第1章 出会いー3
連続投稿です。
祖父母の家に到着して、初めに過ごした週末はとても穏やかだった。
おばあちゃんに連れられておじいちゃんの畑まで散歩したり、お父さんと釣りしたりした。
スマホで明美と連絡も取り合ってた。始めは寂しくて、電話しながら明美と泣き合ってしまったけれど、祖父母と父の気遣いもあって、早めに気持ちが落ち着き始めていた。
週明けになって、転校先の学校、三木浦学園へ通う日。
転校なんて初めてだからすごく緊張しながら学校へ行く。
おばあちゃんがお弁当を作ってくれて、渡される時におまじないをしてくれたのを思い出す。
「緊張せず、落ち着くおまじないだよ」
そう言って、私の手を取り優しく撫でてくれた。おばあちゃんのやさしさで勇気が持てた気がした。
担任に連れられ、教室へ入っていく。
横目に見える生徒数はさほど多くはなかった。
「皆さん、転校生の佐倉結羽さんです。彼女は先日こちらへ来たばかりなので仲良くしてくださいね」
「……佐倉結羽です。よろしくお願いします」
少し言葉尻がしぼんでしまった。根暗な子だと思われただろうか。
そう思いちらりと前を見ると、一人の男の子と目が合った。
男の子と目が合っていると、周りから拍手が聞こえてくる。見渡してみると、反応は悪くないようだ。
そう思い、ほっと息をつく。
「それじゃあ、佐倉の席は――」
「せんせーい」
担任の言葉を遮って声が上がった。
その方向を見ると、先ほど目が合った男の子がへらっと笑いながら片手を挙げていた。
「俺の横の席、空いてるよ~」
「…ん?あぁ、そこ空いてたんだっけか…?まぁいいか、じゃあ佐倉さんあの席へ」
配席が頭の中に入っていなかったのか、歯切れの悪い担任の言葉に返事をしつつ席へ座る。
席へ移動中もにこにこ私を見つめてくる隣の男の子。なんだかくすぐったいような気持ちになる。
「緊張してるの?」
「え?あ、うん。転校なんてしたことないし…」
席についた途端話しかけられて少し驚く。緊張のせいもあってか色々と過敏になっているようだ。
「まぁそうだよねぇ。あ、俺、海狸 空。僕のことは空って呼んでよ。結羽って呼んでいい?」
「そ、空くん?…えっと、好きに呼んでいいよ」
なんだかぐいぐい来る子だなと思う。花の匂いのことが気になり、それにあてられたのかもとも考えるが、空くんの目にこれまでの人のような下心は感じられなかった。
(人なつっこい人なのかな…?)
目が合った時からずっとにこにこ笑っているように、目は少し弧を描き、口も猫のように愛らしく見える。
顔も相当整っているということにまじまじ観察していたらわかった。
髪にヘアバンドをつけて、ブラウスの代わりにパーカーを着ている。それを見る限り、この学校はさほど外見に厳しくはないようだ。
当番の号令で授業が始まった。
新キャラ登場です。
空くんはなかなか外見が気に入っております。