夢と現実
目が覚めた。
真っ白な天井と覚えのある甘い香りがする。それが心地よくてもう一度眠ろうと瞼を閉じて。
「…。(二度寝しても怒られないよね。)」
そうだ確か夢?を見てたんだ。帰り道になんでそんな疲れることしたっけ?
「…。」
「…?」
「……!!」
反射的に体を起こす。自分の体を今一度触る。蹴られ、殴られた場所を。
ない。
あるはずのものがない。
傷が。
ない。
それでも確かにあの痛みは確かに現実の痛みだった。
この部屋には鏡がない。
顔だけは自分の目で確認できないので、そっと触れてみて少しづつ確認していく、出血やかすり傷の感触が手にない。なんならちょっと肌もちもちしてる。嬉し。
「…。(いや、嬉しいけど今そこじゃないだろっ!乙女か僕は!)」
確かにそれが夢ではないかもしれないと物語っているのは汚れた制服、ただそれだけ。ちょっと(?)派手にコケたぐらいの汚れ。
制服はズボンは着ているけども、長シャツは傍らのハンガーにかけてある。
流石になんか着ないとティーカップとか飛ばされかねないし。(誰とは言わない、言ったら………)
…いやおい待てよ?男は??確かに二藍と帰り道で男とやりあって…負けたんだ。それなら二藍は…?無事なのか…?
そんな不安が僕を襲うが、結局は夢だしなぁ……。
シャツのボタンを閉め終わって、そんな夢を思い返すのが終わった頃。
この部屋のドアが開いた。
「お、おはよ。アサギ、気分はどうだい?」
可愛らしい茶色のエプロン(胸元にクマさんのアップリケ)、長く腰まである金髪をポニーテールにして、三角巾。それらを着こなしている鈍は尋ねてきた。
「ん?金髪?は???いや体調は僕は大丈夫だけどあれ?鈍だよね?黒髪どこやったの?」
これかい?くるりと背を向けて龍の髭のような金髪をなびかせる。元々、そういう色だったとしか考えられないほど、綺麗だ。
「これもスイッチさ、キレイだろう?」
にひひと笑ってみせる鈍は本当に可愛らしくて。
「うん、とても可愛いじゃんか。」
もっと褒めてくれたっていいんだぜ?と次の言葉を催促する声は聞いてなくて、その髪が揺れるのをそっと眺めた。
「………いや待てよ便利すぎんかスイッチ。」
「少しづつなら実践交えて教えてやるよ。とりあえず顔洗って店こい。準備できてるからさ、みんな待ってんだ早くしろよ。」
それを言うとドアを開けっ放しで金髪を揺らしながら行ってしまった。
鈍が履いてるローファーの音がする。
そのドアから香る甘さでここがレヴェントであることを再確認できた。元々鈍がいた時点でレヴェントだとは思ってた。
それがよりここは現実だということを知らせてくれる。
僕はとりあえず言われた通りに顔を洗って、部屋から出ることにした。
やっぱり靴もちょっと汚れてる、こんなに汚れてたっけ…?まぁいっか、どうせどっかで頭ぶつけて倒れただけだろうし…二藍に申し訳ないな…謝らないと…。
ということで
顔洗って、身だしなみを整えて、美味しい匂いの部屋と廊下を分けるドアノブに手をかけたところで、口の中が食べ物を受け付けを開始したところ。
その匂いに身を任せてドアノブを軽く回して、押す。
「」
目に入ったのは、アイツだった。
「浅葱!起きたんね、おはよう。」
「アサギおせぇーぞ。何してたんだよ、はよ食べるぞ。」
固まる僕に対して、もぐもぐ口と手を動かしてる二名を他所に
「浅葱さん、すみませんしたっ…」
さっきの、夢の、殴ってきた、あの、おかしい奴が、いる。
夢じゃ、なかった。それは、理解した。
「アサギ、説明いるだろ、まず座れ」
「…いい。いらない。」
もう何も聞こえないように、アイツに殴ろうと拳を固めて片足を半歩前へ、出した。もうあとは殴るだけだった。
それに合わせるように
「あーあ!ここに正山小種があるのにな!!!いらないのかなぁ!?殴ったらやらないよ?浅葱ぃ!いいのかなぁぁぁ!」
「………いる。」
少し遅れてたら殴ってた。危なすぎるだろ…。
「えぇ…浅葱…お前……私よりこいつなの!?紅茶より下なの私…。」
「え。あ、違うんだよ!違うんだって二藍話聞いてお願い…。」
「(にこにこ)」
「あっ…(ダメだこれ)」
「まぁまぁ二人とも」
山吹さん…もうこれはダメだよ後でここのケーキいくつか奢ることになるだろうから……うぅ。
と目で送ってみるけども気づくわけないよなぁ…。
パンパンと二つ手拍子。
「はーいはい!こっち注目!アサギだって殴られたんだしさ、まぁ数発ぐらいは目を瞑るけど?」
鈍がそう言った。
それを聞いて僕は、笑った。
ここまで読んでくださり大変ありがとうございます。
大変遅れました。月1とか週1で投稿してた頃の私はもう居ないようです。失踪しました。これからは私が私の代わりに気まぐれで投稿していきます。ご了承ください。
それでは次話で。




