【閑話】これまでのあらすじ・参
おさらい回の続きです。
果林「壮太くん、今日は雑談少な目で一気に行きましょうか」
壮太「りょ…了解です」
■これまでのおさらい■
穴山将一が神社へ辿り着く少し前、彼は飲み物調達班である平壮太と角樹里亜に会い、道野辺芹と角樹里王が角家へ用を足しに行ったまま帰って来なくなった事を告げた。
花火観賞をする予定である神社は角家のすぐ傍。芹は兎も角、近隣住民である樹里王が迷子になる事などありえない。将一へ買い込んだ飲み物を渡すと、壮太と樹里亜は芹達の捜索へ向かった。
芹達を探し、角家へ向かう途中、夜闇を引き裂く警報が鳴り響いた。それは壮太が芹へ渡した防犯ブザー。その音を聞いた瞬間、壮太は全力で走り出した。
民家の間を通り抜け、壮太が辿り着いた先は水田の畦道。そこには神社で賽銭泥棒をしていたネトリスターズの一味、その中でも第二次性徴期前の男児に性的興奮を覚えるショウネトリストのチャラ男がいた。
壮太がチャラ男の姿を捉えた時、男は芹を踏みつけて防犯ブザーを奪い、水田へと投げ込んでいるところであった。
チャラ男は畦道から用水路へ転落した樹里王を助けるふりをしながら、幼気な少年である彼を手籠めにしようとしていたのだ。
壮太は怒った。踏みつけられている少女が芹である事を認識した瞬間、暴力的な衝動を抑えられない程に怒り狂った。それはまるで、我が子を傷付けられて憤慨する父親のように。
激情を込めた一撃をチャラ男の顎へ叩き込んだ瞬間、男は空を舞った。成人男性が吹き飛ぶ程の衝撃を与えた壮太の拳はこの一撃でヒビが入ったが、彼は尚も男へ追撃しようとする。
それを止めたのは芹だった。彼女の泣き顔を見た瞬間、壮太はいつものお兄ちゃんへと戻った。
樹里王を用水路から救い出し、樹里亜へと預けた壮太は、そのまま神社へと向かった。そして彼が神社へ辿り着いた時、その眼前には戦慄の光景が広がっていた。
果林「バ…バイオレンスです~!」
壮太「ですよねー……」
果林「でもでも、壮太くんって強いんだ? 勇太くんとどっちが強いんです?」
壮太「いや、普通に兄貴だと思いますよ? 一応、国体に選抜されるほどのレスラーですし」
果林「ふーん。ちなみにチャラ男さん、死んでないよね?」
壮太「何か泡吹いて痙攣してましたけど……生きてはいるみたいです。顎骨が粉砕骨折して、歯も数本無くなったと聞きましたが……」
果林「バイオレンス~!」
壮太が神社へ辿り着く少し前、ネトリスターズの一味にして格闘技経験者、熊門は砂川瑞穂を人質に将一らと睨みあっていた。
絶体絶命の局面であるその時、橋爪志緒は熊門へ自身を人質にし、瑞穂を解放するように求めた。
志緒の意図を理解できなかった熊門はこれを拒否。警戒を強める。
その時、重度の緊張から意識を失っていた瑞穂が目を覚ました。再び瑞穂を拘束せんとする熊門、彼女を救うべくダメージを負った体で駆けつける将一ことアナヤマン、そして歪な笑いを浮かべた美織と志緒が同時に駆ける。
美織は駆けながらポーチに隠し持っていた催涙スプレーを散布。将一に被害がでる事も厭わず、熊門へと吹き付けた。将一は催涙スプレーの餌食、友人ごと攻撃するとは思っていなかった熊門も意表を突かれて催涙ガスを浴びた。
そこへ走り込んで来たのが志緒。彼女が人質になる事を立候補した理由は、壮太とのフラグを立てる為だった。常人には理解できない思考を宿した才女である志緒は、その手に握るスタンガンを振り回し、瑞穂と囚われのヒロインポジションを交代すべく画策していたのである。
志緒の握るスタンガンが熊門の股間を掠める。催涙ガスで目にダメージを負っている熊門は、股間にスタンガンの電流を受け、その場でのたうち回る。しかし、不幸な事に志緒の勢いは衰えず、運動量保存の法則そのまま、今度は将一の尻へと手に握ったスタンガンを突き刺した。
壮太「あ、穴……山?」
果林「うわぁー……惨劇ですぅ」
美織&志緒「…………」
将一は経験した事のない強い刺激を尻に感じ昏倒。熊門は股間を抑えて転げ回り、瑞穂は何が起こったのか理解出来ずに混乱。美織と志緒だけがマイペースに互いへ責任を擦り付け合っていた。
そこで現れたのが主人公、平壮太。壮太はその惨劇を起こしたと首魁であると思われる熊門へと立ち向かう。
新たに登場した助っ人へ対し、熊門も臨戦態勢を取るが、未だ目と股間に受けたダメージは癒えていない。それでも気合で痛みを捻じ伏せ、熊門は壮太へと迫った。
果林「あれ? 良いトコ取り? 漁夫の利?」
壮太「あ、いや……」
激戦の末、見事に熊門を打倒した壮太であったが、肋骨が数本砕け、拳の骨は完全に折れてしまった。
それでも美織達を救えたのならと、安堵する壮太であったが後日、学園から呼び出しを受けた壮太は学園長から表向きの退学、事実上の転校を勧められる。
壮太が殴り倒したチャラ男が思いの外重症を負っており、過剰防衛を訴えて来たのだ。不意を突いて一方的に殴り飛ばした事、戦意を喪失した相手に対して行った追撃。それらの件で起訴された壮太は、学園側の意向を受け入れ、退学、及び転校を決心した。
退学を受け入れた理由は壮太達の通う学園が由緒正しい進学校であった為、学園側も傷害事件を起こした生徒へ対し、それなりの処罰をしなければならない立場にある事へ理解をした為、そして何より、学園側が温情として用意した転校先に強い興味を惹かれたからだった。
果林「へぇー……壮太くん達の学園って、厳しいですねー」
壮太「一応、名門なので」
果林「ふーん。で、壮太くんの転校先って何処なの?」
壮太「あ、まだ秘密です」
果林「いいじゃないですか。内緒にしておくから……ね?」
壮太「家からは遠い……とだけ」(遠い目)
果林「えー……?」




