【閑話】俺は嫁を選べない
穴山成分補完回です。笑
時系列的には、夏祭りの少し前の話になります。
夏休みのある日、自室で俺はスマートフォンを片手に唸っていた。
「う〜む……。」
俺は今、究極の選択を迫られている。
夏休みを機に、某国民的RPGのスマホリメイク版をプレイし始めた俺であったが、どうやらこのゲームは中盤で主人公の“嫁”を選択する必要があったようだ。
嫁……嫁かぁ。
このゲームは全年齢向けのRPGだ。故にNTRな展開など有り得ないはず……。だが、結婚してからゲームをクリアするまでの間はともかく、ゲームをクリアした“後”にNTR事案が勃発しないとは言い切れない。(涙目)
それに、ゲーム中では語られない部分ではどうだろうか?
例えば、パーティーメンバーの中に間男が混じっていたとしよう。
ゲーム中では描写を省かれるような場面、宿屋に泊った際や、馬車の中で一晩を明かした際などに、嫁が間男から寝取られてる可能性が無いと何故、言い切れようか。(白目)
(RPGで結婚とか、嘘だろぅ?!ぅう……サブタイトルで気が付くべきだった……。)
これはワンチャン、メーカーへ問い合わせるべきか?
メーカーから「NTRはありませんよ〜」と言ってもらえれば、取り敢えずプレイは出来そうだが――
「嫌だぁあああ!結婚なんてしたくねぇー!」
俺が頭を抱えて叫んでいると、突如、黒光りする坊主頭に視界を遮られる。
今日は穴山が家に遊びに来ていて、俺のベッドに寝転んで漫画を読んでいたのだが、俺が何のゲームをプレイしているのか気になって覗き見に来たようだ。
「さっきから何を唸ってんだよ、壮太……って、ド○クエ5かよ?」
何か一人で合点が言ったように、穴山が頷いた。
「これの嫁選択、迷う人多いよなぁ〜。まっ、俺は即決したけどなっ!」
謎のドヤ顔を決める穴山の頭を脇へ押しやりつつ、俺はスマートフォンの画面を睨む。
「穴山……お前は誰を選んだ?幼馴染か?それとも富豪の娘か?」
「俺か?俺は富豪の娘を選んだぜ。」
「――っ!この貪欲たる間男めがっ!!」
「うぉっ!またソレかよっ!?……つーか、ネトリストってマジで何なんだ??」
穴山めぇ……やはり、こやつは間男であったな!
野球部という時点で既に極めて怪しいのに(偏見)それに加えて、今の発言……!
「一応、言っておくが、俺が選んだのは富豪姉妹の姉の方だぞ。」
「何ぃ?!」
実はこの名作RPGだが、リメイクされる中で主人公の嫁候補が一人追加され、候補者は主人公の幼馴染、富豪の娘(妹、幼馴染から片思いされている)、富豪の娘(姉)の三人となっている。
穴山が選んだ富豪の娘(姉)の方ならば、NTR(正確にはBSS)には当たらないが……。
「何故に姉のデ○ラさんを選んだのだ……親友よ。」
「おっ○いがデカいからだ。」
「……で、あるか。」
どうやら、俺が思った以上に穴山はオッパイ星人だったらしい。
「そういえば、穴山の彼女、野球部のマネージャーさんも大きいの?」
「ん〜?瑞穂は……まぁ、普通だな。」
ふむ……普通とな。
まぁ、訊いておいてなんだが、俺はあまり胸の大きさには固執しない。寧ろ、間男の劣情を誘うレベルの大きさであったのなら、迷わず敬遠するだろう。
「……そういや、壮太の知り合いに胸のデカい女子いたな……。」
「橋爪さんの事か?」
「ああ、確か。その娘とか、壮太的にはどうなんだ?」
「ノーコメントだ。それよりも今は、誰を嫁に選ぶかが重要だ。」
「坂梨の事もそうだが、お前なぁ……。まぁ、いいや。初プレイなら、普通に幼馴染で良くね?」
幼馴染?幼馴染だと……?
「馬鹿野郎!幼馴染とか、一番の地雷じゃねーか!」
「意味解らねーよっ?!」
駄目だ……。穴山の奴、全くネトラレリスク診断が出来ていない。
ここはNTRアドバイザーとして、再教育してやるべきか?
