、鏡花きょうかの事が好きだった。

 だが、悲しきことに鏡花には既に橘新九郎たちばなしんくろうと言うイケメン彼氏がいる。

 橘新九郎は新進気鋭の社長の御曹司で、女子から絶大な人気を誇っていたが、見初めるように鏡花が手に入れた。

 鏡花は今頃、橘新九郎とお茶でもしているのだろうか、と鏡夜は想像していた。


「残念だが、妹はイケメンが好きでな。十人並みのお前では荷が重すぎる」


「イケメンに生まれたかったぜ」


「そう言うな……背が高いだけお前が羨ましい。俺も背が高ければスタメンに成れたのに」


 鏡夜は背が高くない。水谷純の自動販売機を超える体格に憧れを抱いていた。

 それに自分には才覚が無い。それ故に妹の才覚には嫉妬の念すらも抱いている。


 ――どこで差が付いた?


 鏡夜は妹の才覚の秘密を探っていた。何かがおかしいのだ。

 妹の才覚には何処か、不自然な点がある。歩きながら、考えて水谷と別れて帰宅の途に着いた。

 自宅は昔の日本家屋であった。築三十年が過ぎており、鏡夜の祖父が建てたものだった。


「ただいま……」


 鍵を開けてドアを開けると左右眼の色が違う少女が立っていた。

 右の瞳は凡庸な黒だが、左の瞳は薄い桃色の神秘的で全てを魅了し傅けるものだった。

 そんな妹が、わざわざ出迎えてくれたのだ。

 正に絶妙なタイミングで鏡花は玄関の前で立っていた。

 これには驚きを隠せなかった。天才の妹は相手の心を見透かせるかのように気が利く。

 これが、鏡花に対する違和感の正体だ。何故、妹はこんなにも完璧に気が利くのか。


「お帰り、兄さん……今日は一緒にゲームでもやらない?」


 ポニーテール姿の鏡花はにこやかに微笑み、鏡夜に甘えている。

 そうだ。自分は鏡花の天才性に疑いの目を向けているが、鏡花はこんな兄を慕っている。

 嬉しくないと言えば嘘になる。こんな可愛い妹に慕われて自分は幸せだ。


「今日は新九郎とお茶しなくてよかったのか?」


「良いの……今日は兄さんと遊びたい」


 妹は無邪気に兄の胸に飛び込む。鏡夜はそんな妹を愛おしいと思った。

 そういえば、最近、自分は妹に構ってやれなかった。良いだろう。兄妹ごっこでも何でも。


「……そうか。最近、遊んでなかったから思う存分、遊んでやろう」


 鏡夜はやれやれと言って妹に優しく微笑みかけた。


「ありがとう! 兄さん!」


 妹の無邪気な微笑みに鏡夜はすっかり、感化されてしまう。

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