呆れ顔の穴山が「やれやれ」と頭を振る。こいつ、いつの間にヤレヤレ系主人公に転向しやがった。
「嫁の能力的には富豪姉妹の妹がオススメなんだが――
「断る!!俺は間男に成り下がるつもりは無い!」
「じゃあ、選択肢は一つしか無くね?」
「そう……だな。」
確かに穴山の言う通りかもしれない。
幼馴染は高確率で寝取られるだろうから論外として、富豪姉妹の妹を選べば本末転倒。姉の方ならば、比較的安全かも知れないな。だが……だが、待って欲しい。
「俺、ドMじゃないんだが……?」
「おい、壮太。それは俺がドMだと言いたいのか?」
「そりゃあ、な……。クソ熱い真夏にもボールと戯れる青春を送る奴らとか、もうそういう感じじゃん?」
「……同意しねーぞ。つーか、お前の野球部に対するイメージどうなってんだよ……。」
まぁ、野球がドM向けのスポーツかどうかは置いておいても、選択肢は一つしかないか。
「デ○ラさんって、馬車で魔物と獣○とか、従者を交えての乱○パーティーとかしないよね……?」
「はぁ?!○姦!?○交!?壮太……お前、精神科に行ってこいよ。」
穴山の奴、まるで解っていないようだな。
そんな警戒心の無さじゃ、折角出来たマネージャー彼女も誰かにNTRされかねんぞ?!
「……分かった。姉を選ぶわ。」
しかし、考えようによっては、一見遊んでそうなキャラの方が良いのかもしれん。
ネトラレリスクは清楚キャラよりもギャル系キャラの方が低くなる傾向にある。(当社調べ)
それはおそらく、男性へ対する免疫……快楽への抵抗力に関係していると思われるのだが、おそらく順風満帆に生きてきたであろう清楚キャラの方が背徳的な快楽に弱いのではないだろうか?
背徳感というものは、快感を底上げするスパイスに成り得るものだが、それは何を背徳と感じるかという、個人的な主観に大きく関わってくる。
つまり、貞操観念が強い人間の方がより強く、不貞行為に対して“背徳感”を覚え、逆に「お金さえ貰えれば誰とでもウェルカムですよ」という強かなタイプの人間ならば、不貞行為に対しても抵抗が少ない分、背徳感を覚え難いのではないだろうかと考えられる。
……とはいえ、妻には貞淑であって欲しい。(切実)
「あぁ、そうそう――」
穴山が坊主頭を掻きながら、読みかけの漫画に視線を落とす。
「――選んだ嫁によって、生まれてくる子供の髪色が変わるんだが、デ○ラ以外を選んだ場合は、皆、主人公と違う髪色の子供が生まれんだよなぁ。」
「なっ?!なん……だと?」
主人公と違う髪色……だと?
いや、待て待て。子供の髪色は両親や祖父母の影響を受ける事は間違いがない。それに、メンデルの法則の一つ、優性の法則から鑑みても、母親の髪色が優性遺伝であった為に、子供の髪色が母親のものとなったと判断できる……が、本当にそうか?
青髪はどうか判らないが、金髪は確か劣性遺伝だったはずだ。
まさか主人公、托卵されてたり……しないよな。ゴクリ……。
「な…なぁ、穴山。デ○ラさんを選んだら、主人公と同じ髪色の子供が生まれるんだよ……な?」
「ぁん?まぁ、そうだな。」
そうか……そうだったのか。
すまない、デ○ラさん。君の事を誤解していたようだ。君は(ネトラレリスク的に)一番、信用できる。
デ○ラさんも主人公と同じ黒髪なんだから、生まれてくる子供が主人公の子かどうかなんて判らないって?
……いや、俺は信じる。信じたいんだ!
だから、デ○ラさん。ビッ○扱いをしてしまった罪滅ぼしとして、君を全力で幸せにする事を誓うよ。
「なぁ、壮太。……何で泣いてんの?」
その後、順調にゲームを進める壮太であったが、とあるイベントで嫁が○○された事によって、また更にNTRアレルギーを拗らせてしまったという。
未プレイの方、ネタが分からなかった方はごめんなさい!
ちなみに元ネタのゲームは不朽の名作ですし、当然ながらNTR要素は皆無ですので、ご安心下さい。汗




